2016年10月30日

ガラスの茶室の縁。

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なぜかガラスの茶室を自転車で見に行こうとおもった。大阪から60kmほどあり、往復すれば120kmほどで、それなりに走りごたえがありそうだった。その茶室のある将軍塚へは200mほどのちょっとしたヒルクライムもあり、何よりも京都へ自転車で行ったコトがなかったし、ただの京都見物や、ただの建築探訪では、面白味と抑揚に欠けて、行動する動機付けになりにくい歳になってきていたのも大きかった。それに、とっても天気が良さそうだった。

朝6時頃に目が覚めて空を見上げると朝日が綺麗な空模様で、そういえば、前日の夜は、朝に運動だけして、あれやこれやと、用事をしようとおもっていたが、空を見て、一気に京都まで行くテンションになった。自転車に乗る服に着替えはじめたが、こんな服で、お寺を見学するには、ちょっと気が引けるが、この手の服を着て一度自転車に乗ってしまうと、その快適性にはかなわないし、それに、そこそこの年齢なので、格好を気にする歳でもあるまいし....、などという心模様を眺めながら服を着替えて、歯を磨き、ボトルに水を入れ、タイヤに空気を入れて、生野区小路から駆けだした。

事前にGPSのガーミンにコースを登録していたので、第二京阪の側道沿いにある自転車道で木津川にある流れ橋まで走ることにした。ガーミンの520Jにはナビ機能があるものの地図が付属していないので、自己責任で、OpenStreetMap をコピーして登録すると、ナビとして充分に機能する事をインターネットで知って、そんなふうに使っているのだけれど、このOpenStreetMapに地図を登録するマッピングパーティーを主催している方が「まちのえんがわ」に何度も遊びに来てくれていて、グーグルの地図は著作権があって制約が大きく、このオープンストリートマップは誰もが自由に使える地図として、生野区空き家マップなんていうのが出来る可能性もある。

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中途半端なスピードと段差で、決して走りやすいとはいえない第二京阪側道沿いの自IMG_1881転車道を走るが、ロードバイクが普及してきた昨今、歩道の横に自転車道があるタイプより、自動車道路の横に自転車道があるタイプの方がエエようにおもう....なんてコトを考えたりしながら、木津川の流れ橋に到着した。道中、このあたりで引き返そうかという、気弱な気分も湧いてきたが、川と橋と山の織りなす景色と好天が気分を盛り上げてくれて、そのまま走り続けることにした。

ところで、この日、自転車に乗った4人の人と会話を交わした。

沈下橋から伏見に行く道中の巨椋(オグラ)あたりの広々とした田んぼの中で出会った方に、道を尋ねると、先を走って、道案内をしてくれた。これから嵐山に行くとのこと。私は伏見の方から将軍塚に向かってぐるっと回って嵐山に行きますわ。と告げると、なかなかのコースですね。じゃぁ、ここから右の側道を上がって橋を越えて右に行くと伏見ですからっと、親切に教えてくれた。礼を告げて、それぞれ左の方角と右の方角に別れてペダルを回した。そうそう、戦国時代に伏見城を攻めたひとたちは、この広々とした見通しの良い田んぼのあたりを馬で進撃したのだろうか。などと考えながら漕いだ。

松本酒造や寺田屋の横を通り抜け、伏見桃山の商店街を突き抜けて、伏見城下の道を北上し、伏見稲荷の横を通過する。流石に、ガイジンさんがいっぱいで、記念撮影花盛り。伏見稲荷が、ガイジン人気ナンバーワンらしい。そのまま北上して、東福寺の中に寄り道する。この土塀で囲われた道の折れ曲がった雰囲気が、この界隈の良さのひとつなんだろう。そのまま北上して、三十三間堂の横を通過する。好きな建物のひとつ。三十三間堂の横の道で、信号待ちをすると、正面に京都国立博物館の谷口吉生設計の端正なゲートが見えて、IMG_1902思わずIphoneを取り出して、自転車に乗ったままスナップ写真を撮った。ここから東の山側に向かって東山ドライブウェーを登る。しんどくなってきたころに総軍塚に到着した。京都を一望できる大きな舞台を作ったコトが、控えめで大胆な創造性なんだろう。ガラスの茶室が、大舞台にアートな空間性を加味して、エエ感じだった。

東山ドライブウェーを南禅寺の方に下って、哲学の道をゆっくり走り、銀閣寺から西に向かう。珈琲を飲みたい気分だったが、まだ先が長かったので、我慢して走ることにした。鴨川を少し北上してから、西に向かって、大徳寺、金閣寺、龍安寺を通過しながら、仁和寺の前で自転車を駐めて写真を撮っていると、私より年配の自転車に乗った男性が声を掛けてきた。エエ自転車乗ってはりますね。どこからですか。大阪からですわ。朝何時に出はったん。6時30分頃です。へぇ!。私は、先週、大阪から自転車で京都まで来て、故障したので、置いて帰って、今日、この自転車取りに来て、これから念仏寺に行きますねん。知ってはりますか....なんていう会話が楽しかったりし、そんなのが、このまま続けて走る気力になったりするのが、面白い。

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広沢池を通過し、大覚寺前から西に進んで、南に向かう嵐山のメインストリートを進むに連れて人が溢れてきた。若いローディーが軽やかに私を抜いていって、信号待ちで止まった時に、こんにちわ!と挨拶を交わすと、もの凄い人ですねぇ!と返ってきた。ほんと凄いですわ。どこからですか。大阪の松原です。奈良を回って来ました。凄いですねぇ。と会話しながら、渡月橋を気持ち良く一緒に走る。川沿いの茶店があるところで、自転車を降りて、歩きながら、紅葉ライドの下見に来たんです。行きますわ。と別れた。

丁度お昼だった。別れたすぐ直後に、木に自転車を立てかけて、さて、どこで食事をしようかと、あたりを見渡すと、すぐ隣に、自転車に最新の自転車バックを取り付けて、リュックを背負い、横浜という名前が入ったシャツを着たひとが、同じように自転車を立てかけて、スマホを見ていたので、横浜から来はったんですか!と声を掛けると、いや、山口の実家から伊丹まできて、そこから自転車で、ここ嵐山まで来たところなんです。有名なおそば屋さんに行くと50分待ちと言われて、どうしようかと。この目の前にある蕎麦屋さんは、あまり人が入っていないので、折角ここまで来たので美味しいものでも食べたいですし。大阪からですか。私は今日は、京都に泊まるのです。ここから横浜まで自走で返ります。そうですか。私は、テキトウに食事する処を探しながらこれから大阪に帰りますわ。といって別れた。

渡月橋の写真を撮ったり、公衆便所に行ったりしながら食べるところを探していたら、その横浜のひとに再び出会った。食べ放題のところか、もうすぐしたら蕎麦屋さんの待ち時間も来そうなので、一緒に食べませんか?と誘ってくれた。午後3時すぎに「まちのえんがわ」に来客があるという連絡がアオキさんからあり、それに、生野区の持続可能なまちづくりのメンバーが、芋煮会をやっていて、午後4時までにはなんとかそこに到着したいという、二つの思惑が、ほんの一瞬、絡めるように纏わり付いたが、スパッと振り切って、この「縁」に流れていくことにした。

食べログ3.5の嵐山よしむらさんに行くと、丁度、入れる時間だった。一人だけの予約だったが、二人でも大丈夫ですかと聞いてくれて、渡月橋と桂川を眺める2階窓際のカップル席に案内された。自転車の服を着た40代と50代のおじさん二人が、しかも、先ほど初めて出会ったばっかりなのに、窓の景色を眺めながら一緒に蕎麦を食べることになり、あれやこれやと、話をして、フェースブックのアドレスを交換したりした。川沿いで、一緒に、自転車と共に記念写真を撮って、お互いに握手を交わして、無事を祈って別れた。とっても奇妙で、印象的で、想い出に残る嵐山の昼食となった。

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嵐山から桂川沿いの自転車道路をひたすら南に下り、淀川に入ってからは、ひたすら西に向かって、ゆっくり漕ぎ続けて、休憩することもなく、鶴橋でやっている芋煮会場に、なんとか午後4時頃に到着した。最後は、芋煮が体に染み渡って、疲れを吹き飛ばしてくれた、140kmの「縁」だった。

投稿者 木村貴一 : 2016年10月30日 23:59 « 元町高架下 | メイン | モノのインターネットの時代。 »


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