2009年09月13日
微笑み
吉野に行く所用があって、久しぶりに、「こばしのやき餅」を食べる。昔からの口コミの人気だけで、午前中に売り切れてしまうらしい。
まぁ、親戚にもあたるのだけれど、冠婚葬祭の時にしか、顔を合わせる事がないので、今日は、ほんの30分ほどだけれど、その秘訣を聞いてみる事にした。
まず、素材はエエものを使う。そして、その素材のバランスが大事。餡や餅や餡に餅を包むのに機械を使うのだけれど、餅を焼くのには、機械化をせず、一個ずつ、「手」で焼くのだと。機械で焼くと、どれもが均一になってしまい、その素材の状態を読み取って焼く事ができない。やっぱり、焼くのが難しい。それで、作れる数には、限りがあるのだと。その表情には、エエ職人さんが、共通して持つ、独特の微笑みが、うかがえた。
そう言えば、鰻屋の友人が言うのには、鰻は、串刺し3年、焼き一生といって、「蒸す」と「楽」なのだが、蒸さずに炭火でじっくりと焼くのが難しいのだ・・・・・と微笑む。やき餅の作業場を眺めながら、そんな言葉を想い出した。
そうそう、先日の上棟式の宴席で、刃物を研ぐ砥石の話になって、大工さんが、「嫁さん貸しても、砥石は貸すな」という諺があるぐらい、砥石には自分のくせが、ついてしまうのだ・・・と、微笑んだ。あっ、言葉で表現すると、女性に対して、凄く、失礼な表現になってしまっているので、それは、とっても謝罪しておくとして。
職人さんの世界には、公然の秘訣が、いろいろ、あるのだとおもう・・・・・。
吉野杉の床材や壁材を製造直売して、うちに納入してもらっている、丸岡材木店にお邪魔する。桟積みの仕方。乾燥の仕方。いきなり実加工をせず、一端切りそろえる加工をして、板の状態を確認して、抜け節パテを処理などをしてから、刃を替えて、実加工をする。抜け節の処理の仕方。ちょっとしたパテ埋め。サンダー仕上げの方法。エンドマッチの加工等々、仕上がった杉床材の表面からだけでは読み取れない、隠れた手間の説明と微笑み。確かに、話を聞くと、確かに、愛着もでる。
金峯山寺・蔵王堂にも、ちょっと、立ち寄る・・・・。相変わらず、美しい屋根と軒。弊社のK本くんが呟いた。90cmの庇を延ばすのに、あーだ、こーだと言っているのに、あー、なんとも凄い軒の出だなぁ・・・・・と。どんな職人さんが、墨付けをし、刻み、上棟をし、屋根を造り、微笑んだのだろうかと、正面に対峙しながら、想像してみた・・・・・。
微笑みを持てるようになりたいものだなぁ・・・・とおもう。
投稿者 木村貴一 : 2009年09月13日 21:09 « 太陽さんには感謝したい。 | メイン | エネルギーを得るためにはエネルギーがいる »