2011年04月17日
文明
「文明災」というコトバを耳にする。復興構想会議の特別顧問となった梅原猛さんの言葉で、それを知ったのは、11日の月曜日のこと。
梅原猛・哲学者――原発事故は「文明災」、復興を通じて新文明を築き世界の模範に - 11/04/05 | 12:18
今回の事故は、あらためて近代文明の是非を問い直し、新しい文明を作るきっかけにもなるのではないか。まずは日本が率先して原発のない国を作り、それを世界に広げていくべきだと思う。
そのためにやるべきことは二つ。
まず、代替のエネルギーとして、太陽光エネルギーの研究をすすめるべきだ。これまで、原発を推進する研究に莫大な研究費を投じてきた。その研究費を、太陽光エネルギーに投入する。日本企業も京セラなどはこれまでも取り組んできたが、それ以外の企業も本気で取り組むべきだろう。
もう一つは、過剰なエネルギーを浪費するような生活から脱却すること。今原発が賄っている電力は全体の3割程度。太陽エネルギーによる代替とともに、一人ひとりが生活を改めることが重要だ。
原発の事故は、近代文明の悪をあぶりだした。これは天災であり、人災であり、「文明災」でもある。
今回の震災について、石原慎太郎さんが「天罰」という発言をされたが、何の罪もない一般の人々が被害にあわれたこの災害に対して、「天罰」という表現は間違っている。もし「天罰」があるとすれば、それは道徳心を失った政治家、実業家に対して下らねばならない。
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(聞き手:島 大輔 =東洋経済オンライン)
この月曜日に、木造2階建て住宅の上棟式があって、ここ数年、リフォーム工事が増え、新築工事の割合がめっきり減って、それだけに、上棟式というのは、今まで以上に、嬉しい式典であり、木組みの下での会食は、幸せな気分になる。話題は、必ず震災の事に及ぶ。お施主さんの仕事での震災の影響の話などだが、ここに来て、原発の影響による、省エネの事が、より大きな関心事に移っているように感じる・・・・。
火曜日の午前中にリフォーム工事の現場定例打ち合わせに行く。この震災の前に着工していたのだけれど、ユニットバスの搬入予定が、3・11以降だったために、ユニットバスの入荷が大幅に遅れている。遅れるのは、仕方ないですよぉ。と笑顔で答えてくれるお施主さん達。こういう皆の気持ちが、間接的にだけれど、震災の支援になっているのだとおもう。
同じ火曜日のお昼からリフォーム工事の定例打ち合わせに参加する。こちらはユニットバスの入荷が遅れていだけでなく、構造用合板と断熱材の入荷が遅れて、大工さんが「手待ち」の状態になりそうだったけれど、なんとか、ぎりぎりのタイミングで手配が付いて、ほっとひと安心。何よりも、大工さんがほっとした様子で、一生懸命仕事をしていた。材料が入荷しないと、職人さん達の仕事が出来ない訳で、ユニットバスを施工する職人さん達は、仕事が出来ず、「あそんでいる」状態なのだそうだ。震災の影響がじわっと忍び寄る。
同じように、お施主さんは、遅れるのは仕方ないですよ。と誰もが、気持ちのどこかで、自分達の事より、震災で困っている人たちのことを気遣っているのだった。現場から自転車での帰り道、桜の下を通り抜ける。今年の桜は、いままでのどの年より、格別に色が白っぽくて、ある意味美しい色合いだと眺める。まさか、震災の影響ではあるまいか・・・・。
水曜日。協力業者の瓦寅工業さんの会長がご逝去されて、その社葬が阿倍野であった。瓦組合の理事長を歴任されておられ、阪神大震災では、屋根瓦の修復のために、多大な尽力をされて、その功績もあり、勲章を拝受したのだと聞き及ぶ。そんな話を聞きながら、今度の震災の大きな特徴は、あらためて、津波と原発の問題なのだ。特に、原発に対する考え方が、ひとりひとりのライフスタイルにまで、影響を及ぼそうとしているのだと、頭のどこかでぐるぐると廻っていた。
木曜日。一年に2回だけ催す、協力業者とのゴルフコンペをチャリティーゴルフコンペとして、28人で実施した。勿論、花見と同様に、開催するのかどうかという迷いもあったけれど、弊社の会長自らがティッシュボックスをリメイクして作成し、その募金箱に集まった56,000円は、楽しんだエネルギーを義援金として変換したエネルギーとして届けたいとおもう。
その木曜日の夜。設計の打ち合わせがあって、施主のお仕事が、土産物の製品を商う仕事で、この震災の影響で、外国人観光客が来なくなって、浅草に卸す商品が全く売れなくなり、パートの人たちも減らさなくてはならないかもしれない、リフォームもどうしようかと迷うぐらいで、死活問題だと嘆く。原発の影響による経済的損失の影が、あちらこちらに忍び寄る。
金曜日。数年前に1階のリフォーム工事をさせて頂いたお宅が外壁の塗り替え工事をする事になり、そのお引き渡しがあって、久しぶりにお伺いし、あれやこれやとお話しをする。2階のリフォーム工事がまだ残っていて、その工事の時には、夏を涼しくするために、断熱材や遮熱や風通しの事を考えたいです。というのが、冷暖房費のランニングコストだけの事でなく、原発の事を意識したエネルギー問題が、いまや共通に考える話題のひとつになっていて、それは凄い出来事だとおもう。原発問題が、はっきりと、皆の意識を変えているのだった。
土曜日。新築工事の設計打ち合わせがあり、長期優良住宅の補助金が閣議決定されているのだけれど、正式発表が遅れている。そのために、申請と着工が伸びている現場があり、ここにも震災の影が忍び寄る。
その土曜日の午後。堺に民家のリフォーム工事の現地調査に参加する。弊社のトミマスくんとタナカくんと床下を覗いて、ネコの死骸を発見し、撤去したのは、所謂、想定外の出来事であったのだけれど、それよりも、原子力発電の事を考えるとね。オール電化。良いのでしょうかね。プロパンガスの地域では、どうしましょうかねぇ。という施主の悩みは、大阪であっても原発問題を自分たちの事として真剣に取り組み始めている悩みなのだとおもう。
日曜日。住宅相談会があり、施主の方との、太陽光発電やオール電化やガス給湯器や床暖房や断熱材の話題が、CO2の問題意識ではなく、日本のエネルギー問題への意識に変わってきているのだと実感する・・・。
「文明」というコトバを聞いて、久しぶりに聞く、忘れかけていたコトバで、新鮮な印象を持った。こうやって、この一週間、いろいろな人と接すると、誰もが、こころのどこかで、文明って何。となんとなく問いかけているのかもしれないと思えてくるのだった・・・・・。
投稿者 木村貴一 : 2011年04月17日 19:56 « 穀雨 | メイン | チャリティー花見 »