2006年05月28日
五島列島の旅(その5)
朝食を食べた後、このキャンプ場で、一日中、テニスとローラースケートをするのだぁ。 と言い張っている息子を 強 引に車に押し込んで、 出発することにした。結果として、 それが子供にとって良かったのかどうか、未だに、葛藤もあるのだが、まぁ、とにかく親の身勝手で、そうすることに決めた。 最初に訪れた頭が島教会で29の教会を巡るスタンプ帳を手に入れた息子は、それを押すのがひとつの楽しみでもあった。 そんな事も少しは手助けとなって、しぶしぶ車に乗り込んだ。
出発してほどなく、昨日の巡礼者達のマイクロバスとすれ違った。ということは、私たちも巡礼者かな、なんてうっすらと考えながら、 車を運転した。この島に着く前に想像していた道路より、アップダウンと曲がりくねりがきつく続く山道を、現存する木造教会の中では、 県内でも最も古いといわれているらしい、江袋教会を目指した。
道中でコンクリートの教会を三つほど見た。意外なところに建っていたりするので、 探し当てる喜びはそれなりにあって、楽しかったのだが、 ひとつ間違えるとレゲエバーとか体育館とか結婚式場にもなりかねない危うさと、ちょっとした喪失感も感じてしまうのは、 鉄川与助の教会が、表面に見える空間以上に、その背後に潜む、職人の手仕事による努力と、 そのものづくりの苦労の過程を想像してしまうからなのかなぁ・・・・・。
朝の江袋教会には静謐なムードがあった。里山というか里海というか、 そういうシチュエーションの中にそれほど教会らしくない外観が、 謙虚に建っていた。花と山と海に囲まれた周辺の雰囲気も、 すごく、良かった。
家族で椅子に座って、少しの時間だが静かに過ごした。その中に置いてある絵本を奥方が手にとって、子供に読んで聞かせた。 がさつなうちの子供も静かに聞こうとするムードがその教会にはあった。
和室の長押の上にボールト天井が乗っかっている。そんなイメージだった。 色ガラスの上に欄間を作る要領で模様がデザインされいるそんな感じだった。大工と一緒に相談して作ったのかどうか定かではないが、西洋風の、 そして教会風の天井を作るのに、「座敷の竿縁天井の竿をボールト状に曲げて、天井板を貼ったら上手いこといくのとちゃうかぁー。 そんなことぐらい、ワシらの腕やったら、へのカッパやでぇー。」なんて、大阪弁での大工との会話があろうはずはないが、きっと、そんな感じで、 工夫と苦労を重ねて、作ったのではないのかなぁ・・・・・・。完成したときの「職人さんの笑み」が見えてきそうだった。
背面の出入り口の両脇に「ほほえみ」と書かれた額が飾ってあった。薄暗い教会から外に出ると、雲ひとつない青空。
山間から見える真っ青な海。集落。花。と、ほんとうに、微笑むような雰囲気だった。思わず、今日の天気に感謝した。
教会の坂道の脇の家の破風に黄色や緑の色が塗られていた。それが、妙に、印象に残ってしまった。そういえば、
頭が島教会の脇にある家も石造りで興味深かったなぁ・・・・。頭ヶ島も江袋も石垣の雰囲気が素朴で良いなぁ・・・などと思い起こしながら、
この島の最北端にある津和崎を目指すことにした。
(つづく)
投稿者 木村貴一 : 2006年05月28日 11:19 « 五島列島の旅(その6-4) | メイン | 五島列島の旅(その4) »