2009年04月26日

音なき声

春なのに寒い。強い風が吹く。夜中、風鈴が、連呼して、情緒も何もあったものでない。怖いぐらい。そのうえ、横で、大きなイビキ。 時折、無呼吸症候群になってたでぇ。完全に、おっさん。やわぁ。と、朝食を食べながら、奥方が、吠えた。あらためて、 自分の実態にダメだしされると、よけいに、寒く、感じる・・・・・。

日曜日の大安という事もあって、朝、地鎮祭があった。時折、強い風が吹く。神主さんに玉串を手渡されて、祭壇に向かって、 二礼二拍手一礼をし、土地の神様に工事の無事竣工を祈る。そして、施主への祝福。

その一時間後、長年、工事をさせて頂いている、お施主さんが、お亡くなりになられ、その葬儀が、神式であった。神式の葬儀というのは、 初めての経験だった。御霊前に向かって、玉串を奉奠し、二礼二拍手をするのだけれど、拍手は音をたてずに、手を合わせる前に、手前で、 止める。読経も流れない。柏手の音も響かない。「静か」が、そこを支配していた。これはこれで、エエ葬儀だなぁ・・・・。 安らかにお眠り下さい。と共に、感謝を捧げる。

それにしても、不思議な気分だった。ほんの一時間の間での出来事。作法のちょっとした違い。地鎮祭と同じように、神式の葬儀にも、 鯛や野菜や果物などのお供え物があった。同じように二礼二拍手をするのだが、方や、パンパンという、厳かで、元気を産み出すような「生」 の音の世界。方や、無音の拍手による「死」の世界。

どこかで聞いた禅の公案を思いだした。「両手を合わせて打てば音が響くが、片手では何の音もしない。 隻手(せきしゅう) の音なき声を聞くとはどういうことか・・・・」 う~ん、皆の音なき声が、 祈りとして会場に満ちていたのか・・・・・。

その後、定例の日曜相談会があった。

Aさんご夫婦。まだ、ベビーカーに乗る赤ん坊が一人。大阪市内の南部で、3000万円の予算で、あぁ、この予算で、 大阪市内での土地購入からの新築は厳しいか・・・・。やはり、中古住宅を購入してのリフォームとなりそう?・・・・。「車庫」 を設けるかどうか、それは、都心で生活する家族の最初の悩みのひとつでもあるようだ・・・・。

テーブルの椅子に座って、食事をし、テレビを見、パソコンをし、子供はそこで勉強をし、コミュニケーションをし、・・・・・、 いやいや、それをテーブルではなく、「座卓」で、そうゆうことをして、ゴロゴロ、ゴロゴロ・・・・、そうそう、気持ちのエエ、 ラウンジチェアーを一脚だけ置いて、座る・・・・・、風がすぅーーっと通り抜ける家が・・・・、なんて、ライフスタイルを想定しながら、 中古住宅を探すことに・・・・・。

もうすでに、土地は見つけてあるBさんご夫婦。ベビーカーの子供さんが一人。いま土地を交渉中。和室、 畳の部屋と本棚が欲しいお父さん。キッチンを中心に、お父さんの和室も、家事も洗濯も、食事も、子供の事も、 手の届きそうな範囲に配置したいお母さん。家づくりのいろいろな事を勉強をしながら、たたき台のプランからはじまる予定・・・・・。

リフォームの打ち合わせをしていたのだけれど、半年ほど中断していたCさんから、突然の電話が有り、小学生の子供さんお二人と、 ご両親も伴って、来社。前回打ち合わせのリフォームプランを机において、あーだ、こーだ、と、寄って集って、プランを再編集する。その横で、 子供さんは達は、カーペットの上に座り込んで、仲良く、レゴをしながら、楽しんでいる。再スタートの予定・・・・・。

きっと、それぞれの家族の中に、「音なき声」が、そこかしこに、潜んでいるのだろうなぁ・・・・。「私」を空っぽにして、 その声を聴いてみる事が大切だなぁ・・・・・と、感じた。

 

 

 

投稿者 木村貴一 : 2009年04月26日 22:41 « 北斎と富士とB級グルメ | メイン | うつろい »


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