2013年03月10日

深夜の高速道路

土曜の夜、8時30分、会社を出る。応接室で、お客さんと打ち合わせ中だったが、設計のタナカくんとヤマガタくんにあとの事はお任せして、車で出発する。ららぽーと横浜で、と言ってもグーグールでしか見たことがなかったのだけれど、とにかくそこで、アーバンリサーチ・ドアーズの店舗工事をしていて、スチール、大谷石、漆喰、無垢床材、古材、塗装、といううちのレギュラーメンバーの職人さんたちが大阪から横浜まで出張している。

なんばパークスのアーバンリサーチ・ドアーズは設計が京都の森田さんで、うちで施工した服のセレクトショップなのだけれど、いわゆる自然素材を使った手仕事による現場施工をしていて、「なんとなくそれが何なのかはっきりとは理解できないかもしれないけれど、手仕事の空気感が店舗に漂っているのが大切なんです」みたいな事をアーバンリサーチの社長さんが仰って、同じような雰囲気を持った店をあっちこっちに造るので、どぉ、行ってよぉ。と頼まれたのが昨年の秋。

頼まれるという事は大変有難いことなのだけれど、現地で初めて会う職人さんを使うのには、かなりのリスクがあって、なんばパークスで施工した職人さんたちが遠方まで行ってこそ、「手仕事」の信頼に応えられるわけで、はじめは、私も、それに現場担当のムラカミさんも、それに職人さんたちも尻込みしていたのだけれど、アーバンリサーチさんの「勢い」がそうさせたのだとおもう、ほな、いっちょう挑戦してみましょか。ということになったのが昨年末の事だった。

一部が営業中なので、夜の10時から翌朝の7時までが施工時間で、朝の7時までに横浜の現場まで到着していないと、何のために横浜の現場まで来たのか意味ないじゃん。なので、電車より、車を選択する。というより基本的にひとりで長距離を運転することが好きなのだ。そんな訳で、出発したものの、すぐに空腹な事に気付いた。

日曜日の休みを利用して横浜まで出掛けたのには、家族的な事情が絡んでいて、高校生の次男が修学旅行で海外旅行中で、その次男の修学旅行を利用して奥方も友達とふたりで海外旅行に出掛けてしまって、まぁなんと段取りのエエ奥さま。ひとり取り残された旦那さんの「私」。そうそう、このブログの読者の方なら、「出発直前奥方パスポート見あたらない事件」をご存じの方も多いとおもうのだけれど、今回は、1週間前から、毎日、パスポート大丈夫か?と、挨拶代わりのコトバを放り投げると、大丈夫に決まってるわ。みたいな関西人のノリがあって、そんなこんなで、ひとりぼっちの日曜日なら、家にいるより3人が別々に出掛けてみようかと・・・・。

家族不在で、急ぎで、空腹を満たすための通り沿いにある牛丼店は有難い。そんなのが狙いなのだろうが、そういえば、この4年間ほど、関西大学の木造設計製図の後期授業のお手伝いに通っていて、お昼の時間帯の混んだ学生街で、手短に空腹を満たすために、牛丼を食べるようになって、それまで、数回ほどしか食べた事がなかったのに、利用回数が少々増えた。牛丼食べると、ちょっとした侘しさも一緒に食べてるような気もする。

キャンピングカーに乗っていた時は、夜の9時や10時頃に出発して・・・というパターンが多かったので、夜の9時頃から夜中の1時頃までに走る夜の高速道路が好きで、それはなんともいえないムードの孤独感がじわっと忍び寄ってきて、そんなムードの中で暗闇の中、一定スピードで数時間走り続けると、車のゲームのように、自分が止まっていて景色が流れていくような錯覚にとらわれる時間帯があって、それがちょっとしたナチュラルハイを伴う。景色の流れと共に、時々いろいろな思考と感情も走馬燈のように流れて、心配事であったり、くだらないギャグのようなコトバであったり、会社のコト、家族のコト、設計のコト、哲学的なコトなどなど・・・。それで、こんなのと共に、独特の「旅」の高揚感のようなものも湧いてきて、それが例の夜の時間帯や午前4時から午前6時前後の明け方の時間帯だったりする。

久しぶりに味わうちょとした孤独感と旅ムードを満喫しながら、深夜の新名神や湾岸自動車道や新東名を快適に走りながら、午前0時半頃に、足柄SAに到着し、唐突に襲ってきた眠気に従って、車で仮眠をとることにする。サービスエリアで仮眠をする時は、便所や店舗のそばに停めると、多くの車と人の出入りが頻繁で、エンジンの入り切りやドアの開け閉め、人のざわめきなどなど、落ち着かなかったりするので、トラックが沢山停車している間に車を停めて、トラック野郎達と一緒に仮眠をする。それが、ちょっとした気分だったりするのだ。

偶然にも停車中にフェースブックからのメッセージがあって、そんなやりとりをしているうちに、30分ほど、眠れないままに、うとうとして、気がついたら寒さでなんとなく目が覚めて、あっ、寝ていたな。と知ったのが午前3時30分だった。それでエンジンをかけて暖房を効かすと、今度は深く寝入って、再び目が覚めると午前5時30分をすっかり回っていた。きっと本当は前日の土曜日の打ち合わせで疲れていたのだな・・・。それよりも寝過ごしたコトに少々慌てて、トイレをすまし、ドリップ珈琲を買って、午前7時までに到着せねばと横浜を目指す。

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現場担当のオオムラくんの案内で、工事中のエピソードを教えてもらいながら、搬入経路などを見る。丁度大工さんたちは作業を終えて掃除中だった。映画で見たような、戦地で頑張る兵士を慰問に来た将校のような配役で、お互いが瞬時に役者になりきりながら、握手をかわしたり肩を叩いたりして、再会と激励をかわす。横浜の大阪人なのだ。

ワンルームマンションと3LDKのマンスリーマンションを借りて、野郎たちが1ヶ月間の共同生活をしていて、それが独特のむさ苦しい雰囲気なのは、想像通り。まちのえんがわワークショップで左官ワークショップを主催してくれた山本左官の職人さんたちも深夜の漆喰塗りを終えて熟睡中だった。

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そんなこんなで、午後8時頃には大阪に帰り着いていて、このブログを書くいまとここ。横浜見物をする気分などまったく湧いてこなかった小旅行をこうして振り返って見ると、高速道路を運転するその行為のなかと、流れていく景色と一緒に流れる心情風景の中に、現場の無事を祈る気持ちも一緒に流れていたのだとおもう・・・。

投稿者 木村貴一 : 2013年03月10日 23:59 « 図と地 | メイン | 相談事 »


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