2016年08月21日
熱帯夜
お盆に、八ヶ岳で宿泊し、大阪に戻ってみると、むちゃくちゃに大阪が蒸し暑いことにあらためて驚き、夜になっても蒸し暑いままで、八ヶ岳は避暑地であるから当然涼しいわけで、それにしても、その前日に宿泊した東京の夜の方が、大阪の夜より断然過ごしやすく、夜にブラブラする気にもなったが、大阪に戻り、夜になっても、クーラのかかった部屋から一歩外に出ると、ムッとした空気が身体を包み、まるでサウナの扉を開けた瞬間のような感覚で、夜でもブラブラする気に到底なれず、でも、なんとなく、そんなのが当たり前で、慣れているような気がしていたが、今年はことのほか蒸し暑い気がする。
昨日の夕方は、うちの会社に、偶然居合わせる事になった、建築家のイシイリョウヘイさんと建築家のハヤシケイイチさんと一緒に、近くの居酒屋のあそび菜さんにいって、あれやこれやと建築談義をしていたら、ハヤシさんが、一日のうち、神戸の自宅から、京都行って、それから、生野区の小路まで、来て、いやぁ、神戸京都大阪のなかでも、ここ小路が、一番蒸し暑いとおもいましたわ!っと云う。
それ、ほんまでっかぁ!と、ツッコミを入れるのが、当然、大阪人としての礼儀だが、それにしても、昔は、長屋が連なる街並みの路地に、西風や北風が吹いて、大阪湾から生駒山へ抜ける涼しい風が通り抜けて、そんな風を路地の地窓から取り込んだり、道端に床几を置いて、「ショウギ」っていうのは、庭や露地に置いて月見や夕涼みに使う細長い腰掛のことで、道端で夕涼みをしたりしていたが、最近は、路地はクーラーの室外機置き場となり、おそらく、今や、全ての長屋の家にクーラーがあり、それが、一斉にかかっている熱帯夜の夜は、路地に置かれた室外機から熱気が吹き出すわけで、きっと、路地という路地から熱気が道路に吹き出して、まち全体に熱風が充満しているのかもしれない....。
最近、竣工した新築住宅の堺市・F邸では、お客さんの希望もあって、断熱気密に力を注いで、少し古い断熱性能の表現だが、Q値1.3で、隙間風の性能を示すC値は0.35の住宅が完成し、最近訪問した設計担当のササオさんが、嬉しそうに「私」に報告してくれて、外気温が35度の時に、室内温度がどの部屋もほぼ均質に28度で、家に入ったとたんに、凄く心地良い感じで、それも10畳用のクーラー一台で、2階も含めて、45坪ほどのほぼ全ての部屋が涼しく、たまに2階の6畳用のクーラーを補助に動かす程度だそうです。と報告してくれた。
ちなみに、その住宅は、屋根断熱で、60mmのQ1ボードに100mmのグラスウールを付加断熱していて、やはり、天井断熱より屋根断熱のほうが、夏の事を考えると圧倒的に良さそうに体感するわけで、壁は120mmのグラスウールに気密シートと、床は100mmのポリスチレンホームの通常の床断熱で、ササキ大工がC値が0.5以下になるように挑戦しますから!というコトバ通り、建物の隙間風を少なくした事が、どれだけ、快適性に貢献しているかを判断しにくいが、それでも、室内と室外の温度差が大きくなればなるほど、C値の低い家は、冷房や暖房の効率が良くなるだけでなく、心地良い温熱環境を体感できる。
それに、今回は、遮熱を考慮して、2階の窓には遮熱スクリーンを取り付けたり、1階の南面の大開口部には、スクリーンタイプの電動シャッターも取り付けて、葦簀に替わる現代的なチョイスで、夏の暑さを凌いでいたりする。そうそう、第三種換気で、自然吸気と機械排気により、家全体が、ゆるやかに空気が循環しているのも、温度ムラが少ない家の要因だとおもう。断熱や気密や換気された住宅が、冬だけでなく、大阪のような蒸し暑い夏に、どのような快適性を生み出すようになるのかも、問われているのだろう。
少しだけ誤解があるのは、気密住宅というのは、決して、風通しの悪い家ではなく、C値の低い家の方が、窓と窓を開けると、風がすぅーっと抜ける心地良い家になることを、工事中でも体感出来たりするわけで、確かに気密が高いので、家の換気に気を使う事が必要になり、それに、断熱か効きすぎると、暑い夏は、人の熱気で、熱も閉じ込めてしまいがちで、やはり、外気温が、28度から30度以上になると、クーラーを入れるのが、断熱の高い家の効率と居心地の良い快適性で、密集市街地では、クーラーをかけない自然通気だけで過ごせる家になりにくいのは、温暖化の影響なのかもしれない。
なんていう話もイシイさんやハヤシさんとしていたのだけれど、そういえば、昨年のお盆にイタリアのカルカータやサンチミジアーノなど山岳都市を旅した話をしていたら、あのイシイオサムさんも、40代にイタリアに3ヶ月ほど滞在して、いくつかの山岳都市を気に入って、旅していたらしく、そうそう、以前からなんとなく、ミヤザキハヤオさんの醸し出す建築の感覚とイシイオサムさんの建築の感覚に似た空気感を感じていて、それは、どちらも、カルカータなどのイタリアの山岳都市からインスピレーションを得て、それを自分流に再創造していたからかもしれない...。
などと、とっても蒸し暑い大阪の生野区の小路で、ゆずのソーダ割を飲みながらイタリアの山岳都市を想像したりして、あれやこれやと建築談義をした、とっても楽しい熱帯夜だった。
投稿者 木村貴一 : 2016年08月21日 23:43 « 工務店の流しソーメン | メイン | お盆と早朝と東京。 »