2005年08月07日
聴く
「まぁ、聞いてくれ」と言う言葉で始まるマイルス・ディヴィスの自伝がある。ご存じのない方もいるかもしれない、 マイルスとはもう他界してしまったが、ジャズのトランペッターだ。この「まぁ、俺の話を聞いてくれ」 という言葉がジャズという音楽がどんな音楽かをひと言で表現しているといえるのかもしれない。 楽器を持っているそれぞれのミュージシャンが俺の話を聞いてくれと言いながら演奏しているかのようだ。漫才だって、そんな感じがする。 お互いが俺の話おきいてくれと主張し合い。ボケたりツッコミをいれたりしながら、ひとつネタとして完結していく。 ジャズの演奏も漫才と似ている。お互いの演奏を聴きながらボケたりツッコんだりしているかのようだ。でも、残念なことに、 私は演奏できないのでその真髄まではわからないのだ・・・・。そうそう、そんなことより、この「ブログ」という文化そのものが「まぁ、 聞いてくれ」という世界なんだと思う。
暑い日が続く。近所の人と道ばたで出くわすと、おっちゃんもおばちゃんも、いちように「暑っ~いでんなぁ・・・」 「ほ~んまに暑いなぁ」と言葉を掛け合いながら通り過ぎていく。「まぁ、ちょと聞いてくれ」と言うわけだ。そして、 昨日の晩もやはり暑かった。家に帰ると町内会の「盆踊り大会」が小学校であったので、誰も居なかった。どうしようかなぁと思うまもなく、 用意してくれてあったハヤシライスとビールをデッキに持ち出してDVDでも見ることにした。夕涼みも兼ねて、気分は野外シアターだ。 なんて気取ったりしながら・・・ね。
たまたま手に取ったのがマイルス・ディヴィスのDVDだった。1970年のワイト島のミュージックフェスティヴァルでの収録、 参加したミュージシャンが2003年にインタビューに答えている。既に4~5回は見ていると思う。何とも何とも不思議なことなのだが、 このDVDは私の長男が今年の3月の私の誕生日にプレゼントしてくれたものだ。自分でチョイスしたらしい。そう言えば、長男が中学・ 高校生になるにつれ、私の持っている2~300枚ほどのレコードのうち、ジャズのマイルスやコルトレーンやミンガス、 それにロックのボブマリーやニールヤングと言ったレコードは長男に「渡った」。時代を超えて受け継がれる何かがあったのだろう。そういえば、 初めて長男を連れて出掛けたコンサートがお祭り広場で催されたライブアンダーザスカイに出演したマイルスだったのだ。 そんな事が影響したのだろうか、長男が高校を卒業する3月と重なる私の誕生日へのそれがお礼だったのかもしれないなぁ・・・・・。 喜びと共にちょっとした神妙な気持ちも味わったという、その時の記憶が今、蘇った。
ものづくりのプロセスの教科書はと聞かれると、マイルスディヴィスの一連のアルバムと答えるかもしれない。 マイルスの好き嫌いは別にしての事だが、2~30代には繰り返し繰り返し聞いた。それほどそのプロセスに刺激される部分が多かった。 このDVDでは本編も然るものだが、ボーナストラックにある参加したミュージシャンのインタビューも面白かった。キースジャレット曰く、 「バンドを率いたメンバーの中ではマイルスは最も耳が良かった。」ハービーハンコック曰く「彼には聴く才能があった。聴き方を知っていた。」 と。
仕事をしていると「聴く」と言うことがいかに大切な事であるか、様々な場面でぶつかる。「聴く」事が出来て初めて「まぁ、聞いてくれ」 と言えるのかもしれないなぁ・・・・・・・。
投稿者 木村貴一 : 2005年08月07日 13:04 « 香り | メイン | ツーショット »