2014年09月07日
住宅相談会と「グーグルマップ」とNYの休日4
朝10時からのAさんは、実施設計に入る前の模型確認で、2世帯住宅のご両親が打ち合わせにお見えになり、明日は息子さんご家族の打ち合わせで、仕事の都合で時間が合わないので日曜日の本日の住宅相談会と月曜日の明日平日との別々の打ち合わせになった。それで、お母さんが、徐々に力が入らなくなっていく難病らしく、車椅子の生活を余儀なくされていて、そのうち立てなくなったり腕に力が入らなくなっていくらしいのだけれど、今は車椅子であるものの元気にされている。打ち合わせは、「まちのえんがわ」で、車椅子のお母さんとご主人が土間で、設計のタナカくんと私が縁台に座って打ち合わせするという、「縁側スタイルな打ち合わせ」
そのお母さんの部屋は、8帖に2間長さの収納があり、ベットから庭が見える引き違いの吐き出し窓がある設計で、壁を隔てたすぐ隣に、便所と洗面所と脱衣室とお風呂があるなのだが、それでも夜中に誰かに声を掛けて便所に行くことになり、毎日の事だと非常に気を使って辛くなるので、それで、ポータブルトイレを横に置いてたりするかもしれないねぇ・・・・と、アイスコーヒーでも飲みながらコミュニケーションをしていると、それじゃぁ、思い切って、ベットのすぐ横にトイレをそのままの姿で設置すれば良さそうですね・・・と言うと、なんか贅沢で我が儘すぎるようで、そんなん言い出せなくて・・・と仰る。
最終的に、まだまだどうなるか解らないが、車椅子で入れる寝室のベットの左横にタンクレストイレをそのまま素直に置き、ベットの右横にベットの長さ分のカウンターを取り付けて、その上に小さな洗面器も設置し、便所と洗面とテレビと外の景色が、ベット回りで快適に使える設計を目指そうかとおもっている。そうそう、用を足す時は、リモコンで、窓のカーテンかロールスクリーンを操作することが必要になるのだろうね・・・・。
午後1時からのBさんは、7年前に新築で購入した住宅を同じ小学校区内で住み換えたいというご希望で、それが、なぜ、まだ築7年なのに、家を買い換えるのですか?とお尋ねすると、3軒の新築が同時に建て売りされて、その端の家を買ったのだけれど、その横の2軒がどちらも離婚されて、ご主人だけが住んでおられて、なんか、子供の友達もいなくなってしまい、次はうちかな?みたいな気分にさせられて、まわりのムードがなんとなく良くないような気がして・・・。とお話しされて、ただただ、へぇーっと、世の中には不思議な状況が起こるもんだなぁ・・・と妙に聞き入った。
住み替えローンの問題など、日住サービスのナリタさんに同席してもらって、アドバイスをもらいながら、話をすすめる。築年数の古い真壁づくりの趣のある中古住宅を見つけておられて、IPADのグーグルマップで確認しながら、お話をお伺いしたのだけれど、それにしても「グーグルマップ」のストリートビューがあるお陰で、取り敢えずの現地確認が出来る世の中になって、初めてのお打ち合わせでも、共有認識が持てるし、コミュニケーションに奥行きがうまれて、とっても有難い事で、勿論、それでも、実際この目で見なければ、周辺のムードとかスケール感とか絶対的に解らないのだけれど、それにしてもそれにしても、「グーグルマップ」はやっぱり凄いねぇ・・・。
そうそう、「NYの休日」での「建築巡礼」での出来事。フランクロイドの落水荘の見学は、インターネットで予約ができて、日本から現地8月12日の午後3時に予約し、NYのレンタカー屋さんの開店と同時の午前6時30分に出向いて、日本語ナビがついているトヨタ車のレンタカーをゲットし、初めてのNYの街とフリーウエーをドライブするも、45分後には、フリーウエーのコース取りを間違えて大きくコースを逸脱し、危うく長男と大喧嘩になる寸前に、偶然にも正規のコースに戻るという幸運に恵まれた。それからは、「グーグルマップ」よりも、ナビが発音する、このまま右車線をお進み下さい云々・・・と喋る片言のような「ニホンゴ」だけを信じるコトにしてフリーウエーを走り抜け、その間も、FM放送から流れる、60年代70年代ロックの選曲の良さに気分が良くなり、フリーウエーをFMのロックを大ボリュームで聴きながら走るという、片岡義男的アメリカかぶれをやってみたために、ナビのニホンゴを聞き逃し、危うく車線変更を逃しそうになって、ギリギリセーフが、2度ほどあった。
郊外のフリーウエーを走ると、日本にあるようなタイプのドライブインがアメリカにもあって、いやきっと、アメリカにあるようなドライブインが日本にあるのだろうが、とにかく、そんなドライブインを初体験してみて、ハンバーガーとコーラを食らい、ガソリン補給にも挑戦し、そこで、危うく、無賃補給の犯罪者になってしまう、超寸前ハプニングに見舞われて、ま、そんなエピソードを語れる機会がくるのかどうかは別にして、とにかく、途中からは、どしゃ降りのペンシルベニヤ州の雨のフリーウエーを、そこそこのスピードで走り抜けながら、ちぇ、ついてないなぁ!っと、ちょっとアメリカ人ぽく激しい雨を嘆いてみると、そのうち、ピッツバーグ郊外のミルランという、いかにもアメリカ的田園とアメリカ的アップダウンの田舎道を走るうちに、雲の合間から青空と太陽が出迎えてくれるという、嬉しいご褒美に、すぐに踵を返して、神への感謝に転じるという、NY~落水荘580kmのドライブだった。
その間、iphoneの「グーグルマップ」で、自分のいまここの位置と目的地までの道を確認出来るのが、とてつもない安心感になって、それが、例え、グーグルマップさんであるにしろ、「見守ってくれる存在」っていうのは有難いものだね・・・。
何よりも「グーグルマップ」さんが最も頼りになったのは、フィラデルフィアでのルイスカーン建築巡礼だった。カーンのエシェリック邸という、ライトとはまた違う趣の、憧れとしての超有名住宅建築があって、同行した、うちの長男が、日本でグーグル地図を旅しながら、その住所を正確に探し当てていて、それをナビに入力し、なかなか馴染めない車線変更をカタコトのニホンゴを唯一の頼りにして、目的地付近に到着し、いかにもアメリカ的住宅街の道端に車を停車して、散歩がてら捜し物をする観光客風日本人親子が、アメリカの住宅街を歩いている様子は、いかにも妖しげなはずで、それが、道角を右折し、行き止まりの道を歩むうちに、小さなエシェリック邸を発見すると、わっ、見つけた!と親子同時に発声し、そのうえ、想像以上にカワイらしい大きさのエシェリック邸が徐々に近づいてくる映画的映像体験が、鮮明な喜びの記憶として残る住宅巡礼となった。
怪しい日本人親子をカバーすべく、日本人的礼儀作法としての節度を守らなアカンなぁという意識が働いて、道路から芝生内には踏み入る事なく、外から見学し、「私」の記念写真だけを撮影しつつも、当然ながら息子は、俺のはいらん、そんなん撮れへんわ。と突っ張る訳で、そんなこんなの観光的喜び表現だけは楽しみながら、立ち去ろうとすると、偶然にも住人の若い男性が、ガレージに何かを取りに出て来られて、それで、目と目が合い、挨拶を交わし、どこから来たのか聞かれて、日本だと応えると、内部を案内してあげるというのだった・・・。もちろん、アメリカ本土に初上陸しているという「私」は、いつもより、喜びの表現が大げさになっている、そのちょっと滑稽な姿も想像して欲しいとおもう。
それよりも、その内部の見事なスケール感とディテールと共に住人の方が2階の浴槽のギミックを嬉しそうに説明してくれる姿があって、カーンが生活を楽しもうとするタイプのひとだという、あらためての発見があり、このインターネット上のブログで、そんなのを写真と共にシエアーしたいという気持ちがメチャクチャにあるものの、でもやはり、住人の承諾がいるよねぇ・・・という良心のようなものが、そんな気持ち以上に沸々と大きく湧いてくる訳で、いやそれは、どこの馬の骨か解らぬ唐突な日本人観光客をわざわざ家の中に招き入れてくれた住人への多大なる「感謝」の気持ちが、そんな良心となって発露しているのだとおもう・・・。
歩いて2分ほどのところにロバート・ヴェンチューリの母の家があり、ヴェンチューリとカーンのエピソードを紹介してくれたりもし、アメリカ風の感謝と日本のお辞儀で多謝の気持ちを表現してエシェリック邸を後にした。住宅巡礼最後の場所も「グーグルマップ」の恩恵に預かって、特定したカーンのフィシャー邸まで30分ほどのドライブをし、住宅地に可愛らしく佇むほんとうにエエ感じのフィシャー邸を発見し、それなりの感動と共に、道路から外観を眺めるのだが、もはや、エシェリック邸の内部を見たことで、超満腹状態なメンタリティーのために、そうそうに切り上げて、NYへ戻るべくドライブするのだった・・・。あっ、有名建築の住人にとっては、「グーグルマップ」はちょっと迷惑かもね。
そうそう、今日の住宅相談会の3組目の午後3時からのCさんは、お正月明けのお餅つきに、偶然通りかかって、参加してくれた、オーストラリア人の男性と日本人の女性のご夫妻で、ハーフの可愛らしい女の子を連れだってお越しになった。なんでも、柏原や国分や三郷や王寺のあたりにある小さな古民家を手に入れて、住みたいのだという。永住権とかローンとかさまざまな問題があるものの、ご希望の地域は、「私」がちょくちょく自転車でサンデーモーニングライドをする場所で、柏原の青谷あたりの「集落の光景」を眺めながら下りたいが故に、葡萄坂をハァハァいいながら登ったりする訳で、IPADの「グーグルマップ」で、そんな話を交えながら、地図を眺めつつ、外国のひとの、日本的ライフスタイルへの憧れを共有すべく、模索するのだった・・・。
投稿者 木村貴一 : 2014年09月07日 23:59 « 津軽と「スーパームーン」とNYの休日5 | メイン | 流しソーメンと「カウンター」とNYの休日3 »