2007年12月02日

手加工で行こう!

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チョンナ始めという儀式があって、それは、これから木を刻み始めるための最初の儀式の事だ。木を刻むためだけに、 儀式を執り行うというのは、考えてみれば、不思議な事だと思う。きっと、古来の人々は「木」 とうものに対する畏敬の念のようなものを抱いていたのだろう。「木」を生き物として、いやぁ、ひょっとして、 神が宿るものとして認識していたのかもしれない。

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月曜日の朝、清見原神社の改築に伴い、 うちの加工場で、その儀式は執り行われた。ネットで調べると、チョンナとはチョウナとも呼ばれ、手斧とか釿という漢字を使うらしい。 皮がついた丸太を削るために使う、柄がぐにゃっとひん曲がった先に鉄の刃がついている道具の事だ。

儀式の後、本格的にチョンナを使って丸太をはつる作業が始まった。そうそう、ベレー帽を愛用する沖棟梁が、 若い大工と一緒に横並びに並んで、お互いのリズムを合わせながら「チョンナは削るのではない、はつるのやぁ、削ろうとしたらアカン。打て」 と教えていた。

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午前中、私用があって休んでいた大工のS木くんが、昼からやってきて、その様子を見て、むずむずし出し、ジーパンで、 飛び入り参加して、指導を受けた。恥ずかしながら、私もチャレンジしたのだ・・・・・・。それぐらい、興味のそそる光景であり、何よりも、 チョンナで丸太を打つ時の音とリズムが素敵だった。それは素晴らしい「演奏」だったのだ。

そんな話を弊社の会長でもある父にすると、「それは、ゴルフのアイアンと同じやなぁ。サンドウエッジみたいのもんや。 上げにいったらアカン。打ち込まなアカンのと一緒やな、打ち込んだら上に上がるのや。」 おぉぉ、そんな例えになるかぁ・・・・・。

確かに、チョンナは木に刃が立たないように、 刃が「ねる」ような角度で柄が付いていた。「打つ」事によって、刃が滑って、 木を綺麗に削れるような不思議な形の道具として作られているのだ。

そういえば、散髪屋さんで髭を剃ってもらうと、上手な人は刃が「ねて」いるのだけれど、ヘタな人は刃が立って、皮膚が削れて、 痛くて仕方がない。まぁ、様々なところに、共通項を見いだせるものだなぁ・・・・。

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「森林」で育てられた「木」が、製材所の人や大工の手によって、「木から木材」に変貌していく。その「木材」 が仕口の加工という大工の技によって「木材が木組み」にまで進化し、やがて住宅として完成される。そして、また、山に木が植えられる・・・・ ・・。

木組みというものに存在する、そういう地球的な規模の循環が、格好いいなぁ・・・と思う。日本的な何かを感じる。そして、 何だかその背後には「森の思想」 というものも見え隠れしているのかもしれない・・・・・。

ベレー帽の沖語録によると、「今という時代、チョンナで、こうして削らしてもらえるのは、大変贅沢な事やわな。有り難いことや。 電気の機械で、バァーっと削ったらおしまいやけど、やっぱり、日本文化も守っていきたいからな。」

 

 

6月の建築基準法の法改正によって、確認申請が大幅に遅れだした。弊社でも2件の木造3階建ての住宅の着工が大きく遅れた。 世の中全体に住宅の着工数が激減しているらしい。ひとつの大きなギャップだな。

弊社では、ここ10年ほど、木造はプレカット(機会工場加工)を中心に仕事をしてきた。そんな風に大工の段取りが回っていた。そこに、 このギャップだ。大工の流れも変わる。この機会を利用して、プレカット工場に「機械」に費用を費やすより、手加工する事によて、大工さんに 「人」に費用を費やそうと思う。

プレカットに比べると手加工の費用は坪当たりおよそ1万円ほど高くなるのだけれど、企業努力と大工さんの努力で、 なるべくその差を少なくしたいとおもう。幸いにも、うちの若い大工さんは、手加工をしたくて、うずうずしているようだ・・・・。

それに、ひょっとすれば、プレカット加工より手加工の方が、圧倒的にCO2の排出量が少ないのかもしれない・・・。 地球温暖化防止に貢献している事になるのかも・・・・。それに、手加工が、 日本文化を守り育てていくことに貢献している事にもなるのかもしれない・・・・。ついでに、 そういうふうにして持続可能な企業として納税していくことが、年金問題等、間接的な貢献になるのかもしれない・・・・。 家を建てる費用が間接的に様々な貢献を果たせば良いのだが・・・。

と、ちょっと大上段に構えすぎてしまったのだけれど、まぁ、これからは、出来るかぎり、手加工をしていこうとおもう。 くだんの二件の木造3階建ても、化粧の木組みが見えるわけでもなく、プレカットで十分で、その方が費用も安くすむのだけれど、ここは、 敢えて、手加工で行こう!

投稿者 木村貴一 : 2007年12月02日 22:49 « 樹 | メイン | ちょこっと京都、ちょこっと奈良 »


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