2004年10月19日

もの思う秋

秋がやってきた。そんな気配があちこちで感じられるようになってきた。先週の連休、さわやかな秋晴れの空。肌触りの良い気候。 本棚を見ると買ったままで読んでいない本が10冊以上もたまっていた。それに、知り合いからうちの本棚に迷い込んできた本も数冊。 気候のせいだろうか、本でも読んでみようかという気持ちになった。 

迷い込んで入ってきた本に浅田次郎「月のしずく」という文庫本があった。何となく手にとって読み始めた。そんなたぐいの本がたまにある。  武田泰淳の「森と湖のまつり」「ひかりごけ」など友人が置いていった本を何気なく読み出したらもう夢中になって読んでしまった。 北海道をキャンプ旅行する時などは、その前にまた読んでから旅したものだった。月のしずくを一気に読んだ。 高3の長男とその本のことを話すと、僕なんか同じ作家の「壬生義士伝」を読んで泣いたヮァと言った。あぁぁぁ、既に私より先輩だったのだ。  

そうこうしているうちに、次男が大きな組み立て式の模型飛行機(グライダー)を持ってきた。組み立てて一緒に飛ばしに行こうと言う。 何でもコストコというアメリカのスーパーが尼崎に出来て、そこで買ってきたらしい。天井が高くて倉庫みたいなスーパーで・・・ と説明してくれた。1mほども長さのある主翼がついたカーボンロッドの胴体とプラスチック出来た、見るからに、かっこいいやつだった。  

それには伏線があった。2ヶ月ほど前に日本橋に行った時、学研楽しく学ぶ科学体験シリーズ「夢中になれる飛行機飛ぶ力」「夢中になれるコマ」 というのを購入した。コマは次男と一緒に作って楽しんだのだが、飛行機は1ヶ月以上も箱のままだった。そう、いっしょに遊ぼうぜ! というアピールだったのだろう・・・・。まず、アメリカ製の模型飛行機を組み立てた。組み込むだけで簡単に造れた。確かに、かっこいい。 近くの駐車場で軽く飛ばしてみた。家の中では到底、飛ばせそうにもない大きさだった。やっぱりアメリカ的なんだ。 次にA4ほどの箱に入った日本製の紙飛行機のセット組み立てた。切ったり、折ったり、貼ったり、ホッチキスで止めたりと・・・ 確かにめんどくさいが、まぁ、しかし、それはそれで面白い。「のりしろ」なんていうものがあって・・・・。そうそう、「のりしろ」 にのりをつけながら天声人語に書いてあった文を思い出した。そこにはこんなことが書かれてあった。 

------------------------------天声人語より引用------------------------ 
アニメーション監督の宮崎駿さんが、子ども時代を思い出してこう語ったことがある。「のりしろをとって画用紙を貼(は) り合わせると立体ができると知ったときには、世界の秘密にふれたような気がしました。本当にドキドキしましたよ」。  

 平らな紙からお城などいろいろな建物をつくる。のりしろをどこにどう取るかが大事だ。失敗しながら立体づくりに挑戦した。 平板に見えがちな世の中を奥行きのある世界に変貌(へんぼう)させる宮崎アニメの原点かもしれない。 

 子どもの創造力をかきたてる「のりしろ」と違って、・・・・・・・・・・ 

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なんて事を思い出したりしながら、紙飛行機を作った。 

花博の跡地にある鶴見緑地公園に飛行機を飛ばしに行った。アメリカ製の大きな飛行機を持って歩いていると、子供達が、あっ飛行機やぁ。 とか何とか言って、注目してくれた。芝生の広場で飛ばした。不安げな一投目から、ものの見事に滑空した。 25mプールの端と端ぐらいに離れて、まるでキャッチボールのように飛行機を投げては受け取り、そしてまた投げ返した。ところが、 そろそろどこかの高いところから飛ばしてみようかなぁ・・・・なんて考えて、勢いよく投げた数投目に、頭からゴツンと墜落した。よく見ると、 胴体のカーボンロッドが真っ二つに折れていた。折れ口にあの繊維質の破断面が見えていた。次男はしょげかえった。「あぁぁ。 お父さんのせいやぁ・・・ 」なんて言われてしまった。「人のせいにするもんやないでぇ。」と偉そうにたしなめながらも、 こちらもがっくりきて、それなりに申し訳なく思った。科学素材は案外もろいのだ。 

それで、どちらかと言えば、仕方なく、何種類か作った紙飛行機を飛ばすことにした。大きさは20cm程度、簡単に投げてみると、 5mほど滑空して落ちた。なぁ~んだ。という子供の声がしたのは気のせいだったのだろうか。ところが、 その紙飛行機には付属でゴムパチンコのような発射装置が付いていた。ゴムに飛行機を引っかけて、ぐい~~と引っ張り、ぱーんと、飛ばした。 予想をはるかにはるかに越えて、小さな紙飛行機はびゅーんと秋空に向かって飛び出し、優雅に滑空しながらおりてきた。 滞空時間も30秒以上はあった。子供は仰天して、はしゃいだ。俺にそのゴムと飛行機を貸せと、偉そうに奪い取った。 それからは大人げなく子供と順番争いをした。紙飛行機はしなやかだった。何回もの使用に耐えた。 その都度微妙に主翼や尾翼の角度を調整しながらも、気持ちよく飛んだ。一度など、飛びすぎて高い木にひっかかった。 あ~ぁまた父さんやったなぁ~。取ってこいよなぁ。と偉そうにぬかす・・・。 飛べなくなったアメリカ製の飛行機の1mほどある主翼を棒の代わりにして、 大きな木にひっかかった紙飛行機をジャンプしながら突き上げて落とした。何とか父としてのメンツは保つ・・・・。結果的にはそれが、 最も良く飛んだフライトだった。それ以降はじり貧に飛ばなくなり、ついには発射装置のゴムが切れてしまった。 

帰りの車の中での私の脳は日本的なものとアメリカ的なものという思考が巡り巡っていた。家に帰って、 まだ読んでいない本棚を眺めると磯崎新の『建築における「日本的なもの」』という本があった。 そういえば鶴見緑地公園内には磯崎さんが設計した建物があったのだなぁ。それに先日、新聞に中国で発見された遣唐使の碑文だったか何かに 「日本」という最古の記述が見つかったという記事があった。それにも何となく興味がひかれていた。 そんなこんなが繋がってその本を読むことにした。
あー もの思う秋・・・・・・。 

投稿者 木村貴一 : 2004年10月19日 20:43 « 小さなスペースの魔力 | メイン | 運動会 »


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