2016年07月17日

不安と躊躇

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外に出て立っているだけで、汗がしたたる昼下がり。真っ青な空と蔵の白い漆喰壁。その一部が剥がれ落ちていて、その修復を見積るために、左官山本組のヤマモトさんと現場監督のオオムラくんとで、東高野街道沿いの住宅にお伺いする。3人ともタオルで汗を拭きながら蔵と空を見上て、クラクラしていた。

「ハナオカ、ウメバチ、ボウシックイ、オガミ」そんな左官の専門用語をヤマモトさんが連発しながら、屋根のケラバまわりの修復方法をあれこれと語ってくれるのを、汗を拭きながら聞くのだけれど、なるほど、そうなん,,,あの部分をそう呼ぶの....。なんて、相槌をうちながらも、まだまだ知らない事はいっぱいあるわけで、特に伝統的な日本建築の大工や左官の工法になると、年配の職人さんの力に頼るしかなく、効率とコストダウンが最優先される、いまという時代にとっては、古き良きモノの保存と技術の伝承とコストという悩ましい問題がいつもいつもついてまわる。

会社に帰ってから、グーグルのストリートビューで、この街道をネット散歩してみると、この蔵が、この街道とまちの景観に良い印象を与える存在だと気付くのだけれど、ところが、所有者にとっては、その蔵の存在とその維持管理費とその活用方法が悩ましいわけで、次の世代に負担にならないためには、解体した方が良いのでは...と考えて、あれやこれやの不安と躊躇で悩むのが、フツウのコトだとおもう。

最近、生野区の空き家プロジェクトに関わっていて、生野区在住の指揮者のハシヅメくん一家の生野区空き家移住計画をモデルケースとしながら、さまざまな問題点を浮き彫りにしていこうというプロジェクトで、生野区には20%以上あるといわれる「空き家」という存在をどのようにすればエエのかというコトなのだが、意外とリフォームの手法はいろいろあり、確かに、コストパフォーマンスの問題が、大きく立ちはだかるのだけれど、それ以上に、空き家の所有者側のかかえる悩みや躊躇の問題の方が大きいのだと気付かされる。

20%以上もあるといわれる空き家のうち、いわゆる不動産情報にあがっている物件は、ほんのわずかで、所有者の抱えるリフォーム費用や相続問題や借り手の事などなど不安と躊躇が、空き家問題の本質のようにおもわれてきて、不安と躊躇を抱える所有者の空き家ゆえに、オープンな情報として公開されることにも不安があり、それゆえに、住みたいひとたちとのマッチングも起こりにくい状況だといえる。

往々にして、空き家をリフォームして住みたい人たちは、「まち」に興味があり、その「まち」の「界隈」を形成する住民になって、暮らしを楽しみたいという、面白いひとたちが、潜在的にいるような気配が、空き家プロジェクトを通じて感じるわけで、ところが、所有者が直面する躊躇と不安をどのように払拭できるかが、「まち」の抱える問題点で、その不安を「表面化」する作業そのものが空き家プロジェクトなのだろう....。

投稿者 木村貴一 : 2016年07月17日 00:18 « セッション | メイン | 変化 »


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