2010年12月05日
カオスの縁
放射冷却現象だったのか、朝は、車に、霜がついていたが、昼前の、大阪は、じつに、穏やかで、エエ天気。秋晴れとよぶには、もう既に12月になっているのだけれど、セーターを着て、デッキで、このブログを書ける気候で、本当に、師走なのかとおもう。
そういえば、数日前、銀行の支店長が、本部のお偉いさんを連れて、年末の挨拶にお見えになり、暫しの歓談をして、帰られると、そうそう、年賀状やお歳暮やカレンダー配りの最後の詰めをしなければ・・・と、無理矢理、心を年末モードに引き込んだ。
今週は、大阪の大学院生が、「リフォーム」を題材にした修士論文を書くために、聞き取り調査にやってきて、あれやこれやと、答えたり、会話をしているうちに、こちらも、改めて、考えさせられるところがいろいろあって、気が付けば、2時間ほど経過していた。
「リフォーム」というコトバから連想するイメージが、それぞれ多種多様であり、持ち家をリフォームして住み続けるとか、中古住宅を購入してリフォームするとか。というような大きな分類に留まらず、マンションや一戸建てや長屋などによる分類や、水回りだけを交換するリフォームや、収納の改善、壁をぶち抜いて部屋を広げたり、増築したり、減築したり、屋根葺き変えたり、壁塗り変えたり、それに、耐震補強や、窓をペア-硝子にしたり、断熱材を入れたりという温熱環境を改善するというリフォームも増えてきて、まさしく、多種多様百花繚乱な状況。で、おもわず、居心地の良い居場所をつくる事など、忘れてしまいそう・・・・。
未だに、天井から明かりが照らされてない、暗い部屋のような、「リフォーム」と呼ばれる領域を、手持ちのライトで、部分部分を照らして、リフォームというコトバひとくくりだけで、論じあっているような状況下なのだろう。それぞれにとって、リフォームというコトバで、イメージしているものが、かなり違うのかもしれない。確かに、こんな状況では、施主のニーズと、設計や施工をする業者側の提案やサービスが、乖離してしまうのも、致し方のない事なのだろう。
全く、実社会での経験がない学生と、特に、このリフォームと言われる、複雑系な分野について、歓談出来たのは、エエ経験であったのだけれど、それには、尋ねて来た学生の礼儀正しい態度や、人の話の聞き方や、自分の意見の述べ方など、好感の持てる態度が影響したのだとおもう。その背景には、昨今のリクルートのための、面接やプレゼンテーションの仕方を学習している事が、あるのかもしれない・・・。それにしても、リフォームとは何かを学生に説明するのは、意外とムツカシイ事なのだ。と気付く。
そう言えば、11月に入った水曜日の午後、2週間連続で、大阪の建築学科の学生による「工務店とは?」という、工務店見学の訪問があり、うちの会社の中を見学してもらった。ついでに、大工のベッショくんに、刃物の研ぎ方や、カンナがけを実演してもらい、実際に、学生にもカンナ削りの体験をしてもらった。また、数人の社員が参加して、工務店での自分の仕事と経歴を紹介する、トークイベントをした。
昨年も同じような事をしたのだけれど、2年間やってみて、感じることは、案外、学生の態度に好感が持てることと、女子がしっかりしていて、男子が角に追いやられているような感じで、これからの建築業界は、女子が背負って立つ時代になるのかもしれない。と思えるほど、積極的。男子も頑張って欲しいねぇ・・・・。
それよりも、「工務店」がやっている仕事の内容を説明する事は、ムツカシイな。という事が、一番なのかもしれない。それは、つまるところ、何よりも、私も含めた社員それぞれが、真剣に、工務店とは何か?と、考えなアカンね。と言うことになるのだろうし、そんなのは、日々の精進の中からしか、うまれないよねぇ・・・。という事に行き着くのかもしれない。
複雑系という考え方の中に、「カオスの縁」というのがあって、物事に新たな秩序が生まれたり、新たな生命が誕生したりするのは、「カオス」の「縁」であるらしい。海と陸との間の海岸とよばれる場所とか、個体と液体の中間領域とか、ひょっとして、「縁側」なんて言われるものも、外と内の曖昧な中間領域で、新たなコミュニケーションや寛ぎをうむための、カオスの縁とよんでも良いのかもしれない・・・。
社会に出る前の学生と、うちの会社で接する事が、カオスの縁のような状況下になって、工務店とは?とか、リフォームとは?という考え方に、新たな秩序や整理をもたらすのだろうか・・・・。そういえば、このブログも、うちの家、別名、木村家本舗の、内と外が曖昧な、庇のかかった、縁側のようなデッキスペースで、書く事が、ほとんどで、今や、この場所でないと、書けないくらい・・・。
これからは、うちのこのスペースを「カオスの縁側」とでもよぶかね。
投稿者 木村貴一 : 2010年12月05日 21:41 « 音の宴と職人集団の宴 | メイン | 残像 »