2012年09月30日
台風と椅子
大型台風17号が近畿地方に接近してくるのが午後3時頃だという。丁度その時間は「ケンチク椅子のすすめ」というワークショップを催している真っ最中なわけで、今回のワークショップはどうなるのだろうかと不安を感じていたのが前日の夜の事だった。
このケンチク椅子というのは、建築家の矢部達也さんがデザインした椅子で。3つのないと5つのこだわりというルールのもとで製作された椅子。3つのないは、曲線がない、斜めがない、仕口がない。5つのこだわりは、単一の素材にこだわる。面一の納まりにこだわる。小口の勝ち負けにこだわる。寸法にこだわる(厚み24の合板の倍数)。仕上げにこだわる(ペーパーでこすらない。角はでたまま)
誰でもが作れそうな椅子なのだけれど、そのための材料を必要な寸法に切る作業は、前日にベッショ大工とフクダ大工の二人が中心になりながら作業を続け、仕事を終えて帰ってきた大工や現場監督が作業を手伝いながら丸一日をかけて材料を段取りし終えて、それから参加者それぞれの作業場所を区分けする作業を会社に戻ってきた社員と一緒に遅くまでかかって設置した。そんなバタバタした前日と台風接近のニュースの絡みあい。
今朝、早朝、目が覚めると、曇り空で、まだ雨が降っていない。もう暫くは雨が降りそうな気配がなかった。それで、先週も雨だったし、来週と再来週は木村家本舗というオープンホームのイベントがあって、ランニングが出来そうにもないので、きっと嵐の前の静けさなのだと思いながら、ランニングをすることにした・・・。
こんな台風が迫るワークショップ当日の朝。予報通り、お昼に近づくに連れてどんどん雨が激しく降り出してきて、加工場の戦前の木造トラスと30年前のALC3階建ての接続部分から、漏水するというハプニングもあり、それにワークショップはどうなるのですか、という2、3の問い合わせもあったりして、まぁそれでもとにかく決行することにした。外は激しい風雨、中はものづくりの熱気。という独特の雰囲気でのワークショップだった。
そんな外の台風の事など全く気にとめる気配もない大工さんたちは、はじめてワークショップのスタッフとして参加したのだけれど、参加者の方々が楽しんでいる姿に、まさしく乗せられて、ひとのために教える喜びを何となく肌で感じながら、あれやこれやとサポートしている様子だった。そうそう、なによりも、参加者全員の椅子が無事に完成した事が、スタッフ全員の大きな喜びだったとおもう・・・。
自分で作った椅子に座ってもらいながら記念写真の撮影を試みる。それぞれの笑顔には、自分で椅子を作って完成したという達成感と共に、その椅子に座って、くつろぐ喜びの表情があって、それが椅子のもつ根源的な力だとおもうのだけれど、きっと今回はそれだけではなく、加工場に響く台風の激しい雨音を乗り越えて完成したという付加価値が表情に付加されているとおもうのだ・・・。
追伸:あとで写真をみると、写真撮影を忘れたひともいたようなので、この場にて陳謝。
投稿者 木村貴一 : 2012年09月30日 23:59 « 「ひと」と「できごと」 | メイン | 暮らしを楽しむコト。 »