2014年11月02日
イン・ザ・スカイ
たまに雨が降って欲しい日曜日があって、天気が良すぎると、家で本や音楽を聴いていると、なんか、とってももったいなく思えてきて、それで無性に外に出たくなったりするので、今日のような曇りのような小雨のような曖昧な天気の日は、早朝、ランニングも自転車も乗ることなく、ゆっくりと寝て、朝風呂にでも入って、本を読むかCDでも聴いてみたい気分になる・・・。
ここ5年ほど関西大学建築学科の3回生の後期授業の木造設計製図を週1回サポートしていて、江川教授のもと、最初の2年は建築家の三澤文子さんと一緒に授業をしていたが、この3年は建築家の米谷良章さんと江川教授の3人で木造の設計製図を教えている。学生と接するのはそれなりに新鮮でもあり、こちらが学ぶ事も多々あって、数年経験してみると、プランニングやデザインは他の先生にお任せするとして、工務店のシャチョウという立ち位置を鑑みると、2、3人で、計画し、成果物として提出する図面を完成させる事そのものをひとつの「ものづくり」として捉えて、木組みという現実的な可能性と不可能性のルールをしっかりと考慮させながら、如何にお互いがコミュニケーションをし、合意形成をするのか、そのためのスケジュール調整まで含めて、そんなのをサポートしているようなもので、私自身は、建築の勉強もさるものながら、ドラッカー著のマネジメントを学んでいるような気分にもなって、「真摯さを絶対視して初めてまともな組織といえる」「いかに知識があり、聡明であって上手に仕事をこなしても、真摯さにかけていては組織を破壊する」なんていうコトバがあり、学生同士、学生と先生が、「真摯」な態度というものを学びながら木造の設計を学ぶ大切さに気付かされたりするのだった。
今週の木曜日の夜には「生野区ものづくり交流会」というミーティングが木村工務店の加工場であって「まちのえんがわ」の縁で、生野区の役所の方々と定期的に話し合う機会があり、うちの「ものづくりの仲間たち」をヒントにした「生野区ものづくり百景」というのが誕生して、それで、その生野区のものづくりの仲間たちどうしで交流をはかろうという第一回目のミーティングだった。
ちなみに、生野区の小さなものづくりの歴史は古く、世界的なオンリーワンの企業も数々あって、多くは、職住一体型で、長屋の一部を土間にして機械を置いて作業をするようなところからスタートし、商売がうまくいくと、生野区からみて鬼門でない東大阪などの田んぼや畑の空いている土地に工場を建てたりするわけで、もっと商売がうまく行くと、大阪市内から見て鬼門でないエエ方角で、山も川も海もある西宮や芦屋に自宅を建てたりするというのが、成功パターンの典型なんだろう。実は、生野区というのは、小さなものづくりのパワースポットでもあるとおもうのだ。
その生野区ものづくり百景ミーティングで、大阪市大の中小企業を研究されてる教授が参加されていて、このようなミーティングは、目標や目的をきっちりと決めないのが良さそうで大切だとおもうのです・・・と仰った。確かに、それは縁側的なコミュニケーション手法で、大したテーマも目標もなく曖昧なコミュニケーションを何となく繰り返しながら継続していく事で、何かの可能性を見いだそうとしているのかもしれない・・・。
そういえば、学生との授業は、はっきりとした目標を設定して「成果」を上げる必要性があって、そのためのコミュニケーションには「真摯な態度」という質が必要なんだと云われているのだけれど、縁側的コミュニケーションには「オープンハートな態度」という質が必要かも・・・と、「まちのえんがわ」を運営しながら気付かされたりするのだった。
そうそう、大学への電車での往復で、iphoneにイヤホンを繋いで音楽を聴く機会が出来て、ちなみにイヤホンはUltimateEarsTRIPLE.Fi10を未だに使っていて、そろそろSHURE SE846など良さそうにおもうのだが・・・。ま、それはさておき、iphoneの容量の問題があって、曲はマイルスしか入れておらず、それでその何曲かを聴いているうちに、いつか、かためて体系的に家でゆっくりと聴きたいという衝動がうまれてきて、そんなのが今日の日曜日のどんよりとした天気とともに結びついたのだとおもう。
朝から、E.S.P. (1965) → マイルス・スマイルズ Miles Smiles (1966) → ソーサラー - Sorcerer (1967) → ネフェルティティ - Nefertiti (1967) → マイルス・イン・ザ・スカイ - Miles in the Sky (1968) → キリマンジャロの娘 - Filles De Kilimanjaro (1968) と製作の順番に聴いていく。これらのアルバムの前の時期がマイ・ファニー・ヴァレンタイン - My Funny Valentine (1964)や フォア&モア - Four & More (1964)という激しくブローイングするアコースティックな演奏の時期で、愛聴版でもあるのだけれど、それが、イン・ア・サイレント・ウェイ - In a Silent Way (1969) や ビッチェズ・ブリュー - Bitches Brew (1969)というエレクトリックなマイルスが誕生するに至るわけで、その過程を記録したような、「変化」していくサウンドの時期が、これら写真のアルバムの時期なんだろうが、なんかもの凄い「ものづくり」感があって、好き嫌い以上に、「ものづくりの参考書」のようにして聴いていて、こんなふうに「今までにないもの」を創造できたらエエなぁ・・・カッコエエなぁ・・・と憧れるわけで、きっと、音楽を聴きながら「ものづくり」のエネルギーを享受しているのだろうね・・・。
投稿者 木村貴一 : 2014年11月02日 23:59 « 木を組みたてるという「ものづくり」の共有体験がもたらす何か | メイン | 奥方と木村家本舗とティファニーとNYの休日9 »