2007年06月10日
慰安旅行
会社の研修旅行があって、まぁ、慰安旅行と呼んだほうがふさわしいのだけれど、 社員と大工さんと手伝いさんと協力業者さんの55名ほどが、バス1台にギュウギュウ詰めになりながら、金沢の21世紀美術館と東茶屋町、 庄川温泉、白川郷、飛騨高山の吉島家、オークヴィレッジと1泊2日の旅をした。
最初に訪れた21世紀美術館は噂通りに素敵な美術館だった。もう既に、
かなりのアルコール度数に達している人が若干名いて、入館するのにアルコールチェックがなかったのは幸いしたものの、
レクチャールームで、館内の案内をしていただいた、館内員さんと一緒に、作品をガードして回るのに気を使う始末だった。
それにしても、
ジョークを飛ばしながら現代美術を笑顔で見て回る酔っぱらいの姿を一緒になって笑いながら受け入れてくれた館内員さんどうもありがとうございました。
そんなところにも、開かれた美術館としての熱意が宿っているのかもしれななぁ・・・・。
ちなみに、先日訪れた地中美術館でのジェームズタレルのオープンスカイフィールドは有料だったのに、ここ、21世紀美術館では、 それが、無料の展示スペースで見ることが出来た。おっちゃんやおばちゃんや中学生がそのスペースで、くつろいでいる姿が、 とても印象的だった。羨ましいなぁ。
キムスコ(木虫籠)と呼ばれる格子があると知ったのは、 金沢市内の東茶屋町を見て回ることになってからだ。外から中は見えにくく、 内から外は見えやすくするために格子を台形に作っているという。インターネットで左のような図を見つけた。 外が大きく内が小さい台形だった。
バスの中でその資料を配ると、「外から見ても中から見ても隙間は同じやから、どちらから見てもそんなに見え方が変われヘンと思うワー」
と誰かが呟く。「隙間は同じだけれど、内の方が格子の隙間が広がっているから、外からの光が内部で、
より多く拡散されて広がって入ってくるので、内から外を見たほうがよく見えるのとチャウ」と。う~ん、なるほど。
その日の宿泊地、庄川沿いにある庄川温泉の部屋の窓から外を眺めると、ここは、 町の中にポツンとある温泉だと知った。宴会の醜態をお届けできないのは、残念だけれど、ほとんどお酒を飲まない、うちのヤングダイクス3人組は、 バスの中でも宿の中でも任天堂のDSで、対戦ゲームに興じている様子は、「大工も変わったのおぅ・・・」と、 その3人を教えた酒飲みの棟梁が呟きそうな、そんな姿だった。
翌日、白川郷にある合掌造りの和田家に行き、内部を案内してもらう。 焔硝と呼ばれる火薬造りが、養蚕とともに大切な産業であったと聞かされると、どうして、 こんな山の中にこんな大きな集落が存続したのか、 妙に合点がいった。
1階と三角形の小屋組が見える2階の床の間に中2階があって、物置になっていた。設計のTくんが、職業柄、
携えているメジャーで寸法をあたると、約1400mmだった。「おー、ハウスメーカーの蔵の家と同じやん」と呟いたのが、印象的だったなぁ。
意外と、こんな小屋に興味が奪われてしまった・・・・・・。
山道をバスに揺られて、高山の町に到着し、お昼ご飯をバイキングで食べた後、 町中を歩いて吉島家に行く。私は15年以上前に一度訪れた事があるのだが、それ以来だった。相変わらず、美しい木組みが、 南向きのハイサイドの光で、輝いていた。
館長の吉島さん自ら、説明をしていただいた。(どうも、ありがとうございました。)「数年間、
役所に貸していたことがあって、暫くすると、黒光りしてい た、縁側の床板の艶が消えた。どうも洗剤で拭いたのが、原因らしい・
・ ・ ・」という語りが、心に残った。無垢の床板は、やっぱり水拭きが一番のようだなぁ・・・・・・。
時間がおして、オークヴィレッジには20分そこそこしか、滞在できなかった。もちょっと、ゆっくりしたかったなぁというのが、 皆の意見だった。同感。慌ただしい中でも、お店の方には丁寧に説明をしていただいた。家具を見て、「木」もいいが、家具に塗られた 「透明の漆」がいいなぁ・・・・・・と。
会社に帰って、吉島さんから頂戴した、実に、建築的な冊子を眺めた。あれぇ、これ、昔、新建築の住宅特集で見た住宅だ。
この設計者の吉島さんが、吉島家の館長の吉島さんと同一人物・・・。まだ、学生だったけれど、印象に残った建築のひとつだった。
1982年のその雑誌には、「・・・・ つまるところ、今日風に変質させ、大胆に処理することの中で、いわばモダン民家といおうか、 ドメスティックにトラディショナルに現代を表現してみたかったわけで、・・・・・・・」と書かれてあり、それが、 どういう事に挑戦した建物だったのか、今なら少しは理解出来る年と経験を積んだのかなぁ・・・・と、当時の自分の姿とともに振り返ってみた。 最近の工務店や設計者が造る木づくりの家の原型のようでもあるか・・・・・?と考えながら、 あのような家で育った土壌があってこそ生まれたモダン民家かなぁ・・・・・・と、自問した。
投稿者 木村貴一 : 2007年06月10日 13:41 « レッカー | メイン | 受賞式 »