2016年08月07日

旅的

「尾道空き家再生プロジェクト」を生野区のメンバー5人と車の日帰りで見学に行くことになって、予約が取れたのが午後2時で、それで、それまでの時間をどうするかを相談して、朝6時、「まちのえんがわ」を出発し、鞆の浦(とものうら)に向かうことになった。なんとなく、機会があれば、行ってみたい町だったが、どうしても行きたい訳でもなく、ま、それぐらいの関心度が「旅的」として、丁度良いわけで、前の夜にインターネットで調べて、Evernote にスクラップした程度の期待度で、午前9時過ぎに鞆の浦に到着した。

朝食がてら、宮崎駿がお気に入りだというパン屋さんに行くことにして、市営駐車場から歩き出すと、鞆の浦のランドマークの常夜灯が小さな漁港越しに集落とともに見えて、港町ののどかな光景と、海と港と集落とのごく近しい関係性と、何となく醸し出される時間感覚に、いきなりすぅーっと引き込まれて、これからどんどん暑くなりそうな真夏の太陽の光に照らされながら、誰もが、ちょっとしたハッピーな気持ちに包まれた。

まちで出会ったひとの話によると、道端で女子高生に語りかける地元のおっちゃんから漏れ聞こえる語りや、喫茶店のママや、食堂のおばちゃんなどの話なんだけれど、スタジオジブリの社員旅行で、鞆の浦に宿泊した宮崎駿が、まちを気に入って、連泊し、その後、別荘を借りて3ヶ月ほど宿泊して、崖の上のポニョの構想を練ったとの事で、宮崎さん、この店の前の道を毎日ひとりで歩きよったんよ。と食堂のおばちゃんはちょっと自慢げに話をし、もはや歴史的スターの坂本龍馬より、宮崎駿のほうが圧倒的なまちのスターで、崖の上のポニョのモデルはどこか明らかにされていないけど、アニメのあるシーンを鞆のひとが見たら、これ、鞆の光景やと誰でもわかるけん。と嬉しそうに語る。

常夜灯で記念撮影して、村上製パンまで、とことこ歩いて、あんパンとかメロンパンとか揚げパンとか買って、牛乳飲んで、歩きながらやったり、堤防に座ったりしながら朝食のパンを食べて、また町歩きして、歩くだけで、汗びっしょりになる暑さで、ま、生野区空き家探しのモデルになっているハシヅメくん以外は建築関係者なので、まちを歩いて、建築を見て回るだけで、歓びが込み上げてくる建築好きメンバーで、汗かいても、まち歩きが楽しいのだけれど、それでも流石に、暑すぎて、喫茶店で休憩することにした。

珈琲を飲みながら喫茶店のママに、どこを見学したら良いのかと聞くと、とにかく、眺めがエエ対潮楼をお勧めするのと、民俗資料館から見る港町全体の景色なんかも...と勧めてくれた。ついでに、どこで昼食を食べるのが良いのかと聞くと、鯛飯が有名やけど、水曜日で休みの店が多く、それに地元のひとは鯛を食べんけん。小魚とか刺身とかが有名やから...というので、それどこで食べれられるんですか...と尋ねると、この道行って、左に曲がったところにある「おてび」。芸能人とか地元のひとも行くけん。

そんなこんなで、民俗資料館から景色を眺めて、穏やか海と瀬戸内海の島々と小さな港と長屋の屋根が密集している町屋の光景が視覚の中に収まるワンシーンを見ていると、やっぱり宮崎駿がお気に入りだったときくイタリアの山岳都市のカルカータの町を訪れた時の事を想い出したりし、おてびで小魚の定食を食べながら、火野正平さんは時代劇でも来て、自転車でも来て、プライベートでも寄ってくれて...なんていう飾られた沢山の芸能人の写真を眺めながら、まちの世間話をし、対潮楼での日本的な海と島の景色を見て、癒やされたりもした鞆の浦だった。

尾道までの道中に、今ちょっと話題で人気のベラビスタ尾道というリゾート施設に立ち寄って、リボンチャペルとエレテギアというレストランを見学するのも旅的で、昔からある宿泊施設をリノベーションし、チャペルとレストランとプールを新設したらしく、山でなく、日本的な海をモチーフとした、瀬戸内の穏やかな海のリゾート施設と近くの鞆の浦や尾道の海と近しい歴史的な街並みとの組み合わせに新鮮さがあるのだとおもう。

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午後2時丁度に「尾道空き家再生プロジェクト」の拠点に到着して、専務理事のニッタさんに、あれやこれやと質問し、お話をお聞きし、2軒のリノベーションを案内してもらい、その後ロープウェイで展望台まで登って、その下にある、本格的に大工でリノベーションされたゲストハウスを見学して、それから猫の小道を下った。夕方になったので、お好み焼き屋さんを探して、尾道の商店街を歩くと、生憎の定休日で、ほとんどのお店がお休みで、仕方なくウロウロと彷徨っているうちに、もう一軒の、ワークショップ的にリノベーションされたゲストハウスに辿り着いて、偶然居合わせた、ニッタさんに案内してもらう事になった。ならば、旅的の締めは、夕食にありつくために、この日この時間に空いている、尾道焼きのお好み焼き屋さんを紹介してもらう事で、砂ずりとイカ天とそばが入ったお好み焼きで満腹になり、建築的にも満腹状態の脳内の印象を落ち着かせ定着させるためにも高速道路を飛ばしながら大阪に向かった。

肝心の空き家の話が少ないブログになってしまったが、鞆の浦でも、尾道でも、生野区でも、空き家の問題解決の模索と設計と施工と完成が胎動し始めていて、どうも、持ち主と借り手と設計と施工と不動産屋さんの間に入って、潤滑油になれる、建築的センスとコンテンツのある集団が求められていてるような気がした、旅的尾道空き家ツアーだった。

投稿者 木村貴一 : 2016年08月07日 23:40 « お盆と早朝と東京。 | メイン | 変動と変化と進化 »


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