2015年02月15日
初午の祈り
「初午祭」という木村工務店の伝統行事として催す「祭り事」があって、昨年の暮れに忘年会があり、新年早々に新年会をし、それに最近はお餅つきを1月中過ぎにするようになって、さらに2月のこの時期に、「また飲むのかい!」というコトに、シャチョウという立場を鑑みても、流石に、「躊躇」のような気持ちが湧き上がってくるわけで、それ故に、春過ぎてとか、夏前にとか、秋の日にとか、時期をずらして、職人さんの安全祈願を兼ねた初午祭をするほうが良さそうに思えてきて、そんな迷いのようなものが、そこわかとなく忍び寄ってくるのだった…
そもそも「初午祭」というのは農作物の豊作をを祈って、農作業が始まる前のこの時期に祈願したのが始まりだそうで、奈良時代の初午の日に京都の伏見稲荷大社に稲荷大神が鎮座したらしく、稲荷は稲生る神でもあるわけで、豊作を祈る祭りとなったのだろう。それに2月最初の午の日(初午)は一年のうちで最も運気が高まる日であるという。ならば、農作物を作らない私たちは、豊作を祈るかわりに、沢山のお客さまに恵まれますことをお祈りすることになるのだろうし、今年の初午の日は2月11日で、その近しいこの土曜日に、運気が高まる気配にチューニングし、全国で豊作の祭りをするひとびとのエネルギーとも同調するのが良さそうに思えてきて、会社の3階会議室にお祀りされているお稲荷さんの前に、参加者全員が参列して、清見原神社の宮司さんによる、祝詞奏上によって、初午祭を始めることにするのだった・・・・。
「祭り事」は「政(まつりごと)」でもあるわけで、素直に「初午の政」として捉えるのなら、豊作の田畑のごとく、沢山のお客さんに恵まれる「現場」となるために、シャチョウをはじめ、設計担当者も含めて、現場監督や職人は、現場でどのようにあるべきかを、真摯に見つめ直す「機会」とするのが良さそうで、現場での立ち居振る舞い、これからの目指す住まい、いまとこれからのお客様の傾向を現場で働く職人さんと共有するために、パワポイントで作った資料で、レクチャーをすることを、「初午の政」として4年ほどになる。
そうそう、そのシャチョウの話しが長すぎて、もうこれ以上飲むのを我慢してらへんわ!という職人さんの率直な声もあって、確かに、ビールでも飲みながらリラックスして聴いてもらうほうが良さそうにおもうわけで、それに、ハイブリットな世の中でもあって、日本的なお祭りに、西洋式の何度でも乾杯をするスタイルを取り入れるのも面白そうで、そんなこんなで、レクチャーのために着席した時には、すでに御神酒と缶ビールかお茶を両手に携えている状況で、3階のお稲荷さんに引き続き、1階の加工場で安全祈願を兼ねた祝詞奏上とお祓いの神事をして、宮司さんによる神酒拝戴の儀をすることになって、「いやますます栄えますように」という意味合いらしい、「イヤサカ」と全員で発声して、御神酒での乾杯を1回目の乾杯とするのだった。
そのまま「直会(なおらい)」に入りたいところだが、まずは、木村工務店協力会社でつくる精親会という親睦会の会長をを勤めてもらっている材木屋さんの岡房商店のオカモトさんに挨拶をしてもらい、その次に、シャチョウとしてのワタシの挨拶があって、そのまま引き続いて1時間ほどのレクチャーをするわけで、確かに長いのだ。喉も渇くし、足下も冷えるのだ。それで、簡単な挨拶の後に、すぐに缶ビールを片手に持ち、皆の前で、全員で、一斉に、「ブッシュ」と音をならして缶を開ける事をもって、二回目の乾杯の儀式となった。
40分ほど経過した飲みながらのレクチャーの最後に、参加者ひとりづつの自己紹介とちょっとしたお遊びを兼ねた協力会社の売り上ランキングの発表と表彰を終えると、いよいよ、ようやく「直会」のはじまりで、やはりそれこそ、カンパイがないと、宴会の開始宣言ができないわけで、素早く紙コップを配って、ビールをついで、精親会副会長の横井金物のヨコイさんによる高らかな「カンパイ」の発声によって、3回目の乾杯となった。
そうそう、勿論、宴会の最後の締めは、「カンパイ」ではなく、「バンザイ」三唱か、「一本締め」か、最近では「大阪締め」なんかもするわけで、今回は近隣へのご迷惑を考慮して、弊社トミマス部長による、一本締めを、「よぉー」のかけ声と、全員で一斉に「パン」という手打ちの音を持って、終了の合図をするなんてことは、日本的宴会の王道でもあるよな…。
いや、こんなコト、どうでもエエコトなのだけれど、先日の「夜咄の茶事」では、何度もお茶を飲むおもてなしが、さまざまなスタイルであり、懐石料理では、全員で、箸をお盆に落とす「音」を持って、終了の宣言としたり、杯を酌み交わすスタイルにもいろいろあって、特に「千鳥の杯」などという亭主と客人が千鳥状になりながら杯を酌み交わす粋なスタイルを経験してみると、確かに、どんな順番で、どんなスタイルで、どんな作法で、飲んで食べるか考えて、「おもてなしを遊ぶ」かは、クリエイティブなコトでもあるわけで。
工務店の社員が、「職人」さんたちを、おもてなしするために、初午祭の流れをあれこれと模索しながら、ひとつのスタイルをつくろうと遊ぶなかで、会場の建築的設えを工夫し、おでんや焼き鳥や豚汁やどて焼きなどを自分たちで準備して作り、生ビールをついだり、カクテルをつくったりもして、千鳥足になりつつ、あちらこちらで杯を酌み交わしながら、現場で働く職人さんとの初午祭というコミュニケーションの場を通じて、お施主さんに恵まれますことを一緒に願うわけで、そんな「おもてなしを遊ぶ」コトが、「茶事」という日本の伝統的文化のDNAから、知らず知らずに影響を受けていたことに、気付かされるのだった…。
投稿者 木村貴一 : 2015年02月15日 23:59 « カルチャーショック2 | メイン | カルチャーショック »