2011年11月20日

ヒューマンウエア

「まちの縁がわ」プロジェクトというのが、12月1日オープンに向けて、本や備品や内装や棚やワークショップの準備などなど、調整作業をしているま最中で、なのに、つまり調整中なのに、朝の8時前から、夜の8時過ぎまで、シャッターは、開けて、オープン状態にしていて、それは、オープンまでの工事の作業の様子から、本の設置作業や打ち合わせの様子などなど、「まちの縁がわ」が出来るまでの「ものづくりのプロセス」をオープンにして、あからさまにしていこうと・・・。

そんな訳で、通りを行く人が、この店何?と、興味をもったり、不思議な様子で、通り過ぎていく。時折、立ち止まって、覗いていく。工務店なのに、本屋さんのような雰囲気。でも、本屋さんでもなさそう。それに、店に誰もいなかったり、時折、誰かが座っていたりして、店に入っても良いのかどうか躊躇する。これお店なの、事務所なの、ライブラリーなの、オープンしているのかどうか、まったくもって定かでない・・・と。

そんなこんなで、12月1日のオープンに向けて、こんな一文を葉書で送る事にした。


まちの縁がわ_小学生3「まちの縁がわ」とは、
住まいの「ライブラリー」として、
それぞれの「ライフスタイル」に思い巡らす、
木村工務店の路面店です。
「家づくり」のプロセスを伝えるお店として、
新たなご縁を結ぶ場所であります。

寛ぎと憩いのカフェスペースとして、
「ものづくり」を学ぶ場として、ホームページのリアル版として、
「住まいの相談室」として、出会いの「縁側」として、
皆さまに親しまれるスペースとなれば幸いです。

また、イベントを発信する「木村工務店ワークショップ」として、
住宅相談会、お餅つき、木村家本舗、左官教室、端材で工作、塗装教室、・・・・、
といった様々なイベントを発信していきますので、
ご家族やお友達をお誘い合わせの上お越し下さいませ。


ここ最近は、打ち合わせの後に、1階の「まちの縁がわ」に立ち寄ってもらったりしながら、いろいろなご意見をお伺いし、フィードバックを繰り返しながら、調整作業を進めている。木曜日の夕方4時頃の事、「まちの縁がわ」に着座して、パソコンで作業をしていたら、近くの小学生が自転車でやってきて、店の前を、覗き込んだりしながら、うろちょろしていた。丁度その時、うちの奥方が、店の前を通りかかった。その小学生が、「ここ何ですか、入っても良いですか?」と尋ねる。「エエよ。エエよ。どうぞ。どうぞ。」と奥方。「おじゃまします。」と礼儀正しく、子供が中に入って、素直に、まったくもって、自然に、吉野杉の床板に腰掛けた。

今までは、不思議な事に、大人は、入ってきても、すぐに腰掛けない。ちょっとした、躊躇い(ためらい)があって、立ち話になる。どうぞどうぞと促してからも、躊躇(ちゅうちょ)しながら、ぎこちなく、腰掛ける場合が多い。DSC03709そういえば、先日、大学生と一緒に、服部緑地の日本民家集落博物館を見学した時の事、南部曲屋で、解説をしてくれたおじさんが、縁側に座る学生に向けて、ハードウエアーとソフトウエアーというコトバがあるが、縁側というのは、ヒューマンウエアーと呼べるのかもしれませね。と言ったのが、とっても印象的だった。

ひょっとして、私たちは、建築的なヒューマンウエアの作り方と使い方を忘れてしまったのかもしれない。さて、眠れる遺伝子を呼び覚ませる事が出来るのでしょうか・・・・。

DSC03728その小学生は、腰をかけて、本棚を眺め、「本見てもエエのですか」と聞くので、「どうぞどうぞ、遠慮せんと・・」と答えると、おもむろに手に取ったのが、青い色の背表紙に「死ぬまでに見たい世界の名建築」と書かれた本だった。腰掛けて、本を見ながら、「これ、カッコエエなぁ・・・」と呟く。「私」も掘り座卓式のテーブル席から立ち上がって、「どれどれ」とそちらに向かう。ごっつい厚みの本を床板の上に置いて眺める小学生。

暫くして、その友達が、自転車でやってきて、「ここに入ってもエエのぉ」と言いながら、中に入って来て、友達の横に腰をかける。同じように、本棚を見て、一番下の棚にある「琳派」という尾形光琳などが載っている、渋~い本を手に取って、本の中をパラパラと見ながら、「この写真、カッコエエな」と呟いた。チラッとしか、その本を見ていないのに、「そやぁ、カッコエエやろ!」と見栄張った「私」。

DSC04080

その友達の友達が吸い寄せられるように自転車でやって来て、遠慮気味に中に入ってきた。3人が並んで、もう一方の棚のほうに向かって立ちながら、「このでかいのぉ、何?」と聞くので、「オガという鋸ぎりで」「ほら、この、絵と一緒」、北斎の富嶽三十六景遠江山中の絵を指し示すと。「へぇ~~」。・・・・。・・・・。

あの石、カッコエエな。と、会社の前にある石を指して言うので、イサムノグチの人が、作ったんやでぇ。と言って、インサムノグチの本を見せると、暫くその本を手に取って眺めて、唐突に、今、何時? と聞。4時55分。と答えると、あっ、もう、帰らなアカンわ。「また来てもエエですか」「エエよぉ」「ありがとうございました」と言って、扉を開けながら、「イサムノグチ・・・」と呟いて、帰って行った。

まちの縁がわ_小学生6まちの縁がわ_小学生5

次の日の朝、「まちの縁がわ」の前を通勤する、小学校の校長先生と「おはようございます」と、毎朝の挨拶を交わす。偶然にも、高校時代の同級生が、地元の小学校に赴任してきている。そうそう、昨日、こんな事があって・・・・と、写真を見せながら、話しかけると、「迷惑かけてへんか・・」「挨拶、ちゃんとしてるか・・・」「行っても大丈夫か・・・」と心配する様子。「礼儀正しかったでぇ・・・」と答える。お互いに「ありがとう」と言いあって仕事に向かった。

同日。朝。棚の取り付け作業前に、ササキ大工が、縁がわに座って、本を読んでいた。お昼。先日、住宅特集の表紙になった、スガアトリエのスガさんが、ふらりとお見えになって、「まちの縁がわ」で、本を読みながら、昼食中の「私」を待ってくれていた。店の感想など聞きながら、仕事のお話を・・・・。同日。午後。設計の林敬一さんが、夜に、お施主さんと打ち合わせをする事になっていて、その数時間も前から、ノートパソコンを持ち込んで、「まちの縁がわ」で図面を書いていた。そしたら、例の小学生が、またやってきて、「死ぬまでに見たい世界の建築」を眺めて、礼儀正しく帰って行ったのだと・・・。その応対を、ハヤシケイイチさんが、してくれていて、「あの小学生、なんや、ムツカシイ本読んでましたよぉ・・・」と言うコトバを耳にしながら、その光景を想像すると、なんとなく、笑らけてきた・・・・・。同日。夜。「まちの縁がわ」で、ハヤシさんと二人並んで、机の上のコンピュータに向かい、1時間ほど一緒に作業をした。道行く人から、見れば、不思議な光景だったかもしれない・・・。

IMG_0028IMG_0029「まちの縁がわ」2011年11月18日

ヒューマンウエアとしての「縁がわ」を通じて、「集い繋がる広がる」となれば、素敵だなぁ・・・・と願う。

投稿者 木村貴一 : 2011年11月20日 23:57 « 分岐点 | メイン | ヤネメシ »


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