2013年03月31日

ちょっとしたアドベンチャー

先週の日曜日のコト。イタリアの自転車ウィリエール代理店営業マンのキタムラくんと大阪の川と海と街をサイクリングしている途中、ちょうど神崎川で、海に向かうかどうしようか思案している時の事だった。携帯電話にメッセージがあって、それは「まちのえんがわ」スタッフのアオキさんからで、朝に初めてのお客さんEさんから電話があって、新築の相談にお伺いしたいので、シャチョウ、何時に会社に帰ってこられますか?という連絡だった。それで、午後3時ならなんとか到着することができそう!と伝える。

という訳で、なんとか午後2時過ぎに、「まちのえんがわ」にたどり着いて、珈琲でも飲んで一息ついていると、偶然にも、リフォームのご相談に親子3人のKさんがお見えになった。733973_487146201338476_1414413368_nそれで、黒のスパッツにサイクリングショーツ、黒のウインドブレーカーという、サイクリングの服装のままで打ち合わせをする。流石にヘルメットは脱いだ・・・・。

そうこうしているうちに午後3時になって、Eさんが家族4人でお越しになった。Kさんには事情を説明し、後日に現地へお伺いする旨のお約束をし、申し訳なくもお別れをする。そんな訳で、結局のところ着替える間もなく、黒ずくめのサイクリングウエアーのままで、2階事務所で打ち合わせを始めた・・・。

「それはそれとして」、Eさんは、新規に土地を購入するかどうか思案中で、その土地と既存建物が予想以上に高額で、それで、解体工事やその他諸経費に外構工事の予算を考えると、建築本体にかけられる予算がローコストになってしまう・・・・。さて、どうしたのもか・・・・。そんなご相談だった。

工務店にローコストな住宅を依頼すると、往々にして、可能なかぎり低価格な架構と構造材を使い、可能な限り簡素な素材で仕上げ、収納なども、できたら考慮しない簡素な間取りとして計画しながら、協力会社に超低価格な金額を押しつけて、施工する事が多い。木村工務店では、そうではないが、それでも、そういう「傾向」に陥りやすい。

そこで、ローコストな住宅だからこそ、建築家に依頼して、構造的な工夫や素材感、シンプルな間取りと小さな床面積などなど、設計的な工夫により、「豊かなローコスト住宅」を造れる可能性があって、もちろん、建築家への設計料はそれなりに必要だが、工務店の代表者である「私」の立場からみても、それは価値ある設計費だとおもう。

こんな話をEさんにしながら、何件かの建築家と建てたローコスト住宅の施工例を紹介し、そのうちの「コトバノイエ」を紹介している時に、そうそう、その日の日曜日は、古本屋さんとして、コトバノイエのオープン日で午後5時まで開店しているらしいですよ。とお話したのが、午後4時頃の事だった。Eさんに聞いてみると、今から是非行ってみたい!という、明快で軽快な意向がご主人からブワーンと発散されて、そのエネルギーに「私」が乗っかる形で、大阪小路から兵庫県川西まで、これからすぐに、一緒にお伺いする事になった。

「私」が自分の車に乗って、後ろに付いてきてもらって、誘導するという方法もあったが、それだと、道中に全くコミュニケーションがとれないのが、なんとなく、違和感があった。一緒に車に乗っかって、帰りは電車で帰るのがベストに思えたが、この時点での「私」の服装は60kmほど走ったあとの黒いサイクリングウエアーとスパッツ姿で、流石に、この服装のまま、電車に乗って梅田で乗り換える勇気はなかった・・・。

ところで、Eさんもロードバイクをお持ちで、「まちのえんがわ」の前に停めていたロードバイクを見てウィリエールですね!と仰るほどの自転車通で、打ち合わせ中は自転車の話題で盛り上がったりもした。そんなこんなで、つまるところ、まったく予想外な結論が導き出されて、「私」の自転車をEさんの車に積んで、一緒にコトバノイエまで行って、「私」は川西から小路まで自転車で帰るという、妙な結末。

Eさんの車の荷物室には、前輪と後輪が外されたロードバイクが詰め込まれ、その横にはEさんの乳母車。ご主人が運転手、後部座席には、奥さんと乳飲み子の赤ちゃんと、道中に笑いを振りまく愉快な息子さん。助手席には黒いサイクリングウエアーの「私」が同乗しながら道を案内し、あれやこれやとご家族とコミュニケーションをしながら阪神高速を走る一台の車。今思い返してみても、不思議な光景だったのだけれど、妙に印象に残るドライブだった・・・・。

Eさんにとっては、コトバノイエで、初めて体験する建築家の設計による家。息子さんは家の周囲にめぐらされた縁側的なデッキをぐるぐるぐるぐる走り回りながら、まだ帰れへん!とだだをこね。こんなローコストハウスならエエわと奥様も気に入ったご様子。いちど、この家を設計した建築家の矢部さんにお会いしてみたいですと語るご主人。さてさて、これからEさんの家づくりが、どんなふうに経過していくのか、全く予想はできないが、それにしても、「ローコストだからこそ建築家に依頼する」という選択肢は大いに「有り」だとおもう・・・・。

ところで、コトバノイエで打ち合わせが終わったあと、ひとりで、自転車に乗って川西の、一の鳥居から大阪小路へ向かう「私」。流石に、池田豊中辺りは寂しかったなぁ・・・。十三までたどり着いて、ビルの明かりやネオンが見えてきた辺りから、心強くなってきて、夜の御堂筋を走る時は、うきうきしてきたぐらい。
自転車地図

考えて見れば、ちょっとしかリフォームしないのですけど、お頼み出来ますか?と言ってちょっとした勇気をふるってお越しになったKさんも、取り敢えず話を聞いてみたいと、やっぱりちょっとした勇気をふるって朝からお電話を頂いた上に、一緒に川西のコトバノイエまで「旅した」Eさんも、それに、夜な夜な兵庫県川西の一の鳥居から大阪小路まで、35kmを自転車で「旅した」私も、それはそれなりの、「ちょっとしたアドベンチャー」だとおもうのです・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2013年03月31日 23:59 « コミュニケーションの道具としてのロードバイク | メイン | 旅は道連れ建築行脚 »


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