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2015年06月28日

フクロウと加工場

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加工場の手加工中の梁を背景にして、3匹のフクロウが、精悍に鎮座していて、それは「フクロウとお彼岸」というタイトルで書いた、小路在住のジュエリーデザイナーの都(と)さんが、ふらりと「まちのえんがわ」にやってきて、数年前から富田林で古民家を購入し、自力でリフォームをして、フクロウと里山暮らしをしていてるので、一度遊びに来ませんか、という縁側噺がご縁となって、フクロウワークショップを開催するコトになり、はたして、そんなのに参加する方がいらっしゃるのかどうか心配したのだけれど、30名の参加者がお見えになって、いやぁ、フクロウ好きがこんなにいるのかと驚いたのだった。

ワークショップはいつものように13時30分から始まるのだけれど、午前9時に都さんは、会場のセッティングと共に、フクロウを加工場の雰囲気に慣らすために連れてこられて、そのフクロウが加工場に登場すると、思わずカ・ワ・イ・イと呟く「私」の姿を目撃するのだけれど、フォルムや毛並みの格好良さもあるが、瞳孔が開いたような目と、時折まばたきをして、なんだか長いまつげのような感じでゆっくりとした瞬きがカワイかたりし、普段は、なかなか会場の雰囲気になじめないフクロウらしいが、この加工場には、おもいのほかすぐに馴染んでくれた。

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ちょうど加工場では、大工の手加工の真っ最中で、石川さん設計の住宅のベイマツの構造材を1ヶ月ほどかけて、大工のササキチームが手加工をしていて、まだ加工に数日かかるので、本当なら加工場に材料を広げたままにしておきたいところなのだろうが、「まちのえんがわ」の趣旨を理解してくれて、土曜日の午前中で仕事を終え、材料を片付け、ワークショップのために加工場の掃除をしてくれた。その構造材が2カ所に分けて高く積んであって、その木の香りがフクロウに加工場を馴染ませてくれたのかもしれない…。

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最近は、木造住宅の構造材は、ほとんどが機械によるプレカット加工になって、昔ながらの墨付けをして手加工をする機会がめっきり減ってきたが、木村工務店では、棟梁は、一年に一軒は手加工をしようよ!というコトにしていて、またそんな手加工を楽しみにして、墨付けが出来る大工になりたいという高校を卒業した青年が見習い大工としてきていたりもし、そんな意味では手加工のための加工場である訳で、最近はワークショップのための加工場になりつつあるのは、確かに本末転倒で、手加工とワークショップがハイブリッドに共存してこそ、いまの時代に相応しい加工場になるのだろう。

そういえば、加工場でのワークショップの開催が牽引力になって、春頃から、職人さんが空いている時を見計らって、加工場の断熱工事と防音工事をしていて、その御陰で、屋根の断熱材が日射遮蔽の効果を発揮してくれて、加工場の天井が暑くなくなって、それに防音シートが気密シートのような役目を担ってくれて、隙間風がなくなることで、開口部どおしの風の通りと抜けが良くなって、ササキ棟梁が、いままでは風が抜けなかったのに風が通るようになって、涼しくなり嬉しいですわと喜んでくれたのが、私にとって嬉しいことだった。

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上の写真のように、夜になって、現場監督のフルカワくんやタバタ大工や私が見守るなか、ササキ棟梁が、フクダ大工に墨付けの墨差しの使い方を教えていて、これこそが、ほんまもんのワークショップで、こんな光景も加工場の雰囲気と環境が、それなりに良くなってきたからなのだろうし、そうそう、うちのベッショ棟梁が、このフクロウのワークショップに娘さんと奥さんと奥さんのお母さんと一緒に参加してくれていて、なんでも娘さんが鳥好きらしく、日曜日に大工さんが家族でワークショップに参加してくれる加工場というのもちょっとした嬉しい出来事で、ま、ひょっとすれば、フクロウが、大工さんの加工場に、「技術や職人の神さん」として、励ましにやって来てくれたのかもしれない…。

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2015年06月21日

愛人料理の縁と宴

住宅相談会の午前中のAさんご夫妻は、高野山に出来たゲストハウスkokuuに宿泊し、それで、帰ってからインターネットで検索すると、設計のアルファヴィルさんと施工の木村工務店にあたって、ちょうど、自分たちの家を枚方で、土地を探して新築するか、中古住宅を買ってリフォームするかを、物件をあれこれと見ながら思案中で、じゃぁ、とにかく、まずは、木村工務店に行って、相談してみようと、お越しになった。

今までの施工例の写真を何点かピックアップして、一緒に見ながらコミュニケーションをし、どんな家を望んでおられて、私たちがどんな家造りをしているのかをお互いに伝え合っているうちに打ち解けてきて、そんなのが住宅相談会の楽しさなのだろうし、お帰りの際には、「まちのえんがわ」で腰掛けてもらい、タイミングよく隣の加工場でササキ棟梁が手加工中の刻まれた木材を見学してもらって、こんなふうな、ゲストハウスkokuuから繋がる、ものづくりの「縁」というのは、面白い出来事で、それに有り難いコトでもある。

昼からのBさんご夫妻は、生駒市にある奥さんのご実家にリフォームして同居する計画で、リクルートの雑誌に掲載された東大阪H邸リフォーム工事の雰囲気が好みだというのが「縁」でお越しになって、奥さまが、実家から望む生駒山の美しさを笑みを交えてお話になり、その眺めが、両親と同居する大きな動機のひとつのようで、それにしても、打ち合わせ室に導入したプロジェクターで、グーグルマップのストリートビューに映し出された、ご実家と生駒山の姿を一緒に眺めながらコミュニケーション出来るインターネットの技術の進歩というのは凄い事だと、あらためておもうわけで、タイミング良く現地に行ける機会が少なくなった私の立ち位置にとっては、とっても有り難いストリートビューで、相談会でのコミュニケーションの質が飛躍的に向上した。

建築家のヤベさんが教えている学生たちと、長屋をリフォームして造る、ほたる食堂というプロジェクトを一緒にやっていて、そのオーナーのほたるちゃんが造る料理を皆で一緒に食べるという共有体験を通じて、プロジェクトをより良く推進していこうという宴が、うちの家で催すことになって、ほたるちゃんは午後2時頃から料理を作りにやってきて、午後4時前頃からは、学生やヤベさんや准教授のクツキさんもお越しになり、それにうちの現場監督のオオムラくんも加わって、学生の若い「音」が響く賑やかな時間を過ごした。

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ほたるちゃんの料理は、気取った、これ見よがしの料理ではなく、フツウに美味しい料理で、それは、ま、いわば、愛人料理やな。と言い出したのはヤベさんで、確かに、そう言われてみれば、そんなふうにおもえててきて、いやべつに、私に愛人がいるわけではないんですけど、そんな料理をどんな呼び方がエエのやろ、とあれやこれやと話題にしたりするのが、こんな宴の面白さで、IMG_7262それで、その勢いに乗っかって、ヤベさんは、庭のクスノキとモミジの葉っぱの下のテーブルで繰り広げられる宴の、そのすぐ横に面している露天風呂感覚なうちのお風呂にドボンと浸かったりして、そんなコトを面白がるお遊びに、学生たちが一緒のようにバカになって悪のりしない冷静さに、少々の寂しさを感じたのだけれど、ま、こんなさまざまなコトを学ぶような「縁」と「宴」が、夜遅くまで続いた今日の日曜日だった。

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2015年06月14日

パッシブとアクティブ

「組織」としての対応を求められるのは「会社」という存在にとっては当然で、なのに、これがなかなか思うほどにうまく機能せず、そのほとんどが社内コミュニケーションの問題に起因するのだけれど、いや「社長」としての意識の問題を問われているともいえるわけで、そんなこんなのお叱りを頂戴しながら、社員と一緒に「私」の意識の改善と対応力を促されて、確かに、現場での一品生産的な家になればなるほど、現場の職人さんや設計士や現場監督の勘違いや間違いや怠惰な仕事に対する組織的なフォローが、お客さんの求めている大切な事のひとつで、その理解と行動を求められているのだろう…。

土曜日の夜はイシカワさん設計によるR邸新築工事のBBQパーティーに招待して頂いて、現場監督のフルカワくんや材木屋のオカモトさんや板金屋のマツクラくんや大工のオキくんと一緒に、あーだこーだとコミュニケーションをしたのだけれど、施主のご主人はアメリカ人で、大学で英語の教授をされている事もあり、その流暢でフレンドリーな日本語を使って、参加者のそれぞれと会話をする姿を見ていると、あ~、こんなふうに、フレンドリーな英語を話せるようになりたいものだなぁ・・・と、心底おもったりした。

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ベランダに星条旗を掲げている雰囲気に全く違和感を覚えないのが、なんとなく羨ましくおもえてきて、日本に住宅を建て、ハーフの子供さんと共に日本で住む事を決意し、建築家に設計を依頼して出来上がった新築の家の、そのベランダの星条旗が、なんとなくアメリカと日本を愛している象徴のように感じとれて、これが日本の国旗だったら、日の丸に、歴史認識問題が憑依している昨今なので、とっても違和感を感じる姿を想像してしまうわけで、はてさて、こんな日本国と日本国民の感性でエエのだろうかと、缶ビールを片手に、ほんの一瞬だけ脳内を駆け抜けていった。

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日本人が英語を話せるようになるためには、「パッシブな授業」ではだめだよ!と、何度も会話のなかで発せられたフレーズだった。英語の授業は受け身で先生の話を聞くのではなく、文法はメチャクチャな英語でも、まず自ら語りかけなければダメだよ!、スピードラーニングみたいに聞くだけではアカンで!、そうそう、それに、カタカナ英語だけは強く訂正するけどな!あれは英語と違うやんか!なんていう関西弁を交えながらの楽しい会話が続いたのだけれど、で、パッシブな態度はアカンのやな、アクティブなコミュニケーションこそが英語上達に必要なんやな…と、脳内では妙なイントネーションな日本語になって復唱していた。

建築の世界では、「パッシブハウス」とか「パッシブデザイン」はこれからの流行のコトバで、省エネな住宅を造るためのポジティブな意味合いとして大事なコトバであって、それ故に、パッシブな授業やパッシブな態度はダメだよ。というコトバが発せられる度に、脳内では、パッシブハウスへの憧れを持ったエエイメージとパッシブな授業態度のダメさ加減の、パッシブというコトバのイメージの葛藤が、延々と続いていたのだった。

「建築はパッシブに、コミュニケーションはアクティブに」なのだろうか。確かに、「組織」としての対応が出来るようになるためには、社内のコミュニケーションがアクティブになるのが大切で、社員や職人さんそれぞれが、パッシブなコミュニケーションの態度をやめて、自ら語り始めなければ、自らが行動しなければ、組織対応は始まらないのだろう…。

そんなこんなで、「私の家はあなたの家」それをスペイン語では「Mi casa es su casa」というねん!私の家のように寛いでくださいね。とコミュニケーションをしたBBQな夜だった。

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2015年06月07日

記念撮影

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社員や大工さんや手伝いさんや協力会社のひとたち50人ほどと一緒に、岩場にへばりつぎながら「投入堂」の前で記念撮影をし、それはなんだかとってもエエ経験と想い出で、それにしても、ここまでのアプローチは思いのほかハードで、木の根っこや岩場や鎖場をそれなりに慎重に歩きながら、なんとか全員が無事に辿り着けて、最後は岩陰を左側から右回りに回り込んだところに突然開けたスペースに出て、その正面の岩場の中に、へばりつくように投入堂の可愛らしい大きさの木造建築がバーンと出現し、思わずカッコエエなぁ…と呟いた「私」。

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さまざまな建築家のひとたちが好きな建築のひとつとして上がる有名建築であり、そんなのを建築に携わるものづくりの職人さんたちと一緒に共有してみるのが面白そうだと企画した研修旅行で、道中では、DSC00247どうやって建てたのかは勿論やけど、それより大工さんは、どこで加工してたんやろ。とか、それにしても、毎日こんなハードな道を大工さんたちは往復してたんかいな。いや、きっとキャンプしてたんとちゃぅのぉ。とか、確かにこんな岩場の連続やったら材料運ぶのタイヘンやな、絶対イヤヤな、こんな現場に行け言われたらどうしょぉ。とか、この投入堂のちょっと手前に岩の中に入り込むような観音堂があって、その場所で皆が揃うまで待機している時には、いやいや、この観音堂の中には、仏像やなくて、きっと仮設資材とか大工道具とかいっぱい入っているでぇ、と言いながら板の隙間から中を覗いていたりする職人さんもいて、そんなコミュニケーションが家族旅行と違う楽しさなのだろう。

DSC00252確かにこんな話を想い出しながら写真を眺めていると、観音堂を建てる前は、この岩穴を、大工さんたちは加工場として使い、飯場として利用した後、このお堂を建てて、今はメンテナンス用の小屋になっているのかもしれないと思えてくるのが、職人さんたちのそれらしい妙な説得力なのだろう。

 

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今日の日曜日は椅子張りワークショップで、昨年、建築家のヤベさんのケンチクイスワークショップでは、座面を貼るコトになり、その時に3人の椅子張り職人さん、upholster 秋田英明さん、Twisted フナコシユウマさん、SUN De WITCH 新子真希さんがお見えになって、その縁が繋がり、今年はアキタさんのアイデアで、パンケーキスツールを製作する事になった。それが今までで、もっとも高額なワークショップで、それ故に参加人数を心配したのだけれど、意外にも、キャンセル待ちがでるほどの人気で、25組のお客さんにお越し頂いた。脚は既に製作済みで、生地選びから始めて、既に用意してあった型紙を使って裁ちばさみでカットし、それをミシンで縫製する。クッションは脚にウレタンを何重かに積み重ねてエアーのスプレーガンで接着して製作し、そのクッションに生地を巻き付けて、エアータッカーで止めて完成すれのだけれど、確かに製作工程を見ていると、おもいのほか手間と材料費がかかるコトを実感するのだった。

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パンケーキクッションが完成し、完成の喜びと共に6人の女性が集まって、寛ぎながらあれやこれやと会話をしている時だった、私たち「イストモ」やなぁ…って、参加者のとんちゃんが突然言い出して、それで6人の椅子に座るイストモ記念写真を撮影するコトになった。確かに「まちのえんがわ」ワークショップの縁で、それもこの椅子の縁で集ったひとたちで、しかも、この日造った兄弟姉妹のようなパンケーキスツールたちは、それぞれの暮らしの中に置かれたりするわけで、そういう繋がりっていうのも、なんか凄くエエなぁ…とおもえるワークショップだった。

経験を共有することが、コミュニケーションをスムーズにするのだとよく言われるが、確かに旅行とか、ワークショップとか、ま、それで、「記念撮影」なんかをすることで、その共有経験も焼き付けられたりするのかね…。

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