2009年05月31日

桜えびの味(北斎と富士とB級グルメの旅その5)


北斎富嶽三十六景駿州江尻 この光景に出会うのが、次の予定だった。「北斎富嶽三十六景駿州江尻」。ところが、想定外の行動が連続し、この旅は、北斎の旅であった事すら、すっかりと忘れていた。流石に、12時をまわる頃になると、内面のどこからか、何かが突き上げてきた。「そろそろ決めた目的地を目指せ」 そんなふうに指令されているようだった。これは、「私」が、適当に決めた、遊びなはずなのに・・・・。

まぁ、それでも、その感覚に突き動かされようとおもう。次の目的地は清水だった。すぐ近くなのだけれど、海沿いのいちご街道を走ると、のろのろと渋滞していた。その遅~い流れに身を任せながら、IPODのイヤホンを耳に差し込む。ランダムに、そして、おもってもみない、選曲が繰り返される音楽を楽しみながら、ちらっとバックミラーで家族を見ると、奥方も息子も、それぞれがIPODで音楽を聴いていた。おかしな光景だな・・・。

「三保の松原」に寄り道をしてみた。どう考えても、駿州江尻の絵は、三保の松原で描かれた絵には見えないのだけれえど、確か、中学生の頃、家族と訪れたその記憶と、今も残るその時の写真の楽しそうな光景が、そうさせたのだとおもう・・・・・。

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以外と、観光客が多い。大きな松。黒い砂浜。笑顔。いわゆるビーチとは違う独特の景観。以外と以外と幸せそうなムード。それで、ここを、今回の駿州江尻にしようともおもい、富士だとおもわれる方角に向かって撮影を試みる。が、どうも違う・・・・。この北斎に登場する人物は、「生きる」人々なのだ・・・・。ふじやまは、どこだ・・・・。

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まぁ、とにかく、近くの神社に立ち寄って、祈願でもしてみようと、何となく、足が神社に向かった。「ぼくは、富士山が見えますようにと、祈ったでぇ・・・」「おとん、と、おかん、は、何を祈った・・・」と。えぇ、おとん。そんな呼ばれ方するのかぁ・・・・。

もう少し粘ってみようと、清水港周辺をうろうろする。清水エスパルスの臨時駐車場に入って、接岸する船を横に見て、海から富士山の方角を眺めてみる。・・・・・・。

あっ、うっすらと、富士山が・・・・・。目をよぉーくよぉーく凝らさないと見えないのだけれど・・・・。息子は、え、どこどこ・・・と、急遽、メガネをコンタクトに入れ替えて確認した。このおかしな写真撮影を呆れた様子で、車から眺めていた奥方も車から這い出して、喜喜として海からの富士を確認する。

DSC07843-1北斎富嶽三十六景駿州江尻
写真には写っていないので、手を加えてみる・・・。嘘のようで、本当に富士をみた・・・。

港で働く人々や風が舞い上がる街道を行き交う人々の姿は見れなかった。ノンビリとゴールデンウィークの釣りをする家族の姿を富士山が、ひっそりと見守っていた。風で吹きすさび林立する木立はみれなかったが、対岸には作業を休んでいるクレーンが何本も林立していた。そして、富士山が、うっすらと、見守っていた。

北斎のこの絵には、わざと、傘で顔を隠して描いているようだった。北斎富嶽三十六景東海道江尻田子の浦略図そして、他の絵も、顔を見せないように描かれているシーンも多い。今回の旅の撮影も、それに、従って、顔を隠した撮影にしてみようとおもう・・・・。 次の目的地は「江尻田子の浦」で、時間的には30分ほどの距離。それで、国道で目指す。

DSC07850由比に近づくにつれ渋滞し、渋滞の車の正面に富士山が、時として、ハッキリと、時として、うっすらと、見え隠れしていた。渋滞と富士山を眺めているうちに、そうだ。桜エビだ。桜えび祭りだと理解してきた。

すでに時刻は2時。朝、焼津で、食べ過ぎた事もあって、空腹ではなかったが、その店で見た、桜えびの釜揚げの姿がちらついていたので、漁港に立ち寄ってみる。何だ、祭りは日曜日に終わっていたのだ。それでも、本日も既に桜エビは売り切れました。との表示があり、やっぱり人気があるのだなぁ・・・・・。

DSC07854 売り切れるほどの人気なら、是非、食べてみたい。由比の町に立ち寄ろうと、脳内が呟いたのだとおもう。B級グルメの「静岡おでん」を諦めただけに、やっぱり桜エビを食べよう! と、奥方も急に活気づいて・・・・。ところが、どの店も、満員で、それも、6組も7組も待つ店ばかり、奥方は闘志満満なのだけれど、私と息子は、何度か懇願して、諦めてもらう・・・。

それにしても、諦めきれない様子の奥方の後ろ姿を見ながら歩いていると、3組待ちの店を発見し、「ここどぉ」と指示がでて、こういう時に、素直に従うようになったのは、最近の事で、きっと、それは歳のせいだとおもう・・・・。

それでも20分ほど待つ苦行が必要で、そして、その末に出される、ざるそばに一枚の桜えびの釜揚げを見ると、このために、かれこれ、一時間近くも・・・・と、おもうと、何だか、腹立たしい気持ちにもなるのだが、とりあえず、気を取り直して、食べよう・・・・・。

と、確かに、美味い。 あぁ、丼にした方が良かったかなぁ・・・。いや、もう何枚か頼んだほうが・・・・。などと、「旨味」には勝てない、げんきんな「私」がそこにいて、この苦行を受け入れて良かったかなと、それとなく、奥方の判断に感謝するのだった。

そんな訳で、一転して、由比の町が好きになり、駐車場に向かって、町を歩きながら、息子が、「海があって、川があって、富士山があって、桜えびがあって、ノンビリした町があって、ここに住んでもエエかなぁ・・・・」と、呟いた・・・・・・。

 

そんなこんなの、由比の町と桜えびと旅の話を、新築の打ち合わせ中のお施主さんに語ると、その奥さんが、曰く。私、その町の出身です・・・・・と。小さい頃から当たり前に、いつも富士山があって・・・・、大阪に来て、久しぶりに郷里に帰り、久しぶりに富士山を見ると、富士山っていいなぁ・・・・。いい町だなぁ・・・・と。・・・・・。

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次の週の打ち合わせ日の事、郷里からわざわざ桜エビを取り寄せて、打ち合わせに持参してくれた・・・・。その「桜えび」の味は、「美味い」と「感謝」と「旅の思い出」が交錯する味だった・・・・。


PS
それはそうと、本日と明日、会社の研修旅行、別名、慰安旅行とも言いますが、社員と協力業者の人々を交えての催しがあります。それで、月曜日は、臨時休業となりますので、ご理解のほど、よろしくお願い致します。

そんな訳で、前回の決意と違って、今回も、この旅のブログを完結する事が出来なかった。記憶もそろそろ薄れかかっているのだが、「続く」となりそうだなぁ・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2009年05月31日 00:33 « 「現地」「現場」「経験」「体験」 | メイン | 断熱(北斎と富士とB級グルメの旅その4) »


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