2008年11月02日

再生

「葬儀副委員長」なんていう立場で、葬儀を経験する。あっけなく「灰」になってしまう姿をみてしまうと、どのように「死」を迎え、 どのように「生」を生きるのか。と、静かにおもう。じわり、じわりと、「何か」が忍び寄ってくるのだ・・・・・。

灰を取り囲んだまわりに、抱きかかえられながら見守っていた孫さんが、その灰を見て、「じいじいはどこへいったのぉ。 このしたにかくれているのぉ・・・」と、無邪気に喋る姿が、とても印象的だった。確かに、どこに行ってしまったのだろう・・・・・・・・と、 その傍らで、「無言」が続く。それにしても、こういう、経験を最後まで、与えてくれた故人に、深く感謝したい。

まぁ、でも、そんな事が、有ろうが無かろうが、生は淡々と流れていく。ちょっと頼まれたこともあって、ミナミ、 心斎橋のカンディハウスという店に家具を見に行く。ほー、なるほど・・・・。それならついでに、御堂筋沿いをちょっと歩いて、 カッシーナに行こうよ。と奥方に促される。

茶色の革のコルビジェLC2ソファが置いてあって、綺麗な店員さんが、 この茶色の革とカラーフレームがコルビジェが最初に発表した色合いで・・・・という。カラーフレームはブルーだと言っていたかなと、 いたってあやふや。とにかく値段を見ると100万円を越していた・・・・。

リプロダクト家具」 というのが巷で流行っているらしい。インターネット上で、ある会社のLC2徹底比較とやらを見ると、同じ 「ような」ソファーでも165,00円~840,00円 もの開きがあって、微妙に、サイズや造りが違う。いやぁ、こういうのって、 どれを選択するのか、迷うよなぁ・・・・。

別に、私も、奥方もこのソファーが欲しい訳でもなく、唐突に、「目利き」という言葉が脳裏をかすめていく・・・・・。もし、 買うのであれば、どちらの製品を買うのかな。と考えてみると、意外に面白い。メーカー保証という安心を買うのか、微妙な違いにこだわるのか、 よぉーく、よぉーく見比べて、集中して、目利きして、選び選び抜いて、粗悪品でないのかどうか、など心配をしながら、結局はどれにするのか・ ・・・。

カッシーナの高級家具は、車ほどの値段がして、でも、車を買うよりはエエかなぁとおもうものの、でも、やっぱり、 そう簡単に買えそうにもなく、買いたいわけでもなく、ここは、やっぱり、珈琲でも飲もう。と、心斎橋を歩く。

それにしても、心斎橋をブラブラする気にもなれない・・・。何往復かしても、何だか楽しかった昔を想えば、個性的な老舗はなくなり、 個性的な新しい店も見あたらず、あの当時の店の「文化」って、いったい何だったのかねぇ・・・・とおもう。

道すがら、ソニータワーのあとに出来たビルに、奥方の背後から、おそるおそる、くっついて入る。が、ほとんど素通りで、我慢できず、 退散する。あの黒川紀章のソニータワーが、 そのまま残っていた方が良かったのでは・・・・・。

新しいビルが悪いわけでもなく。ただ、あの当時のソニータワーの白い物体に、1階のエレベータで一気に最上階まで上がり、 真っ黒な内装に、当時のウオークマンや、ラジオなど、カッコイイソニー製品を眺め。下に降りようとすると、突然、長堀通りを見下ろす、 光溢れるシースルーのエスカレーターが現れ、独特の気分で、車の流れとビルを眺めながら巾の狭いエスカレーターを下る。 それを何回か繰り返して、再び1階に戻る。

ソニープラザは当時の若者のデートコースのひとつでもあったとおもう。デートでなくても、女の子に付き合って、ソニープラザに行き、 外国製の化粧品か何かを見ている間に、ソニー製品を眺めたりしたものだ。いろんな女の子とエスカレーターを下ったような記憶。そこには、 ちょっとした「文化」があったのだろう・・・・。

ここで、珈琲を飲もうよ。と、奥方の後に続いて、階段を上がると、磨りガラスの天窓で、昔、入った記憶がある建物。それは、 コンクリート打ち放しではないけれど、どうも安藤風の建物で。そうそう、BIGIが何かアパレルの店が入っていた安藤さん設計の建物だった。 何というのか、コンクリート打ち放しのすっぴんから、コストを掛けずにお化粧直しされた。そんな状態だった。

建物の構成は安藤さん、内装は、大阪らしくコテコテのお好きなように・・・。それはそれでエエのかも・・・。リフォーム、 リニューアル、リプロダクト、再生、再構築、etc。政治、経済から文化まで、「死」と「再生」が彷徨っている・・・・・。

帰りがてら、セールとい言葉に誘われて、アクタスなども覗く。エッグチェアーの80万円台が現品特価40万円台。 それでも、簡単に買える金額でもなく。これは、リプロダクト家具はあるの?ないの?と、すっかり影響されている私。

ついでに、アップルのお店に立ち寄る。店の中の雰囲気も良いのだけれど、御堂筋と周防町とアメリカ村がぶつかる、 ミナミのエエ場所に店舗があって、その事が流石だなぁ・・・・とおもう。ソニーは心斎橋のソニータワーを取り壊し、その拠点をキタへ。 確かに、心斎橋のお店が失っている、なんだか文化のようなものが、アップルのあの店にはあるようで・・・・・。

DSC03655帰りがけの車から、ソニータワーの後に出来た、光り輝く綺麗な建物を眺めていると、 「死」 とか「再生」とか「生きる」という出来事の複雑さがよぎり、その建物が、まるで、黒川紀章の墓標にさえ思えてきたのは、きっと、 今週の葬儀の影響があったからだとおもう・・・・・・。

家までのの帰り道、TRUCK という家具屋さんの前を通るので、 ほんのちょっと立ち寄る。木村工務店で建てたお客さんで、TRUCKの家具を置いている人が非常に多い。 先ほどまで見た数件の家具屋さんと比べると、リラックスした感じかとてもエエ。そうそう、今週は忘れがちだったなぁ・・・・「Relax」  

 

 

投稿者 木村貴一 : 2008年11月02日 22:06 « 格闘 | メイン | ぐずぐずとした・・・ »


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