2014年11月30日

「知りながら害を為すな」とドラッカーさんが云う

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明日から12月だというのに、暖かい日曜日。目神山にある建築家石井修さん設計による、遺作にもなった、通称目神山22へ、関西大学の学生たちと共に見学に行く。毎年毎年お施主さんのご厚意で見学することが出来て、あらためてこの場をお借りして感謝申し上げたいのだけれど、学生の中には、大学院生になってからも今年で3年連続見学に来た生徒もいて、確かにそれだけ、住宅としての魅力があるのだとおもう。

紅葉の甲山が目の前にパノラマのように広がり、大阪駅から30分で到着できる、軽井沢の別荘地のような景観なのだけれど、それが、着工前の地鎮祭が終わった次の日に、リビングダイニングを反転したいと建築家の石井修さんが仰って、これをしなかったら建築家として一生の後悔になるという堅い意志でもあった。確認申請をわざざ取り直してまで、もともと南向きの海側を向いていたリビングダイニングを北向きの甲山が見えるこの方向に反転する大きな決断をされた。敷地は木々が鬱そうと茂っていた山で、地鎮祭まで、このリビングダイニングがある場所の敷地の位置に、実際に立ってみる事が出来なかったのが、大きな原因だろう。

上棟の日、1階のコンクリートスラブの上に2階部分の木造の木組が立ち上がり、その木組みの下で上棟式の宴が催された時、「私」はようやく、石井修さんの大胆な決断の正しさに気付く事になった。竣工式では、その眺望の良さに、感動したものだった。今日も多くの学生に感動や共感を与える住宅内部からのこの眺望は、建築の設計に於ける「敷地を読む」とか「場所の声を聞く」という事の難しさと、そのための決断力まで学ぶことができる最高の住宅なのではないかとおもう・・・。

木村工務店は、このように建築家の設計による家も建てるのだけれど、自社の設計による建築もするわけで、そのどちらにしても、実際に家を建てることのできる「ものづくりの集団」であるという事に最大の「力点」をおいていて、それが「工務店」の意味するところでもあるのだろうが、昨日の土曜日の夜は、その木村工務店のものづくりの仲間たちと共に年末のミーティングと忘年会を催した。

建築というのは、大工さんや左官屋さんをはじめてする多種多様な職人さんたちがひとつの「チーム」となって「工事現場」で造るものづくりで、チームで施主に貢献してエエ建築を造るのだけれど、それが、ひとつひとつが違う敷地条件と違う建物だという現場仕事ゆえに、なかなか思い通りにはいかないもので、それ故にミーティングで、ドラッカーさんの云う、「真摯」な態度の大切さとか、プロフェッショナルの倫理として「知りながら害を為すな」なんていうコトバとそのハートを共有しようと努め、お互いのコミュニケーションが潤滑にいくための親しみやすさを大切にして懇親会で酒を酌み交わすのだった・・・。

そういえば、あの時、建築家の石井修さんは、プロフェッショナルの倫理として「知りながら害を為すな」みたいな気持ちが働き、「真摯」な態度で、確認申請を取り直してまで、建物を反転したのかもしれないなぁ・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2014年11月30日 23:11 « 命のエネルギー | メイン | 小さなものづくりのパワースポット »


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