2015年03月15日

オモシロイ現象

住宅相談会の日曜日だったが、午前中に地鎮祭があって、それは施主の方が、あるひとに、良き日をお尋ねすると、今日の日曜日が良い日だと云われて、それで、うちの会社と同じ地元の方なので、いつもお世話になっている清見原神社の宮司さんが、地鎮の儀を執り行いにやってきたのだけれど、なんでも、この地で、ものづくりをされているのだが、あるひとの進言もあって、ここ数年、地元の氏神さんを大切にして、お参りをするようになったそうで、氏神さまを大切にするとか、さまざまな物事の「良き日」というものをどのように決めるのかとか、そんなのが、それぞれの人生や商売のメンタリティーに、それなりの影響を及ぼすのが、不思議でオモシロイ現象だなぁ…とおもう。

午後からのAさんは、ご夫妻とベビーカーに乗せたお子さんを連れてお越しになって、以前にリフォーム工事をしたAOさんのご友人で、土地を探して新築するか、中古住宅を探してリフォームするのか、のご相談で、うちの設計のタナカくんと共に日住サービスのナリタさんにも参加してもらいながら、あれやこれやとお話をしたのだけれど、ご主人の実家がある守口か、奥さんの実家のある吹田をご希望で、もちろん、予算と希望の土地の価格とのバランスが、新築かリフォームを決めるわけで、ま、それはそれとして、ほとんどが、奥さんの実家の方角に吸い寄せられて行くのが、オモシロイ現象なんですよねぇ…と、一緒に笑い会いながらのコミュニケーションがはずんだ。

午後3時からのBさんは、ご夫妻とまだ小さなお嬢さんと一緒にお越しになって、現在お住まいの住宅の全面リフォーム工事をご希望で、それはご主人の祖父の家だったそうで、最近は、若い世代が祖父母や両親の家を受け継いで、リフォームするコトに、ほとんど違和感がなくなってきたのが、オモシロイ現象で、スクラップアンドビルドだけでない、受け継ぎリノベーションする、そんな考え方が普通になってきたのだろうが、その背景には、ビフォーアフターのように、新築に引けをとらないデザインや空間性をもった家が、実例として見ることができるようになったのが大きいのだとおもうけれど、家の耐久性を向上させる耐震技術が一般化されたコトや、暮らしを向上させる高断熱高気密の技術の一般化が、陰の立て役者だとおもう。

AさんもBさんも断熱の入った暖かい家にして下さい。と異口同音なご要望があって、もちろん今が、寒い季節だからそうなのだろうが、断熱に関して、はっきりとした意見が出るようになってきたのは、ここ数年のオモシロイ現象で、そのご要望に答えるべく、北海道に高断熱高気密住宅を体感しにいったり、ごく最近では、打ち合わせのための応接室に、プロジェクターを設置して、国土交通省補助事業の住宅省エネルギー技術の講習テキストを引用したパワーポイントを作って、断熱住宅を説明をするようにしていて、インターネットによる情報化社会の中で、工務店は、さまざまな現象を理解して、説明できるスキルを求められているのだと、ひしひしと感じるのだけれど、いや、それが、なかなか、タイヘン。

昨日の土曜日は、午前中は西宮でお引き渡しがあって、最後まで参加出来ず、途中でおいとましたのは、午後1時から生野区役所のサポートによって、「まちのえんがわ」主催で、「生野区ものづくり百景ツアー」というのを開催して、理容鋏を手作りで製作して黄綬褒章も受章しておられる「濵口鋏製作所」さんと、関西の超有名お好み焼き店やたこ焼き屋さんの鉄板とガス器具を製作している「有限会社旭進ガス機製作所」さんと、へら絞り加工といって、アルミのバケツとか照明器具の傘などのように一枚の平板をロクロで回転させながら立体手加工する「吉持製作所」さんにツアーをし、ツアーの締めは、町工場のソケット工場をBarにしたソケットさんで懇親した。 当日の写真はこちら

11名の参加者は、実際にものづくりをしている男性や、ものづくりの好きな主婦や学生や生野区で起業したい男性など、さまざまで、それなりに喜んで頂けたようで、ほっとしているのだけれど、なによりも、いずれの工場(こうば)も長屋の中にあって、その技術の世界では有名で、地元以外の全国各地からの依頼があるのも特徴で、それよりも、狭い長屋の町工場の中で、道具を使いやすいように工夫して配置し、さまざまな道具も自分たちで作って、手作業をしているのが、共通していることで、機械を別の場所に持っていくと同じような製品が出来ないような、職人さんに馴染んだ道具と作業場になっているのがオモシロイ現象で、そういう町工場(まちこうば)が格好エエのだなぁ…。

村松禎治郎著の「大工道具の歴史」に、「材料と対話し、それをものにするための、対話の通訳者になってくれるのが、道具である」という一文があって、それが「まちのえんがわ」ワークショップのモチーフになっていて、ワークショップでは、材料とのコミュニケーションを楽しむコトに焦点をあわしているのだけれど、プロフェッショナルな世界は、材料との「繊細」な対話をするために、独自の道具を作って、その通訳者としての道具をいかに上手に使いこなすかが、もっとも重要なコトで、年月をかけて技術を習得するための「辛抱」が必要だと、どの製作所でも異口同音に語ってくれて、そんな雰囲気を体感できるのが、生野区の「まちこうば」だとおもう…。

そんな「まちこうば」で、職人さんのオーラに触れると、まだまだもっと辛抱と工夫をして、ものづくりをせんとアカンなぁ…と、クリエーティブなメンタリティーに多大な影響を及ぼされるのが、もっともオモシロイ現象なのかもしれない。

投稿者 木村貴一 : 2015年03月15日 23:59 « フクロウとお彼岸 | メイン | 「まちのありよう」 »


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