2011年03月20日
シーベルト
それは、シューベルトではなく、シーボルトでもなく、「シーベルト」なのだ。と言うと、そんなオヤジギャグ、流行らんわ。と東京から帰ってきた長男に、一喝された。確かに。奥方は、それ、偉人さんやったけ、エジソンとちゃうけど、あっ、チャウチャウ、解った解った、アレアレ、それやん。知ってる知ってる。で、終わった・・・・。
この震災から1週間が経って、震災前と震災後で、「私」の中で、新たに学んだ事は、「津波」と「シーベルト」だった。あの時見た、衝撃的な津波のLIVE映像は、その後テレビで流れたのだろうか、あれから一度も見る事がない・・・。津波が引いた後の映像は、木造の基礎だけが残る映像であり、土台や根太や大引と言われるものが、基礎に取り付いたまま、残像のように残っている基礎の映像もあった。土台を残し、柱から上だけが、波に持って行かれた多くの木造家屋。構造設計の田原さんと電話で会話をすると、木造という建物は、地震のように、右や左に揺れる力には、まだしも、津波のように、一方向から一気にかかる力には弱いねぇ・・・。うん、なるほど、確かに。
「壊滅」というコトバも、ここ最近あらためて認識したコトバだ。壊滅都市を、どのように再興し、都市計画するのだろうか・・・。コンクリートの建物による復興?超高層?海辺の超高層マンンションから降りてくる漁民のおっちゃんおばちゃんの姿?・・・。土地の問題はどうするのだろうか・・。戦後というのは、こんな状態だったかと、ふと思った。きっと、これから様々な「基準」というものが、変わるのだろう。まずは、多様な議論が欲しい。
それにしてもやっかいな問題は「シーベルト」なのだ。マイクロなのかミリなのか、/年か/時か/日か/回か、語尾があいまいなまま報道され、困惑してしまう。年間に1ミリシーベルト/年が、一般人の限界値だという。いま測定された数値が例えば、0.5マイクロシーベルト/時間なら、 0.5マイクロシーベルト/時間の放射線を24時間浴びると、0.5マイクロシーベルト/時間×24時間=12マイクロシーベルト/日で、限界値の1ミリシーベルト/年を1000マイクロシーベルト/年に直し、1000マイクロシーベルト/年÷12マイクロシーベルト/日=83.3日間となって、0.5マイクロシーベルト/時間の放射線を24時間連続で、83.3日間浴びると危険なのだ・・・。という、こんな計算でエエのかどうか・・・。ちなみに、80日という数値から脳内では、小学生の頃に読んだ、80日間世界一周がよぎる。また、それをネットで調べる過程で、「被爆治療83日間の記録」というのに出くわした・・・。
そんな事を頭で、何となく考えている時に、ある人から、親しい人に向けたメールとして、私の稚拙な内容をもっと熟考した内容で数回に渡り送られてきた。その一部を引用すると。
・・・・(前略)・・・・
「避難する」という判断の閾値について考えます。
<前提条件>
・避難したい範囲から出るための時間(つまり被爆時間)を24時間とする
・屋内に居れば被爆量は減るが、安全側(状況としては危険側)を考えて、ずっと屋外にいると想定する
・これまでと同様、環境線量をすべて被爆するという仮定とする
【判断レベル1】
判断する数値の想定:一般市民の線量限度(自然からの線量被爆は除く)
数値:1mmシーベルト/年
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:1000マイクロシーベルト÷24h=41.7マイクロシーベルト/h
【判断レベル2】
判断する数値の想定:業務に従事する人の年間被爆量の上限
数値:50mmシーベルト/年
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:50000マイクロシーベルト÷24h=2083マイクロシーベルト/h=2.83mmシーベルト/h
【判断レベル3】
判断する数値の想定:成田-ニューヨークを飛行機で往復する線量
数値:86mmシーベルト
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:86000マイクロシーベルト÷24h=3583マイクロシーベルト/h=3.58mmシーベルト/h
【判断レベル4】
判断する数値の想定:臨床的な症状が出ない(専門医に行っても「問題のある所見なし」というような診断が出される)
数値:250mmシーベルト
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:10417マイクロシーベルト=10.417mmシーベルト/h
【判断レベル5】
判断する数値の想定:リンパ球の一時的な減少
数値:1000mmシーベルト
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:41667マイクロシーベルト=41.67mmシーベルト/h
【判断レベル6】
判断する数値の想定:将来的に致命的な癌の発生確率が0.04%として明らかになっている数値(この被爆量を受けた1万人に4人)
数値:1000mmシーベルト(レベル5と同じ)
上記数値から求められる、自分がいる場所の近くの放射線量の数値:41667マイクロシーベルト=41.67mmシーベルト/h・・・・(後略)・・・・
同級生から電話が掛かってきた。東京に住むオー君から電話があって、どうも、政府の公表している数値が信用できないので、奥さんと娘さんを大阪に暫く移住させるつもりやけど、ウィークリーマンションもどこもかも空いてないので、どこか借家でもないかね・・・。という内容だった。おそらく、こんな事があちこちで起こっているのだ。避難するのかどうかの判断基準は、風評ではなく、引用のような理科的な考え方で、それぞれが判断するしかないのだろうが、より専門知識をもった政府レベルの人が誠実な計算をして欲しいところ・・・・。
そうそう、その上、今や、「シーベルト」だけでなく、「ベクレル」という単位も登場してきたのだ。もはや、テレビも私も、理科の授業の如く、頭の中は混乱ていて、世間では、「理科」と「風評」とで混沌としている・・・・。
「ベクレル」と摂取制限指標
「シーベルト」が放射線が人体に与える影響を示す単位であるのに対して、「ベクレル(Bq)」は、放射性物質の量を示す単位です。
ベクレルは、放射性物質を含む食品や水を食べたり飲んだりすることによる放射線の影響を防ぐために、安全基準の単位としても使われています。
放射性物質ごとの摂取の制限についての指標の値は次のとおりです。
放射性ヨウ素では、いずれも1キログラム当たりで、飲料水や牛乳が300ベクレル、野菜が2000ベクレル。放射性セシウムでは、いずれも1キログラム当たりで、飲料水や牛乳が200ベクレル、野菜や穀物、それに肉や卵、魚が500ベクレルとなっています。
「シーベルト」さんとのお付き合いだけで、充分なのだけれど、これからは、ベクトルではなく、「ベクレル」さんとのお付き合いまでしなくてはいけないのか・・・。それにしても、自衛隊員や消防隊員の「シーベルト」は本当に大丈夫なのか?と、NHKのホームページを見る。
放水後の放射線量 減少傾向に
東京電力は、20日午前11時前から記者会見し、福島第一原子力発電所の敷地内の放射線の量は、放水が始まった19日午後から、引き続き減少傾向にあることを明らかにしました。
東京電力によりますと、福島第一原子力発電所の3号機から北西におよそ500メートル離れた「事務本館」北側の放射線の量は、19日の放水が始まる前の午後2時に、1時間当たり3443マイクロシーベルトだった値が、20日午前8時半に、1時間当たり2625マイクロシーベルトに減少し、18時間余りで818マイクロシーベルト下がったことを明らかにしました。週刊朝日には、こんな表が掲載されていて、それを引用すると。
業務に従事する人の年間の被曝量の上限が50ミリシーベルト/年なので、ミリをマイクロに直し、50000マイクロシーベルト/年として、50000マイクロシーベルト/年÷3443マイクロシーベルト/時=14時間となって、14時間作業をすると限界値を越えると解釈すればエエのだろうか・・・・。まったくもって、その環境の中に、果敢に飛び込んでいく作業員のその「勇気」に感謝したい・・・・。
消防隊 被ばく線量基準下回る
東京消防庁によりますと、福島第一原子力発電所で、19日未明、放水活動を行った消防隊員およそ50人の被ばく線量は最大で27ミリシーベルトで、ふだんの活動での安全の基準としている30ミリシーベルトを下回ったということです。
部隊を率いた東京消防庁の佐藤康雄警防部長によりますと、今回の放水活動を行った隊員およそ50人の被ばく線量は最大が27ミリシーベルトで1人、15ミリシーベルト前後が3人、10ミリシーベルト以下が45人だったということです。
被ばく線量を計測する検査は、除せん後に行われたということで、隊員は全員改めて血液検査を受けるということです。
東京消防庁では、被ばく線量の安全の基準として、人命のためにやむをえない場合の活動でも100ミリシーベル未満とし、ふだんの活動では30ミリシーベルト未満としていて、今回はいずれもふだんの活動の基準を下回ったということです。
年間の被曝量の上限値、50ミリシーベルト/年となっていて、それに対して、ふだんの活動の30ミリシーベルトと人命のためにやむえない100ミリシーベルトというのは、30ミリシーベルト/回、100ミリシーベルト/回として、1回の被曝量の限界値だと解釈するのだろうか。良く理解できていないが、いずれにしても、一般人の年間の被曝量の限界値が1ミリシーベルト/年なのだ。消防団員も自衛隊員も被爆という事に関しては、一般人のレベルな訳で、それを50倍や100倍以上の危険を承知の上で挑み、また、ヒロシマ、ナガサキ、チエルノブイリに起こったあの結果が、被爆者の結論であるとするのなら、そういう目に見えぬ悪魔と戦い、国を守ろうとする、消防隊員や自衛隊員の「心意気」には、頭が下がる・・・・。
ところで、原子力発電の賛否は別にして、兎に角、これからの家は、送電線から送られてくる電気エネルギーをなるべく消費しない家が良いね・・・。そうすれば、原子力発電所の数を減らせるし、水力発電を建設するためのダムや環境破壊も減らせるし、火力発電のための天然ガスの輸入も減らせる。「ついでに」CO2の削減にもなるのだろう・・・
家で使うエネルギーは、家電エネルギーが30%ほど、照明が13%ほど、給湯が29%ほど、暖房が15%ほど、冷房が3%ほど、換気が5%ほど、調理が5%ほどだと言われている。あくまで、温暖な地域の平均値。そのそれぞれで、電気エネルギーを節電するにはどうすれば良いのだろうか・・・・。
家電と照明は、いわゆる節電と省エネ機器の性能向上で、電気の消費エネルギーを減らす事になるのだろうが、確かに、これが、家庭で使うエネルギーの半分近くを占めるので、節電する効果は大きい。それに家電や照明のエネルギーは、昼間で天気が良ければ、太陽光発電でまかなうことも出来そうだ。
給湯エネルギーと言われる、お湯を沸かすエネルギーをどう減らせばエエのだろう。主に、お風呂のお湯が最大の消費量になるので、その昔、詐欺まがいの太陽熱ソーラーっていうのが販売されて、社会的な問題になったけれど、太陽熱温水器を使えば、29%のエネルギー消費のかなりを減らせるので、企業が魅力的な製品を出して、復活して欲しいね・・・。一般的には、電気でお湯を沸かす時は、エコキュートなどで、省エネするのだろう。電気を使わないでお湯を沸かすのなら、ガスの給湯器やエコウィルやエネファームになるのだろう。ただ、災害時は、ガスより電気の復旧の方が圧倒的に早そう。そうそう、一般性はないが、薪も候補。災害時は特にね。
調理エネルギーが5%あって、電気をなるべく消費しないという観点でいけば、ガスレンジになる。でも、ガスだと、災害時の復旧が遅いとか、IHと違って、火事の危険性が大きいとか。そういやぁ、キャンプでは炭や薪を使うけれど、それもひとつの選択肢か。
換気で消費されるエネルギーが5%で、それに比べて冷房が3%だという数値には驚くのだけれど、5%の換気エネルギーを節減するのには、調理の時の換気扇以外の換気、例えば、便所やお風呂は、自然換気に頼るのが良さそうだ・・・・。
何よりも暖房の15%と冷房の3%をどうすれば良いのだろうか。暖房に関しては、まずは、家に、断熱材を入れて、断熱効果を高めて、電気でもガスでも灯油でも、兎に角、暖房のために費やすエネルギー使用量を減らす事が求められている時代で、CO2削減として、エコポイントなどが、国レベルの取り組みとして、推進されているが、原子力発電所削減ポイントにしてはどう・・・・?
暖房器具は、クーラーの電気の暖房でまかなうのか、深夜電力の蓄熱暖房を使うのか、電気床暖などなど。やはり、節電という観点では、ガスや石油だな薪だって・・・・。また、それとは別に、昼間は太陽熱を取り入れて部屋を暖めるというパッシブな方法も大切なのだが、南向きの大開口の家ばかりではないので、これはなかなかムツカシイ。
冷房エネルギーをどう削減するのかも大きな課題。全体量からすると僅かなのが意外な事実なのだけれど、夏の一時に電気消費が集中して、発電所がフル稼働になるのが問題なのだろう。夏のピーク時の発電を助けるという観点では、太陽光発電が役に立つのかもしれない・・・・。でも、やっぱり、クーラーを使わずに、夏涼しい家を造るというのが、あたりまえで、単純な目標なのだとおもう。という事は、屋根や壁の遮熱効果を高かめて、風通しの良い家を創るという事になるのだろう・・・・。
冷暖房費の削減にはパッシブな家が求められている。そのパッシブ(受動的)というコトバって、うちの現場監督のTは、パッシブって、それ、ポジティブの事ですか?ネガティブの事ですか?と聞いたのだけれど、自然エネルギー利用のためのパッシブ建築設計手法事典には、パッシブな家というのは、「特別な動力機器を用いず、自然それ自体がもつ性質を建築的に利用して室内気候調整を行おうとするのが、パッシブ設計の考え方です」と書いてあった。節電する家という観点からも、ますますパッシブな家が求められるのだろう・・・・。
ところで、パッシブな家が増えて、節電された家庭の電気エネルギーが、電気自動車のエネルギーのために使われるのなら、「シーベルト」への不安は、なかなか解消されないだろうな・・・・。どんなエネルギーバランスが日本国にとってエエのだろうか。
投稿者 木村貴一 : 2011年03月20日 23:56 « 電気エネルギー | メイン | 粛々 »