2008年06月08日
DNA
安芸の宮島から呉港まで高速船に乗っていると、誰かが、「潜水艦や!」と叫ぶ。 船のデッキから左舷11時の方向を見ると、鯨のような黒い物体が静かに堂々と近づいてきた。
誰かが、そして、私も「カッコエエなぁ!」とおもわず声を出す。船室にいる人もデッキにいる人も、そして、船長までもが、 その方向に身を乗り出して、後方に過ぎ去るまで見届ける。デッキから潜水艦に向かって、手を振ると、手を振り替えしてくれたような気がした。
海で見る潜水艦は、独特の格好良さがあった。確かに、この言葉は不謹慎かもしれない。 その背景にある、戦争とか、平和とか、建造費とか、必要性とか、憲法とか・・・。その他、様々な諸問題を考慮すると、 このコトバに、コメンナサイと謝るしかない。
ただ「モノ」として、「乗りモノ」として、実物の動く姿を目の前で見ると、乗ってみたい・・・と、ちょっと憧れる。それは、 私だけの事なのかもしれないし、「男のDNA」の中にある「潜在的な何か」なのかもしれない。
戦時中の何人かの若者が、「モノ」としての格好良さに憧れて、戦艦大和や零戦に乗った人もいるのだろうなぁ・・・・。 なんて事を感じたのは、その日が初めてだった。そして、じっくりと、「その背景」を考えると、やっぱり、複雑な気持ちになる・・・・・・。
瀬戸内の島々と、何隻もの軍艦を見ながら、小雨降る、大和ミュージアムの前に船が着いた。 今回の研修旅行のメインテーマが閑谷学校と錦帯橋と厳島神社だとすると、戦艦大和を見ることは付録のようなものだった。
ボランティアの説明員の人が渾身の力を振り絞りながら、1時間、朗朗と、「モノ」として、 「モノ造り」としての大和と、「その背景」を説明してくれる。
当時の最新の技術を結集して造った大和の技術が、現代にも様々なところに、 活かされているのだぁ・・・・と。そうそう、そう言えば、グレーチングが最初に使われたのは、大和だったと語っていた。
そんな中で、戦艦大和乗組員の戦没者名簿の前に立って、「小学校の時の担任の先生の名前が、ここにあったワ!」と、指をさしながら、 「その背景」を語ってくれたのは、今回の「研修旅行の乗組員」でもある、弊社の会長だった。まぁ、私の親父としての関係性もあるわけだ。
期待をして訪れた大和ミュージアムではなかったのだけれど、「モノ造り」としての戦艦大和。その背後に潜む「複雑怪奇な背景」 をもつ戦艦大和。いやぁ、今という時代に戦艦大和をどうとらえるのか・・・・・。そんな問題意識が芽生えたことは確かだ。 それなりに良かった。
今回の研修旅行は、大阪(地下鉄小路駅)→閑谷学校→錦帯橋→厳島神社→大和ミュージアム→大阪(地下鉄小路駅)という行程で、 日曜日の早朝、バス一台に社員や大工や協力業者の面々53名と、ビールや酎ハイが十ケースほどに、焼酎やおつまみやその他諸々を混載して、 出発する。
二日間のバス旅行で、何リッターのガソリンが消費され、それが、原油価格の高騰で、幾らほどの金額になるのかと、 ちょっとした興味がわくのだが、研修旅行の乗組員によって、バスの中だけで消費されるアルコール量が、単純計算でも84リッターほどになり、 それが、いったいぜんたい、多いのか、少ないのか、省エネなのか、そうでないのか・・・・・。ちなみに、私のアールコール貢献度は低い。 アルコールに関しては省エネな体の造りだと、付け加えておこう。
岡山県にある、閑谷学校
(しずたにがっこう)に到着する。個人的には2度目なのだけれど、様々な職種の人たちと一緒に、「建築」
を見ながらワイワイガヤガヤ言うのが楽しい事だな。と知る。
屋根屋の瓦寅さん曰く。瓦の下に水抜き用の小さな丸い陶管が何カ所も埋め込まれていて、 軒先の鼻隠しが腐るのを防いでいるのだと。
皆に、解説をしてくれる。
山本左官さんが携帯で写真を撮りながら言うのには、懸魚 や蛙股が漆喰で出来ていて、
「型板を大工に造ってもらい、それに縄を撒いて、3、4ヶ月ぐらいかけて、じっくりと造っていくのやでぇ・・・」と。
大工さん達が集まって、床下を覗きながら何やら談義をしていた。「この床板、どうやって、留めているのやろ。」「この木の継ぎ手の位置、
これで、ええんやろかぁ。オレやったら悩むとこやな」 ・・・・と。
海平造園さんの若い職人さんSくんが石垣と小高い火除け山との細い道を歩きながら、 携帯写真を連写し、戻ってきてから、「格好ええなぁ」
を連発する。
材木屋の伸ちゃんが部屋に林立する丸太をじっくりっと眺めていた・・・・・。「構造補強せぇ!といわれたらこの建物、 台無しになるんとちゃう。」と、大工さんと話していた・・・・。
現場監督や設計部が一緒になったり、 ひとりになったりしながら、あちらこちらを眺めて、
ワイワイガヤガヤ・・・。
この学校は、江戸時代に造られたという。いわゆる、「ええ仕事」をしてあるのだが、そんな、細部よりも、全体的なムードが心地良い。
自然環境と一体となるような構想。きっと、私たちのDNAの中にもそんな発想力が、受け継がれているはずなのだが・・・・・・。
投稿者 木村貴一 : 2008年06月08日 19:52 « 古式に則った左回りの旋回 | メイン | 伝統的な »