2015年03月08日
「まちのありよう」
前日から降り続いた雨がやんで、どんよりとした日曜日の朝だったが、自転車に乗って司馬遼太郎記念館の前を通ると、植木鉢にたくさんの菜の花が黄色く咲いていて、どんよりたした気持ちに、春がやってくる前触れのような明るさが、残像のように心に残って、ひとりの有名な作家の好きな花に、共感したのだろうが、このあたりの通り沿いのあちらこちらに植木鉢を置いて、黄色く菜の花が咲いている、そんな「まちのありよう」が、ちょっとエエなぁ・・・とおもう。
先週は札幌に断熱住宅を体感する視察に行って、毎年の恒例になってきたのだけれど、昨年から社員を一緒に連れて、見学と慰安がてら旅することにしていて、今年は、設計のタナカくんと現場監督のトクモトくんの三人で出張した。何十年ぶりかの雪の少ない札幌のまちだそうで、例年は雪で、アスファルトの色を見ることがなかったし、車道と歩道との間にどっさりと雪が積もってあるのに、今年はほとんど雪がなく、冬のすすきのは、酔いもあるのだが、足下の雪に滑らないように、寒いなぁと言いながら注意して歩くのが風情があってええのだと、雪が「まちのありよう」をつくっていたのだと、あらためてそうおもった…。
札幌の住宅街のなかの道に入ると、雪はいっぱいで、新しい住宅はフラットルーフが多く、断熱の玄関建具になっているので、風除室はないが、古い住宅は勾配屋根と風除室の組み合わせが多く、それに門や塀もあまりないのが、独特のまちの雰囲気で、それは大阪の「まちのありよう」と全く違って、特に木村工務店がある生野区は長屋が多いまちで、ひとがギュギュと寄り集まって住んでる感が強く、ゴミゴミしているともいえるわけで、それに冬を重きにおいてつくる札幌の住宅と春や秋の心地良さや夏の暑さを気にかけてつくる大阪の住宅との違いを感じると、気候風土が「まちのありよう」をつくるのだと、あらためて感じたりする。
居心地の良さを建築的に表現するために、天井の高さを高くしたり低くしたり、自然素材の素材感を生かしたり、開口部をさまざまにディテールしたりするのだけれど、札幌の冬の住宅を4年連続で体感してみると、居心地の良い暖かさの「質」に拘っている事に気づくわけで、同じ暖かさでも、より心地良い暖かさが存在する事に気づかされて、ピーエスという温水暖房の工場に見学に行くと、30度以下の低温で24時間暖房することによる室内環境の心地良さを体験すると、凄いなぁとおもうわけで、それは大阪で、心地良い風が通り抜ける居心地の良い部屋をつくりたいとおもうメンタリティーと基本的には同じなんだろう。
居心地の良い温熱環境をつくるためには、断熱材をきっちり入れて、隙間風のない家をつくる事が基本だというのが、当たり前の時代になってきて、そのうえに、どのレベルの断熱が必要なのかとか、どんな隙間のレベルで良いのかとか、どんな断熱材を使うのか良いのか、どんな暖房設備器具が良いのかが問われていて、大阪では、梅雨時のじめじめした感じや、夏の蒸し暑さへの対策の問題もあり、居心地の良い冬の温熱環境をつくるための丁度良い断熱と隙間レベルの模索と、居心地の良い夏のための日射遮蔽の模索が、まだまだ続くのだとおもう…。
「まちのえんがわ」も4年目に入り、生野区との関わりも徐々に増えてきて、生野区の「まちのありよう」が、どのようであればエエのかと一緒に考える機会だったりするわけで、長屋と町工場(まちこうば)が、「まちのありよう」を形成してきた事にあらためて気付かされて、この3月14日の土曜日は、「まちのえんがわ」ワークショップとして、はじめての町工場ツアーを開催することになって、そういえば、北海道に断熱住宅を見に行くようになったのと、「まちのえんがわ」のワークショップの開始が同じ年の2月で、潜在意識のとこかで、札幌と大阪の「まちのありよう」を比べていたのかもしれない。
そうそう、本日は、輸入壁紙ワークショップで、初めて女性だけの参加者になったワークショップでもあって、輸入壁紙でエコバックやブックカバーを作ったりコーヒーカップを巻くカバーをスリーブというそうなんだけど、そのスリーブに壁紙を貼り付けてオリジナルデザインにしたりし、持ち込みのお盆などに壁紙を貼ったりもして、それに壁紙を貼る施工体験もあり、「ものづくりの好きな層」というのが、これからどんどん増えてくれば良いとおもうのだけれど、それにしても、そういうものづくりが好きだったり、関心を持っているひとたちと一緒に、ワークショップや家造りが出来る事を願うわけで、それに、そんなひとたちと一緒に、「まちのありよう」にも関わっていけるのも、大切な事だとおもえるようになったのは、ここ最近のコトだなぁ…。
投稿者 木村貴一 : 2015年03月08日 23:59 « オモシロイ現象 | メイン | カルチャーショック3 »