2016年10月09日

木村家本舗と家と加工場

2010年から10月の連休は、木村家本舗というオープンホームなイベントを催す休日になっていたが、昨年と今年と2年連続で、中止する事になった。時々、かつて木村家本舗にお越しになった方々から、今年はどうなっているのぉ?やらないのぉ!残念。なんていう、有り難い励ましのようなおコトバを頂戴し、その度に、長男家族と同居中で、それで、両親が住んでいた母屋に移り住むために、その建屋を減築工事のリフォーム中で、それが、うちの大工さんの空いた時を都合付けて工事をしているので、どうも進捗状況が悪くて悪くて、まだまだ時間がかかりそうなんです・・・・と。

そもそもは、「私」たちが実際に暮らす家のライフスタイルを10月の気候の良い3日間だけシェアーするコトで、一緒に飲んだり食べたりしながらコミュニケーションをし、3日間だけのコミュニティーをつくろうというオープンホームなイベント事が木村家本舗というタイトルで、あくまで、オープン「ハウス」でなく、実際の暮らしに拘る、木村家のライフスタイルの共有としての「ホーム」が、大切なテーマだった。

木村家本舗が始まってから数年の間に、庭を隔てて住んでいた父も母も他界した。そういえば、期間中は、夜遅くまで続く人々のざわめきを暖かく見守ってくれていたものだったが、その入れ替わりのように、長男が家に戻ってきて、福島県の女性と結婚し、男の子を出産して、世代交代が始まり、木村家のライフスタイルが、大きく変化し始めた。

庭に面していた祖父や祖母が暮らしていた離れとしての1階の和室や物置、私の妹や弟が暮らしていたその2階の部屋は、空き部屋になって十年以上経過していたし、その庭を中心に囲まれていた母屋の1階にあった、リビングダイニングや座敷、応接間、表玄関は、人の出入りがなくなり、その2階にあった私の両親の寝室や物置や和室も空き部屋と化して1年以上経過していた。

その同じ庭に面して、木村家本舗としてオープンホームしていた「私」たちのハウスを長男家族に譲り、私達夫婦は母屋に移り住むという構想を有り難くも長男の奥さんが受け入れてくれたコトで、改めてこれからのライフスタイルを再考することになり、私たち夫婦の寝室と次男のための個室の二つだけに部屋数を減らし、代々受け継いでいけるような仏間がある座敷と、以前よりコンパクトでパブリックなLDKが中心の母屋として、プライベートとパブリックが共存し、ランニングコストが少なくて済む、持続可能で省エネな「ハウス」が、新たなライフスタイルを営む「ホーム」となるように、2階を減築し延床面積を大きく減らす構想で計画をして、工事を開始した。

工事を始めて見ると、時折、それなりのお金をかけて、家を小さくするという馬鹿さ加減に、私の「心」は、思い立ったように、阿保ちゃう!と語りかけてきて、何度か工事を中止しようかという衝動にさいなまれる始末で、そのうえ、減築という工事の工法としての大工作業の大変さを目の当たりに見せつけられると、こんな「私」でエエのかと自己嫌悪の台風が何度か発生し通過する数ヶ月が続いていたりするのだった。

木村家本舗の第2回目に木村工務店の「加工場」を使おうと言い出したのは、木村家本舗のプロデューサーを務めてくれていたコトバノイエのカトウさんで、大工が作業する神聖ともいえる加工場を「遊び」に使うのには少々の抵抗があったものの、加工場の利用の構想力とそのトライが、「まちのえんがわ」の加工場でのワークショップ開催の勇気に繋がったわけで、それに、協力会社や職人さんとで年一回催す初午祭を加工場で、手作り感覚たっぷりにもてなすコトを社員や職人さんや協力会社の人たちが面白がるきっかけになったのだとおもう。
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↑ 木村家の減築工事のために、追っ掛け大栓継ぎを神聖な加工場で作業する大工のダイちゃん

木村家本舗の開催がない10月の連休の今年の加工場。加工場でのワークショップやイベント用として置くスピーカーを、見習大工のモリくんに、実用と課題を兼ねて、合板で作る長岡鉄男さん設計によるスワン型バックロードホーンスピーカーの製作を依頼し、インターネットで図面を探し、フォステックスのスピーカーの段取りやスピーカーコードの半田付けは私が担当して、現場と現場の合間の数日間を使って、合板の寸法を正確に電鋸で切り、鉋で削り合わせながら、綺麗に製作してくれた。

↓ 加工場で作業中のモリ大工
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↑ スピーカーの中は合板が迷路のように複雑な構成になっている。

そのスピーカーが完成したのが、数日前のコトで、そのセッティングも暫定的に完了したので、中途半端でうっとうしい天気で、外出する気になれない、今日の日曜日の昼から、ひとりで珈琲と本を片手にゆっくりと試聴することにした。

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ところが、ほんの1時間ほど聴いていると、突然、長男が友達数人と共に機材を持って加工場に乱入し占拠されてしまった・・・・。



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木村家本舗の遺伝子が何となく加工場に残っていたのかもしれない。偶然にもクローズドな木村家本舗的状態となった連休初日の加工場の出来事で、若い人たちに追い出されながらも、古いライフスタイルが継承されて、新たな方向に編集されていく姿に接することは、そんなのが嬉しく感じる歳にもなってきて、若い人たちが、さまざまなライフスタイルを楽しむために、大工さんや工務店の技術と知識が役立ったり、家や加工場などのスペースが役立ったりするのなら、それはそれでエエなぁ・・・と感じた日曜日の昼下がりだった。

投稿者 木村貴一 : 2016年10月09日 23:26 « トークという戦場 | メイン | ライフスタイル »


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