2011年11月13日

ヤネメシ

屋根の上で、食事をする宴を「ヤネメシ」と名付けたのは、建築家のヤベタツヤさんだったのかどうか、それは定かでないが、建築家のイシイリョウヘイさんから、その「ヤネメシ」のお誘いがあった。石井修さん設計による、「回帰草庵」という名建築があって、その草屋根の上に、タープを張って、宴を催すというのだった。

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この草屋根の下に、あの超有名なリビングダイニングがある。↓ 正確には、そのリビングは、上の写真の右下の方角の写っていない屋根の下にあるのだけれど・・・・。
DSC03992DSC03955建築されてから35年ほどが経過し、ほとんど、山と一体化されて、どこからが山で、どこからが屋根なのか、全く判別できない状況の「草屋根」。上の写真の天窓の下には、2世帯住居になっている、子供世帯のキッチンがあって、3寸勾配の屋根に、手作りしたベンチをかけて、テーブルをしつらえて、炭火で串焼きをするという・・・。

皆で、串にさされた、焼鳥や、椎茸や、肉などを、ワイワイと食べるのだと思っていた。いや、フツウは、そう思うでしょ。それが、全く、違った。イシイリョウヘイさんは、鍋奉行ならぬ「串奉行」として、炭火の前に君臨するのだった。そのまわりをお客さんが、丁重に取り囲む。そして、もはや暴君のごとき様相で、誰ひとりにも、串を触らせることなく、ひたすら串を焼き続けて、一本ずつ、お客さんに、丁寧に、配膳するのだった。

午後1時過ぎから、日が暮れた午後6時過ぎまで、お客さんに一本の串も触らせることなく、まるで、私たちは、イシイリョウヘイパークで飼い慣らされた動物のごとく、ひたすら与えられた、串を食べるのだった。オーダーストップを発するか、ネタがなくなるまで、延々続くような感覚。ところが、それが、めちゃくちゃに美味い。そして、楽しい。

何というのか、それは、建築設計の感覚で、串焼きを設計し施工しているような雰囲気。まず、建築でも、一番大切なのは、「素材」なのだ。と。それで、ネタには、とにかく拘る。あちらこちらから、良質のネタをセレクトし、集めてきたのだという・・・。串も自ら、一本ずつ串を刺し、その串の刺し方にも拘っているような感じ・・・。「炭」の素材にもこだわりの雰囲気が漂い、見るからに、上等そうな、細長い炭。

「私」の友人の鰻屋のタケウチくんが、「串刺し3年焼き一生」という諺を教えてくれたのだが、まさしく、その「焼き」を一本ずつ丁寧に、しかも、6時間ほどの間、まったくもって、集中力をきらすコトなく、火加減と、具材の焼き加減と調味料を全く独りで調整し続けるのだった。その集中力は流石に設計のプロ。きっと、図面も、こんな集中力を発揮しながら書き続けるのでしょうね・・・・・。

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串の出し方の順番や下ごしらえと準備も、それは、まるで、見るからに、設計図のような雰囲気で、用意周到に、準備されているのであって、客人は、カトウさん夫妻、写真家のタダユウコさん、施主のシオザワさん、石井良平事務所のナガエさん、建築家不動産を主催するクヤマさん夫妻、私たち夫婦にイシイリョウヘイ夫妻。そうそう、そういえば、日もすっかり暮れてから、grafのオーナーのハットリさんも、到着したのでした。

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それにしても、これだけの人間をひとりで、串だけでなく、ワインを開けたりしながら、軽やかに「もてなす」「姿」に、そして、今日のこの日までの下準備の大変さを想像してみても、それにそれに、この草屋根という、気付いてみると、圧倒的な存在感のある「場」、このイシイリョウヘイワールドには、教えられるものがあったね・・・・。
とっても「感謝」です。

PS
草屋根だけでなく、独特の雰囲気を醸し出す、薄暗い、リビングダイニングの素晴らしさをあらためて、体験する。これで、何度目かだが、毎回、あらたな発見がある。石井修さんが好んで座っていたというコルビジェの椅子が、未だにその位置にあって、今日はお留守で、どこかに出かけています・・・。なんていう雰囲気で、まだまだ故人の「気」が宿っていた・・・。「合掌」。
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↑ それにしても、このコーナーの使い方の、この素晴らしさ。
↓上の写真の対面にある丸テーブルの角からの眺め。
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暖炉の「火」の素晴らしさも再体験する。うちにある「薪ストーブ」とは、また、ひと味も、ふた味違う「暖炉」の素晴らしさ。それは、「焚き火」が、家の中でできる感覚であり、暖炉からの、煙の「におい」と、「火」の燃える形の美しさに、魅了させられた。

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投稿者 木村貴一 : 2011年11月13日 23:54 « ヒューマンウエア | メイン | 「住宅相談会」と「まちの縁がわ」 »


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