2013年11月03日

JAZZ的

雨が降り出しそうで、降り出さない、どんよりとした曇り空の日曜日。お昼になって、お腹もすいてなく、ランチを食べたい気分でもなく、で、珈琲を入れて、なんとなくソファーに腰掛けると、JAZZを聴きたい気分に、突然、襲われる・・・。

20代や30代の頃は、こんな気分に襲われた日曜日のお昼は、ひとりで、天王寺のJAZZ喫茶「ムゲン」に行くことが多かった。たまに天王寺の「トップシンバル」とかミナミの「やかた」とか。でも、もうそんな、黙って、喋らず、静かに、音楽を聴くお店など、壊滅状態。ま、スタバで、人の流れでも見ながら、パソコンするぐらいが、ひとりで行ける喫茶店で、誰もしゃべらないJAZZ喫茶が、また復活して欲しいとおもうのだけれど、そんなこんなで、しかたなく、自分の家で、オーディオを楽しめるようにしたのだな。と、10年前のリフォームの心境を、今頃、思い出した。

JAZZを聴きたいと思った瞬間に浮かんだのが、コルトレーンの「ole coltrane」で、それは、奥方の知り合いの某大手保険会社の若い男性社員が、うちのこのオーディオのある居間に来て、並んでいるルジャケットを見ながら、コルトレーンのファンなんです。あっ、まだ、この「ole coltrane」聴いたことがないです。というので、かけてあげたわ。という奥方のコトバが、どこか耳の奥に残っていて、今の20代でもコルトレーンのファンがいるのだな。とそうおもったその印象が残っていたからだとおもう。

エルビンジョーンズの呪術的にさえ聞こえるシンバルと砂をぶっかけるような、波がおしよせるような、マッコイタイナーのピアノからうまれるリズムが、いつ聴いても瞑想的でエエなぁとおもう。朝、箒で掃除をしていると、たまにエルビンジョーンズのシンバルやブラシの音を思い出すぐらい、体のどこかに染みついている。そのリズムの中からブワーと登場するコルトレーンが心にぐっと来て、エリックドルフィーのフルートの息づかいと音色に不意をつかれたようにあっとおもい、フレディーハーバードのフレッシュなトランペットにも好感を抱き、へぇー、ダブルベースなんや!とじわーと驚く。なんていうのが、JAZZ的評論なのだろうが、とにかく、「私」のマイフェバリットシングスのひとつ。

静かに吹くドルフィーを聴いているうちに、激しいエリックドルフィーも聴きたくなってきて、それで、ドルフィーのリーダアルバムにしようかと一瞬だけちょっと迷ったが、コルトレーンのもとで吹くドルフィーに対して、ミンガスのもとで吹いているドルフィーを選択することにした。

チャールズミンガスの「プレゼンスミンガス」を初めて聴いたのが、大学生の頃に偶然の巡り合わせで訪れた山梨県の塩山にある山小屋で、そこで、これが、勿論、レコードで掛かっていた。これを聴くと、いつも、その頃の出来事を思い出すのだけれど、それにしても、ミンガスが観客に向かって、今日は拍手はいらないので、グラスの音もたてないように静かに聴いて下さい。みたいなアナウンスがあって、そんなのを含めて、独特の泥臭いムードが漂う好きなアルバム。ま、でも、しょっちゅう聴く気はしないけどね。

ミンガスが、最後に、静かに聴いて下さってありがとう。とかなんとか言いながら紹介する最後の曲のタイトルが「汝の母、もしフロイトの妻なりせば」で、このタイトルに、今までは、オモロイタイトルぐらいのイメージしかなかったが、今日は、母の事を思い出してしまった。2年ほど前に母が突然失語症になり、それから認知症がすすみだして、先日、病院に行くと、暫くの間、「私」の事が息子か誰なのか認知しなくなっていて、10分ほどしてから、ようやく思い出してきた雰囲気で・・・・。自分自身の「不安」「ストレス」「老い」というものを深く深く考えさせられた瞬間だった。


それで、やっぱり次の曲は、エリックドルフィーのリーダーアルバムの「out to lunch!」を聴くことにする。ドルフィーの事は脇において、ボビーハッチャーソンのヴァイブが妙に怪しいムードで好きなのだけれど、ドラムのトニーウィリアムスにも心惹かれたりする。コルトレーンとやっていた、エルビンジョーンズと全く違う、なんというのか微分積分するかのようなドラムで、マイルスの「フォー&モア-」でのトニーのドラムを聴いた時などは、仕事中でも四六時中、頭の中で、あのドラムが鳴り続けている時があったぐらい。

そうそう、ブルーノートの録音で、ジャケットデザインもカッコエエのだけれど、レコーディングエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーによる録音が独特の空気感があって、面白いとおもう。レコーディングエンジニアによって、「音」がこんなに違うのかと興味を持つきっかけになった人でもある。前出の二つのアルバムに比べると、あっ、これ、ヴァン・ゲルダーぽい音やねって、おもって、ジャケットのクレジットを確かめてみるという動作を久しぶりにやってみた。ま、何よりも、久しぶりにこのアルバムを聴いて、やっぱりエエわ。とおもう「私」。

トニーウィリアムスのドラムを聴きたくなってきたので、「ライフタイム」でもエエなのだろうが、やっぱりマイルスの演奏による「ネフェルティティ」にした。恥ずかしながらのマイルスファンなのだけれど、若い頃は、まったく、このアルバムの良さを理解できずにいて、40歳を過ぎて、いや、50歳になってからようやく好きになって、よく聴くようになり、電車の中でも、楽しみで聴いたりする。このアルバムのような、「ものづくり」のスタッフや職人さんとの関係性による工務店的建築を造ってみたいものだなぁ・・・。

3時間近く、黙って、座って、聴き続けると、流石に集中力もきれてきて、お昼ご飯を食べていなかった事を思い出して、急に、お腹が空いてきたりして・・・・。それにしても、2枚目に掛けたチャールズミンガスが主催するミンガスジャズワークショップに、憧れのようなものが、昔からあって、それが、「まちのえんがわ」ワークショップになったりするわけで、マイルスが常に変化し続けながら、作り続けるアルバムのコンセプトとか技術とかは音楽のプロでないので、イマイチ奥底まで把握できないが、「人材」のチョイスとその「関係性」などは、「工務店的ものづくり」にとって、大いに参考になったりするわけで、「JAZZ的」でありたいとおもったりするのだ・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2013年11月03日 23:59 « 木村家会議 | メイン | 「まちのえんがわ」一日店長 »


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