2006年06月11日
五島列島の旅(その7)完
野崎島にいる時から写真を撮ることに嫌気がさしてきた。写真を撮っている間に 何か大切なものを逃しているような気がしてきたのだ。いまここの何かを逃しているのではないのかと思えてきた。そんなわけで、 なんだか、 写真を撮るのがめんどくさくなってきたのだ。きっと、このブログに旅の記録を載せようとする気持ちが、何とか、 写真を撮らせていたのだと思う。
旅はまだ続くのだが、教会を見て、買い物をして、温泉に入って、キャンプして、次の日また、教会を見て・・・と、写真も相変わらず、 ステンドグラスとリブボールト天井とレンガと光だ。読んでくれている人もそろそろ、飽きてきたことだと思うので、 この旅のブログもこの辺りで終えようと思う。
野崎島から冷水教会に向かった。 教会のまわりの植栽の手入れしていた信者の方が話しかけてきた。その話が興味深かった。冷水教会は木造の古い教会だった。 20年ほど前にコンクリートで教会を建て替えることがひとつのブームだったらしい。 この教会もコンクリートに建て替えようかということになったが、周囲の反対を押し切って、 この木造の教会に手を入れて修復して使うことにした。それが、今、この時期になって、修復したことを信者の方々が大変感謝し、 誇りに思っているという話だ。
別にコンクリートの教会が悪いわけではないと思うし、素敵なコンクリートの教会もいっぱいあって、憧れたりもするのだ。ただ、 こうやって何件かの古い教会を見て回ると、古いものに手を入れて修復して使い続けるという、その行為自体に潜むエネルギーによって、 教会の中に不思議な雰囲気が醸し出されるのを感じたりすると、その目に見えない力って、それはいったい何なのだろうかなぁ・・・ と思えてくる。
温泉に入って、キャンプしてという話はもうやめておくことにする。 キャンプをした海岸に十字架が立っていた。関西の海岸にこんなのがあると、少し異様な雰囲気に感じると思うのだが、 ここでは何の違和感も感じられないあたりが、五島列島の空気だなぁ・・・と海岸縁に座って眺めた。
翌日の早朝から福見教会に行った。
朝日を浴びたステンドグラスが虹のように光を放っていた。
土井の浦教会は木造の古い教会を買い受けて建てたらしい。それを最近修復したようだ。リニューアルオープンというような雰囲気で、
空気が綺麗に思えた。そんなことが影響したのだろうか、建物の寸法を知りたいと思った。建築屋さんの職業病かなぁ。
鞄に忍ばせたあったメジャーを取り出して息子に端を持たせて寸法をあたった。しばらくして、面白く思ったのか、私からメジャーを取り上げて、
寸法をあたりながら教会をぐるぐる回り出した。そんな子供が持つ、面白そうなことを遊びに替えてしまう力を見て、
忘れてしまっていた何かを感じた。
水ノ浦教会は白くて明るくてかわいらしい教会だった。
内部に入ると椿の花のモチーフがあった。
そうだ、ここは椿の島なんだなぁ。今まで見たステンドグラスも椿がモチーフなんだなぁ。
と考えながら昨日訪れた津和崎灯台からの景色を思い浮かべた。
旧鯛ノ浦教会のレンガは長崎の被爆したレンガを使用して建てたという。
レンガを見ながら「戦争と平和」を想像してみたら、
ジョンレノンのイマジンのフレーズが浮かんできた。
中は教会としては使わずに、図書館として利用しているらしい、
もったいないなぁ・・・・。
旅の締めくくりは、広場でのサッカーとキャッチボールだった。広場のベンチで横になると、
気がつけば30分ほどイビキをかいて寝ていたらしい・・・・。広場の隣に海があった。女子高生の黄色い歓声に誘われて、
私たちも足を海に浸けてみることにした。足の裏に伝わる綺麗な砂の感触と皮膚に伝わる海水の感触で、最後になってようやく、
身体が五島の海にきたのだと実感したと思う。
五島列島の旅はこれで終わるのだが、奥方の今回の旅の密やかな楽しみは佐世保バーガーを食べることだったらしい。フェリーの中で、
どの店に行くか大騒ぎをしていた。そんなわけで、フェリーで佐世保に舞い戻ると、米軍基地の近くにある「ひかり」
というハンバーガー屋さんに寄ることにした。もうすでに、午後7時近くだった。えー、なんとなんと、行列が出来ているではないか、
ちょっとした、カルチャーショックだった。奥方は並んで食べるという。流石に、沢山の教会を回ったおかげなのだろうか、素直に「イエス」
と答える私がそこに居た。1時間以上も待ってようやく食べることが出来た佐世保バーガーは、もはやファーストフードを通り越して、
スローフードだなぁ・・・・と米軍基地の前のベンチに座って食べおえた。(おわり)
投稿者 木村貴一 : 2006年06月11日 23:55 « ちゃんとした | メイン | 五島列島の旅(その6-1) »