2006年08月27日
地下足袋(北海道の旅その3)
奈良の若草山の前の土産物屋さんを改修して、アンテリーベという貸衣装屋さんにする工事をしている。
設計はカフェさんだ。え、そんな所で、なんで、
貸衣装なのかぁ・・・と。確かに不思議に思う。観光客が行き交う通りだ。この店の裏にヒルトップテラス奈良というチャペルがあって、
春日大社の裏だということも相まって、ほとんど一年中、結婚式の予約で埋まっているらしい・・・・・。
それにしても、奈良のこの若草山のあたりは、少々寂れている。この光景は夏休みの平日だ。観光客が、ごくたまに通るだけ。
鹿の方が圧倒的に多い。木陰で沢山の鹿が涼しそうに休んでいた。
その工事現場で、タイルを貼る若い職人さんが、仕事をしていた。話をしてみると、「勉強でけへんからこの仕事してるねん。」
と謙遜して語った。「僕から見ればカッコエエと思うでぇ。」と私。「そんなん、誰にも言ってもらたことあれへんわ。」と、「誇り持って、
仕事しいやぁ・・・」と。そんな会話をひとしきりした。ふと見ると、観光客の西洋人の男性が、立ち止まって、仕事の様子を眺めていた。
そして、お連れの日本人に何か話しかけると、その日本のおばさんがこちらに来て、「その地下足袋どこで、売ってますかぁ・・・・」と。
若い職人さんは、少し驚いた表情で、でも、ちょっと、誇らしげに、「職人の店に行かんと、あれへんでぇ」と。
「ほらぁ、ガイジンにはカッコエエと思われてるんやぁ。」と私が言うと、「地下足袋のこと聞かれたのは、初めてやなぁ。」 と照れながら、何だか、ほんと、嬉しそうだった・・・・・・。
若草山を見るのは久しぶりだった。あの緑の丘に登ったのは、小学生の時の事かなぁ。 な~んにもない山だけれど、「駆けだして登りたくなる」 そんな衝動をかき立てる「丘」だった。大阪から奈良公園に向かうと、 奈良の市内に入る高架橋から若草山が見えた時、奈良に来たなぁ・・・、ええなぁ・・・、と思う。
最近、奈良の橿原でリフォームの打ち合わせがあって、何度か奈良に行く機会がある。若草山と同じように、 大阪から橿原に向かう南阪奈道路からの眺めが好きだ。二上山の眺めもええ感じだし、国分のあたりの、ブドウ畑に囲まれた雰囲気も、 ええ雰囲気なのだけれど、葛城山を越えて橿原の盆地が一望出来るあたりが、盆地の中に大和三山がポツリポツリとある雰囲気がなんとも言えず、 ええ雰囲気だと思う。上から眺める大和三山は古代のミステリーの雰囲気が漂う・・・ような気がする。
札幌のモエレ沼公園を見た時、
若草山と大和三山の光景とだぶった。公園であり彫刻であり大地であり・・・。そんな感じだ。大阪にもこんな公園あったらいいのになぁ・・・
と羨ましく思えた。大阪の南港にある、得体の知れない、ちょっと下品で、ちょっとエロチックなゴミ焼却場や、その他・・・・。
モエレ沼のような公園が南港にあれば子供も大人も喜ぶと思うなぁ・・・・。まぁ、ちょっとした、市の財産だなぁ。
釧路湿原を様々な視点から眺めたように、公園全体を上から下から左から右からと様々な角度から眺めることが出来るように、
変化に富んだ景色が創り出されていた。景色を眺め、その景色の地点に足を運び、先ほど立っていた地点を今度は眺めかえす。
それの繰り返しだけれど、どの場所も、絵になる場所だった。そして、眺めるだけでなく、体を動かし、遊べる公園だった。水遊びをしたり、
キャッチボールをしたり、ブランコ、滑り台、シーソー、久しぶりにそんな遊具で遊んだ。ほんの2時間ほどのつもりが、
半日以上楽しむことになった。
かなり歩いた・・・・。「その景色の場所に向かって歩きたい」そんな衝動が常にわき起こる。 そんな公園だった。前日、
急遽行くことにした旭山動物園は
「行動展示」というのがキーワードらしい。従来の「形態展示」から見せ方を工夫をすることによって、今や、全国人気No1の動物園だという。
モエレ沼公園にも旭山動物園と共通する何かがあるような気がした。
旭 山動物園の前後に訪れた、北竜ひまわりの里や美瑛の、
かんのファームという場所も、そして、
釧路湿原も勿論、北海道らしい景色と大地であったけれど、これから先は、旭山動物園と同じような「見せ方の工夫」
がもっともっと必要なんだろうなぁ・・・・・・。そしてそれは「工務店」にもあてはまる事だなぁ・・・・・・・と。
ついでというのも、何だが、残暑お見舞い申し上げます。
投稿者 木村貴一 : 2006年08月27日 16:50 « 木に囲まれて過ごす(北海道の旅その4) | メイン | モシリ(北海道の旅その2) »