2009年05月10日
再起動(北斎と富士とB級グルメその2)
ゴールデンウィークが終わり、ほんの4日ほど、家や会社を留守にしただけなのに、わずか暫くの間に、会社の前の「エゴの木」には、 白い花がいっぱいいっぱい咲き、石鹸のような、さわやかな香りを放つ。
家の庭のクスノキにも、葉っぱがいっぱい生い茂りはじめ、少々驚く。気が付くと、一本のタケノコがぐぅーんと伸びて、 2階の窓の目線の位置まで達していた。この春の4日間に、自然はそれなりの変化をし、「私」は、わたしたちなりの旅をし、漂った・・・・・。
「北斎と富士とB級グルメ」という、旅を「こじつけ」た。それは、ゴールデンウィークのゲームであり、楽しみであり、苦行であり、 休息であり、労働であり、勉強であり、快楽であり、何よりも「遊び」であって、私なりの悦楽でもあった・・・・・。
ただ、それに付き添わさせられた「家族」は、悦楽だったのか、どうだったのか・・・・・。確かに疑問。
奥方は、家の布団をそのまま車に持ち込んで、車での移動中は、ひたすら眠り続ける。そして私は黙々と運転。「B級グルメ」 に到着すると、むくっと起き出して、並んで、待って、食べることを苦痛とせず、高カロリーの食べ物を食べて食べて、 「家に帰ったらダイエットするわー」と叫ぶ。
中学生になった息子は、わけのわからない、はじめての土地で、いきなり、北斎の写真をもたされて、 写真撮影に付き合わさせられるのだった。体を動かすこと、イコール、遊んでいること、と等価な次男とは、大井川の河川敷で、 サッカーのボールをおもいっきりけり合い、キャッチボールをし、スケートボードで滑り、車に持ち込んだ折りたたみ自転車で、走る。 車の中では、寝る。プレステ。DS。ヘッドホーンで音楽。
長男は、いきなり、東京から彼女を連れて帰ってきて、キャンプに行くといって、私のテントなどキャンプ道具を車に積め込んで、 大阪から西に、四国に向かって、旅立った。「わたしたち」は、東に、名古屋に、静岡に、向かって、旅立つ。「それじゃぁ、6日に、お互い、 無事に、会おかぁ!」 と云って、それぞれの旅の無事を祈って別れたのが、5月2日の深夜のことだった・・・・・・。
深夜、ガラガラといえばガラガラだけれど、少々多いめの車の流れと共に、名神高速道路を走り、名古屋に向かう。途中、
新しくできた第二名神を乗り継ぎ、東名阪道路のパーキングエリアで、仮眠する。もちろん、奥方と息子は、家から持ち込んだ布団の上で、
寝息を立てていた。
意外にぐっすり眠り、なぜか5時に目が覚め、PAの便所で、すっきりしてから、おもむろに、第一チェックポイントの名古屋に向かう。
「尾州不二見原」という、こんな光景に出会えるはず・・・・・・・・・・・。
名古屋の中心街のそのあたりに行くと、「富士見橋」というのが、確かにあり、もちろん富士山が見えるわけもなく、 こんな5時台の朝早く、桶を造る、ものづくりの作業風景があるはずもない。もちろん、うろちょろする人もいない。取り敢えず、ここを、 今回の、「私の尾州不二見原」と、勝手に、決める。
それで、息子と奥方をたたき起こすことにする。、まぁ、何とも、迷惑そうな顔・・・・・・。確かに、その気持ちもわかる・・・・・。 それでも、撮影の助手を頼むと、意外にすんなり応じてくれたのは、「しゃぁないなぁ・・・!おとんの、このばかげた遊びに、まぁ、 付き合ったるわー」という、子供ごごろと見た。
奥方は、その一部終始を見ながら、「あほちゃぅー」と、ノーメークの顔で笑い、呆れ、のたまい、でも、「まぁ、しゃあないなぁー!!」 と、見守ることにしてくれた。 以降、だいたい、全ての場所で、こんな雰囲気で、撮影をすることになった。
周辺には、大きなお風呂屋さんがあり、マンションが建ち並び、材木屋さんのようなところもあったのだが、さて、今、ここでは、どんな、 「生きる人々の姿」が、あるのだろうか? そして、その姿を、小さな小さな富士山が見守ってくれているはずなのだ・・・・・・。
一台、黒のレガシーが、私たちの車の数メートル、後ろに停車した。「こんな時間に、こんな場所に、あんなふうに停車してる、あの車、 きっと、同じように、北斎の絵の場所を探している人に違いないわー」と、大阪のおばちゃんらしく推理する奥方だった。
「そやなぁ・・・」と、適当に聞き流しながら、次のチェックポイントを目指す。名古屋高速から名神に戻って、豊橋を目指し、 豊橋城の公園の駐車場の木陰の下に車を止める。
そよ風が車に流れ込み、奥方と息子は、気持ち良さそうに、ひたすら、眠っていた。私は、車の後ろのハッチを開けて、 折りたたみ自転車を取り出し、周辺の朝を巡る。
自転車でゆっくりと、走ると、足早に散歩をする見ず知らずの、おじさんが、「おはようございます」と元気な声をかけてくれた。素直に、 「おはようございます」と返す。なぜか、晴れ晴れして、気持ちエエ。その瞬間、五島列島での旅の光景が蘇り、 ダブる。
この第二チェックポイントの吉田宿では、こんな光景に出会えるはずだった。旅の途中に、 綺麗なお姉さんと富士山を見ながらお話しするのもエエなぁ・・・・とおもう。そんな不二見茶屋を探さなくては・・・・・。
まぁ、でも、これから先の工程も考えてみて、それに家族旅行でもある事だし・・・、とりあえず、ここを、今回の「私の東海道吉田宿」 としようとおもう。助手達は、快眠し、起こしに行っても、自転車が一台だけなので、ここまで来るのにたいへんなのだ。
絵のような手摺りもあることだし、横には、静かに本を読む見知らぬ人が、ひとり。お姉さんが手摺りに寄りかかって居ないのが、 誠にもって、残念なのだけれど、とにかく、ひとりで撮影する。
天気は良いのだけれど、「やはり」富士山は見えない。ところが、暫くして、なんだか富士山の方角が違うような気がしてきた・・・・。 それで、地図で、富士山の方角を睨みながら、撮影したのがこれ。
車に戻ると、それぞれが、代わりばんこに、自転車に乗り、散策に向かう。その小一時間ほど、私は朝寝をする・・・・・。 うっすらと目覚めながら、それぞれが、見た光景と印象を聴くと、不思議にも「ずれ」があり、そのことに、 それぞれの内面で起こるリアリティーというものを感じ・・・、いやいやそんなことより、朝食を探しに、街の中を車で彷徨することに決めた・・ ・・・。
ちくわのヤマサというのが、豊橋が本店だと、インターネットで知る。それで、その住所を見ながら、街の商店街に迷い込でみる。
「文政10年。以来180年、豊橋の地を中心にちくわなどの練り物を製造・販売してきました。 私たちの基本精神は「鉛は金に変わらない」ということ。一見本物に見える金のかたまりも、地金が鉛では決して本物とはいえません。 ちくわを作る場合でも同じ事がいえます。本物の味を作り出すには、原料の選別を始めとして、練り具合や焼き加減の判断、 その時々の気候に合わせた味加減など、職人の技を必要とします。原料、人、技術、全てが本物だからこそ生まれる「旨さ」。 これがヤマサちくわの求めるこだわりの味、伝統の味です。これまでも、そしてこれからも、変わらぬ精神で本物の味を追求し続けます」
と、インターネットに書かれてあり、木村工務店はどうなんだろう・・・と、 店舗の前に立ちながら、おもう。材料、人、技術、全てが本物といえるのだろうか・・・・。「旨い」建築を造っているのだろうか・・・。 と、顧みてみるのも、今の「私」の立場でもあった。
吉田宿のお城のまわりでは、学生達がランニングをし、ガーデニングか何かの緑のイベントがあり、その準備をスタッフがノンビリとし、 暫くしてそのイベントに沢山のおじさんやおばさんが集まって買い物をする。犬を連れて散歩をする人、釣りをする人、 地道の道ばたに座り込んで、話をするおっちゃん達、ベンチで本を読む人・・・・・・・・。そんなふうに生きる人々の姿を、小さな富士山が、 どの方角かで、見守っているはずだった。
国道を使って、浜松を目指す。国道沿いの遊園地に行く右折れの車で渋滞する。海岸沿いの国道に出ると、サーフィンをする人たちの姿。 浜名湖の近くでは、潮干狩りをする人達の姿。天気もよく、何だか、気持ち良さそう。サーフィンも潮干狩りもどちらもやってみたいなぁ・・・ と、自分がするその姿を想像しながらドライブする。
昼食を食べに、「浜松ぎょうざ」を目指した。「浜松の鰻」ではなかった。 B級グルメという言葉を初めて知った。 ご当地グルメともいうらしい・・・・。 インターネットで見て、取り敢えず、 「福みつ」という店の前に到着する。 普通の住宅街の中にポツンとある店だった。四国うどんの状況と似ていた。
数十人の並んでいる人を見て、ビックリし、「私」はめげる。そんな時、急に、元気を出すのが、奥方だった。 果敢にも列に並ぶのであった。一時間近くも待って、餃子にありつく。「私」には、ある種の苦行だなぁ・・・・。
王将の餃子の方がうまい。と息子が言う。私の手作りの餃子も負けてヘン。と奥方が言う。大阪人だから仕方ないか。 白ご飯とお味噌汁とこんがりとした厚い皮の餃子が定食となっていた。そうやって、ご飯とお味噌汁と食べると、なかなか、美味しい。 それにしてもだ、行列の並ぶ店のその魅力とその秘密を知りたいなぁ・・・・・とはおもう。
お腹がいっぱいになると、お風呂にでも入りたい。それは、日本人の遺伝子なのか・・・・。 第三チェックポイントは日坂宿だった。その途中の袋井宿に立ち寄って、お風呂にでも入ろうかと、家族会議をすると、 全員賛成で、 話がまとまる・・・・・。
昼の日中に入る露天風呂も気持ちエエ。奥方がお風呂から上がってくるのを、ロビーのソファーで、息子と待ちながらテレビを見ていると、 ちょうど、競馬の天皇賞が始まった。毛並みの良い馬が、鬣としっぽをなびかせて、疾走する姿は、美しい・・・・。 勝利した騎手の笑顔とガッツポーズを見ながら、この場所で、この人たちと、この天皇賞を見ている、このシチュエーションを不思議におもった。
そうそう、この旅のきっかけになったコトバノイエのKさんのゴールデンウィークのブログには、 全く違う、シチュエーションで、天皇賞を見ている様子が描かれてあった・・・・・。同時性・・・・。
現実の旅行では、一日で、大井川までたどり着いたのに、あぁ、ブログの世界では、
一日で、大井川まで、辿り付けなかった・・・・・。
背後では、社内のコンピューターサーバーの設定が手こずって、いまだに作業が続いている。再起動。再起動。 コンピューターサーバの構築作業も工務店と似たとろがあるよなぁ・・・・。
それはそうと、ゴールデンウィークが開け、何だか新年が始まったような気分で、木村工務店も再起動です。そして、 北斎と富士とB級グルメのブログ上での旅は、まだ続きます・・・・。
投稿者 木村貴一 : 2009年05月10日 21:44 « 保険(北斎と富士とB級グルメの旅その3) | メイン | 北斎と富士とB級グルメ »