2009年07月05日
いのち
早朝、掃除をしていると、大工のSくんやって来て、「社長、あのぉ、花壇に、ネコが・・・」というので、見に行くと、花壇の草花の上に、眠るかののように、横たわっているネコが、亡くなっていた。きっと、夜の間に、何かが、起こったのだ。
ところが、それを、どうしたら良いものかと、暫し、悩む。持ち主を捜すのか・・・・。それよりも、何よりも、そのまま放置しておくわけにもいかない。とにかく、動かさなくては・・・。と、脳は、そのように、指示していたのだが、お恥ずかしいことながら、触る勇気がでなくて、体がそのように動かなかった。
そういう時って、一体、何に恐れているのだろうか・・・。自分でも不思議なのだけれど、触る事に躊躇する「私」がそこにいて、「ためらい」が、体全体に充満していた。そうそう、保健所に電話をしたらエエのだと、思いつく。それで、奥方に電話をして、聞くと、「今日は、土曜日やし、来てくれるかな・・・。早く、何とか、してあげてぇ・・・」という。
と言われてみても、触る勇気が出ず、その辺りを、行ったり来たり、ただただ、うろちょろしている、「私」。そうこうしているうちに、経理担当のK林くんが、出社してきて、ネコの事を言うと、「そうですか、全然気付きませんでした。」と言って、軽やかに、ビニール袋を用意して、花壇に上がって、簡単にネコに触って、「もう硬直しているので、結構、時間がたってるとおもいます。」と言いながら、開いている目を閉じさせながら、丁重に、ネコを袋に入れた・・・・。ただただ、傍らで、唖然としながら、感心して見守る「私」。
暫くして、奥方から電話があって、「会社に行こうとおもうけど、もう、ネコ、何とかしたのぉ? よう、見やんから、会社に行くの、ためらうワー」と言う。それで、K林くんの話をすると、「なに、それ、いやぁ、情けないワー、自分で、でけへんかったん。それにしても、K林くん、凄いワー」と。えー、そこまで、言うかぁー、自分は、見ることもでけへん、って、言ってたやん・・・・・。
その時の、脳というものは、支離滅裂だとおもう。「おくりびと」という映画を見たい。と、そう思った。 近くでネコを飼っている人の事が思い浮かんだ。現在リフォーム工事中の現場で、仮設のネコの家を造った写真を思いだした。昔飼ってた、ミニチュアシュナウザーが亡くなった時に触れた体温を思いだした・・・。
きっと、「死」を扱うっていう事柄には、様々な、何かが、含まれているのだろう・・・・・。
そういえば、数日前には、会社に、文鳥が迷い込んで来た。大騒ぎしながらも、皆に、なつく様子が、なんともカワイかった。誰かが、段ボールの、「巣」を造って、一泊させた。会社の前に、「迷い鳥」の張り紙をすると、次の日、近くの散髪屋さんのお祖母さんが、尋ねてきて、「皆が、かわいがっていた鳥を逃がしてしまって、どうしようかと、心配し、悩んでいたんです。」と・・・・・。無事、飼い主の元に戻る・・・・。
後日、写真に映る、黒い足下の二人が、元気にしているかどうか、散髪屋さんまで、のぞきに行ってきました。元気でしたよ。と。
そうそう、数日前は、何故か、毎年のように、ダイニングに、迷い込んでくる、「青すじアゲハ」が、今年も、やって来た。突然、テーブルの上に現る。なぜ、ここに、毎年、やってくるのだろうかと、本当に不思議におもう。でも、何となく嬉しい。
今年は、テーブルの上で、右向いたり、左向いたり、羽根広げたり、閉じたりと、ポーズを1時間ほどとって、写真撮影を促された。それで、モデルの如く、撮影をしてみる。そして、気が付くと、いつしか、消えて、いなくなった。
このまま、ここで、亡くなるよりは、そのほうが嬉しいともおもう。いつしか、どこかで、亡くなり、そして、いつしか、どこかで、生まれ変わった「青すじアゲハ」は、来年もやって来るのだろうか・・・・・。
投稿者 木村貴一 : 2009年07月05日 22:15 « 鰻 「北斎と富士とB級グルメの旅7」 | メイン | 偶然か悪戯か »