2011年07月03日
「すまいは夏をもってむねとすべし」かぁ・・・・
暑い。密集した都会。それに節電。
猛暑日の午後の2時。大阪市内、戦前に建てられた土壁の長屋を外側断熱をし、次世代省エネ基準という最新の基準を満たしたリフォーム工事のお引き渡しがあり、設備の業者が器具説明に集まって、使用方法などいろいろと説明をする。メインのクーラーは、後日、家電業者が来て、取り付ける予定になっていたので、隠蔽配管が必要だった1階6畳個室のクーラーだけが取り付いた状態でのお引き渡しだった。
広々とした1階LDKと吹き抜けがある部屋に向けて、その西面の個室の引き戸を全開にして、その小さなクーラーだけをかけて、器具説明をする。断熱効果がかなり高いので、窓を閉めて、その小さなクーラーだけで、吹き抜けを含めた部屋を冷やそうとしていたが、8名ほどが、部屋の中に集まって器具説明をしていたので、人間の熱気というか、人間の持つ熱量だけでもかなりの熱量と暑さで、小さなクーラーの冷気の量をかなり上回っている感じがして、なかなか冷えそうになく、汗が流れた・・・。
そんな事にうっすらと気付いて、東西の路地に面した北窓。インナーガレージに面して西日が入らない西窓。庭に面した大開口のリビングの東窓を開けると、西と北から東の開口部に風が流れだして、それに、西面個室のクーラーの冷気も、その風に乗って流れてきた。いやぁ、実に心地良い・・・。
断熱効果の高い家は、クーラーBOXのように、内部のいちど冷えたクーラーの冷気を貯めておく効果が高いのは、察するとおりだが、内部の人間の熱量を貯めておく効果も高いので、完全に冷え切るまでは、窓を開けて、風を通して、内部の熱を放出した方がエエのだろう。もちろんそのために風の流れる窓を設計しておく事が一番大切だが・・・。
高気密高断熱の家が、冬を旨とすべし的で、夏を旨とすべし的家にはどうなんだろうか、というイメージもあったが、断熱材が外部から侵入する熱気に対しての、遮熱効果もあるわけで、この戦前の長屋の断熱改修では、専用の遮熱材は使用していないが、それでも、その日、33度の外気温に対して、2階でも、あの、むっとした熱気は感じられなくて、我慢できる程度の暑さで、むしろ風を考慮した窓から、涼しい風が吹き抜けて、心地良かった。
そんな訳で、夏のクーラー消費を極力減らすためには、南面の窓は日射遮蔽を考慮して、庇が長いとか、葦簀を使っているとか、ゴーヤで遮蔽しているとか、様々な工夫が必要であろうし、東面と西面にも朝と夕方の時間帯を考慮した日射遮蔽と風通しの、バランスと工夫が必要であろう。それに、北面の風の道も考慮しなければならないのだろ。
夏の住まいには、住まい方の工夫が必要だな・・・と、あらためて思う。クーラーを贅沢に使う事が、今までは、お金の問題で、モッタイナイという程度の問題だったが、原子力発電の問題が大きく絡んできたことで、クーラーは使うけれど、クーラーの消費エネルギーを極力減らすために、時間帯によって、開口部の日射遮蔽をこまめに、面倒くさがらずに、調整する工夫が必要になってきたし、それに、全くクーラーを使わないための工夫と我慢がより大きなテーマなのだろう。特に、密集した都会では、建築的な工夫、それをパッシブな建築と呼ぶのだろうが、そういう建築的な装置にお金を費やして、解決していくしか道はなさそう・・・・・。
吉田兼好の「徒然草」の時代背景とは全く違う、新たな「家の作りやうは、夏をむねとすべし」の「ネオ徒然草」がいっぱい出てくるのかね・・・・。そうそう今回は、戦前の長屋を断熱改修工事した「夕焼けの空」なのでした。
投稿者 木村貴一 : 2011年07月03日 23:56 « 端居(はしい)する。 | メイン | 節電技術 »