2010年06月06日
体験して気付くこと。
「何でも見てやろう」 その本の内容はすっかり忘れてしまったが、このタイトルだけは記憶の中に留まった。大阪弁で、いうところの「まず、やってみなはれ・・・」「とにかく、見てみなはれ・・・」が、「旅」のもつ魔力のひとつだとおもう。
そのタイトルから感じるほどの、どん欲さを私は持ち合わせていないものの、インターネットが普及すればするほど、その情報だけで、「わかった」気になりがち。知識と五感による体験がシンクロナイズした時に感じるあの感覚。それを「理解」と呼ぶとするのなら、その感覚の魅力を知ると、体験したら知りたいし、知ったら体験したい。そして、「理解」に辿り着きたい。あの感覚を味わいたい・・・・・。
学生時代には、有り余るほどの贅沢な時間があって、何もしないで過ごす方が圧倒的に多かった。無駄に時間を費やしたともいえるが、確かに、何もしない楽しさを知ると、それはそれで、一種の麻薬的な魅力があって、動き回る事があほらしく思えた。ただ、それも、自分だけのための、ある種の貪欲さだと感じる日がやってきて、それで、その麻薬的な魅力を断ち切って、誰かのため、自分のため、社会のため、その他、何だかんだ、複層的な歯車が、微妙に絡み合って、物事が動き始める・・・・・・。
なんていう、くだりを書いてみたくなる心境って、これ何だろうかね・・・・。
まぁ、そんなわけで、「旅」をする。何でもエエから、兎に角、体験をしたくなるわけ。ゴールデンウィークやお盆やお正月やその他・・・・。それで、体験してみて、初めて気付く事が、あるときにはあり、ないときにはまったくなにもない。
理由はいろいろあるのだけれど、5月3日の朝の8時前に、吉村順三さんが設計した八ヶ岳高原音楽堂の前にいた。一度見てみたいとおもっていた、憧れの建物でもあった。その場所は簡単に見つける事ができず、レストランに行って、尋ね、ようやく辿り着いた。
まず、駐車場からのさりげない八ヶ岳音楽堂と書いた看板とそのアプローチの仕方。そのさりげなさが、カッコ良かった。こういうたぐいの事は、体験してみないとわからない範疇の事なんだろう。きっとかなり考え抜かれてあるのだ・・・・・。
屋根のその美しさは、建築雑誌で見ていて、写真のとおり。なんていう、当たり前の感想になってしまう。、いや、もしくは、写真以上の美しさ・・・・・とか。その屋根の線の美しさは、「樋」がないからこそ、生まれてくる、カッコ良さが、多分に影響している・・・・。
が、よくよく見ているうちに気がついた、正面玄関の屋根の部分だけには、樋がちゃんと、あって、玄関から入る人には、雨があたらないようになっていた。それは、最初からそうだったのか、後からそうなったのかは、知るよしもないが、そういうところに、人間味のあるデザインだなと、ひとりほくそ笑む。それに、その樋の水を落とす落ち口の樋のカットのデザインにシビレる。また、その水が落ちる足下の機能と、さりげないデザイン性にも味わい深いものがあった。
内部には入れないとおもっていたが、偶然にも、早朝のヨガ教室をしていた。こんなところで、ヨガができるのなら、是非、是非、やってみたい。それに少々羨ましい・・・。そのヨガ教室が終わるのを静かに待ち続け、その先生に、許可を得て、内部を拝見する。天窓の美しさ。それに音楽堂というだけでなく教会堂のようなムード。確かに十字架も飾ってあったが、十字架が影響しているだけではなかった。 それに音響効果を考えた、機能美。それが見事なデザインとなっていて・・・・・・・。まぁ、とにかく体験してみないと気付かない事が、わりと沢山あって、例えば、大地と建物が一体となったその関係性とか・・・、などなど、いろいろあるが、とりあえずは、ここらへんにしておこうとおもう・・・・。
そう言えば、その前日に、諏訪の御柱祭を見ながら、見学した藤森照信さん設計による、神長官守矢史料館では、その便所近くにある窓を覗くと、その山側の畑の中に、同じ設計者による高過庵という、ツリーハウスが 見えた。そういう、粋な計らいに、なんだか、ニヤッとさせられる配慮があって面白い。それに、足下廻りの、大地との一体的な関わりをもった設計は、実物を見るまでは、そんな部分に感心させられるとは思っていなかっただけに、体験して良かったな。という仕分けの範疇に・・・・・・。
実は、これが、長ったらしい前置きで、つまり、本日の6月6日(日)と明日6月7日(月)の二日間に渡って、社員と大工さんと協力業者が一緒に研修旅行に行く。それは、とにかく、何でもエエから、一緒の体験を一緒にしてみよう。という旅。これが基本であって、そんな訳だから、その研修内容には拘っているところが、あるようでなく、ないようであるという程度。あっ、コミュニケーションを学ぶ。というのも大切なテーマだね。
そうそう、こだわりがあるとすれば、唯一絶対は、バスに詰め込まれて旅行するのだ。というこだわり。この伝統だけは守り続けられ、かれこれ50年ちかく続く・・・・。バスに拘る理由のひとつは、とにかく、バスの中で、二日間飲み続けたいという御仁が数十名近くいて、これだけは、不思議と先輩から後輩に引き継がれていくのだった。確かに、もっと、引き継がなければならない、技術とか伝統があるはずやろ!と読者からのお叱りやツッコミがあるのかもしれない・・・・・・。
それでは、マズイので、今回の研修は、にんべんに「木」と書いて「休」。人と木の寄り添い方がテーマ。 皆で、飛騨の山で林業をみたり、その他・・・。まぁ、その模様は、ツイッターで随時、ツィートされるかもしれない・・・・。ということで、6日と7日の二日間、会社はお休みを頂戴します。特に、月曜日は電話やメール等の連絡がとれませんが、ご理解頂きますよう、よろしくお願い致します。
投稿者 木村貴一 : 2010年06月06日 05:48 « 日本的なもの。 | メイン | 脳裏 »