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2010年01月31日

日本は何をつくるのか。日本で何をつくるのか。

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カトウセイサクショカンパニー」というセルロイドの万年筆を手づくりする「人」が、弊社が建つ、生野区の小路東に住んでおられ、その住宅兼作業場を、弊社で手がけさせて頂いたのは、もう何十年も前の事で、私が、建築に携わる前後の事らしい。

その「匠」が、つい先日、お亡くなりになられ、その後の家の安全性など、「家を守る」ために、お伺いした。その時、初めて、奥の工房を拝見させて頂く機会を得る。

見た瞬間。おもわず、「カッコエエ・・・・・」と唸った。

まだ、ものづくりの息づかいが、聞こえてきそうだった・・・。職人さんの温もりが、まだまだ宿っていた・・・・・。それで、お願いをして、写真を撮らせて頂く。この作業場だけは、戦前からの長屋のままで、工事中も全く手つかずで、他の誰にも触らせず、自分で、改良を重ねたそうだ。無垢の床の雰囲気。壁の雰囲気。机。椅子。

なんだ、このカッコエエ照明器具の付け方は・・・・。聞くと、最初は水平に真っ直ぐ付いていたのだが、それを、このように改良したそうだ。なんだ、この椅子は・・・・。棚のアングルを使って造ったらしい。なんともいえないテーブルの微妙なカット・・・・。きっと、丹念な作業をしていたに違いない。感じのエエ道具たち。道具ひとつずつに「存在感」があって、その道具の、どの配置にも、「意識」が宿っていた。・・・・・。

リラックスした暖かいムードであるものの、背筋がぴんとした。

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大阪で、日本で、価格の競争に巻き込まれるよりは、海外に出て行くのだ。と言って、この生野区の小路という、大阪の下町にどっぷりと住みながら、海外を目指したのだと聴く。同じような、そんな心持ちだけは、弊社にもあるものの、実際にひとりで造って、ひとりで海外に売り歩いたという、その営業的な行動力と繊細な匠の技を併せ持ったバイタリティーには敬服する。

IMG_0232そういえば、先日、NHKのテレビを見ていると、「日本は何をつくるのか。日本で何をつくるのか」という東芝の液晶テレビのものづくりを題材にした番組がやっていた。私のノートパソコンのキーボードの目の前におかれた、もはや、跡を継ぎ、造る人がいなくなってしまた、カトウセイサクショカンパニー製のセルロイドのボールペンを見ながら、この文章を書いていると、「日本は何をつくるのか。日本で何をつくるのか」という問いかけの重みが、じわじわと伝わってくる・・・・・・。

この土曜日、お餅つきをした。会社の社員の家族と一緒につくお餅。というのが基本スタンスなんだけれど、今まで、設計施工で工事をさせて頂いた、ちいさな子供さんのあるご家族をお招きをした。それに、ついでに、というのもなんなのだが、最近、弊社で取り組んでいる、「グリーンウッドワーク」という活動もご紹介すると、それが、意外にも子供さん達が興味を持って、皆が、楽しんで木を削りだしたのには驚かされた。

手づくりのスプーンやボールや椅子や取っ手やその他・・・・。そんなのを皆と一緒に楽しんで造ってみようかとおもう。ホワイトデーには、社員ひとりずつが、手づくりのスプーンなどを、奥さんや彼女にプレゼントする予定・・・・・かな?

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PS
お餅つきも3年目になり、来年は、また、もう少し、輪を広げる事が出来るかも知れない。お子さんがいるのに、ひょとして、漏れがあった家族があれば、ご一報下さい。それに、そんな事は、関係なく、久しぶりに、木村工務店に遊びに来たい人がいれば、来年は、是非、お立ち寄り下さい。また、ついでにメンテの依頼もどうぞ。そうそう、グリーンウッドワークに興味のある方は、メールでも電話でもお尋ね下さい。

木村工務店は何をつくるのか。木村工務店で何をつくるのか。・・・・・・・なんて。

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2010年01月24日

過程

冬の雲ひとつない青空。いつしか、春がやってくるのだ。と感じさせる、朝の日差し・・。

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この週、雑誌の取材があって、昨年の年末にお引き渡しをした、大阪市内の新築住宅のお宅にお邪魔する。カメラマンや、取材の編集者が到着するほんの数分前、バーチカルブラインドの間から、曇り空の間を縫って差し込んだ突然の朝日。蓄熱暖房器からのまろやかな暖かさと相まって、ほんの一瞬の心地エエ瞬間 。

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キッチンの横に洗面所があって、そこに電動で開閉する天窓があり、冬のどんよりした曇り空の合間から垣間見える、きまぐれな青空を眺めてみる。

DSC03955リビングダイニングの天井に、その洗面所に開閉する内倒しの木製窓があって、夏には、大阪市内に流れる西風が、リビングダイニングを通り抜けて、内倒し窓を通過して、洗面所の天窓から通り抜けていく「予定」。自然という神々が、そんなデザインを受け入れてくれて、そうしてくれるものかどうか?

DSC03986その後、同時に、大阪市内で、もう一軒の取材がある。間口2間、3640幅の新築住宅で、ユニットバスが2階にあって、その湯船に近い窓の向こうが、南面で、リビングの小さな吹き抜けになっていて、その向こうに窓があって、外を眺める事ができる。DSC03989

後で聞くと、道路を隔てて少し向こうに高いマンションがあって、そこから覗かれるのかどうか、心配した施主の方が、マンションまで出向いて、自分の家を眺めさせてもらって、・・・・、大丈夫そうだなぁと、確認し、ブラインドも取り付ける事もなく、月を眺めながら、湯船に浸かっているのだと云う。この吹き抜けにも電動の天窓があって、風が通り向ける「予定」。

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冷蔵庫の上に神棚が鎮座していたり、階段下が、テレビとオーディオスペースで、その前に縁なしの畳があって、炬燵をおいて、座ってテレビを見て、食事もする。その畳は無農薬の本床で、独特の柔らかさがあって、確かに心地良い。

それら全ての事は、お施主さんとのコミュニケーションの「過程」から出来上がってきた事で、設計担当のK本くんの提案もあれば、「私」の提案もあり、施主の提案が大いにあって、それを図面化し、見積としてT桝くんがまとめて、それに、現場では、大工のB處くんやF野くんのカイゼンがあり、それらを現場監督のI尾くんやT田くんが調整作業をし、少々のエッセンスを加えて、出来上がった訳で、そういう、「工務店流のものづくり」には、皆で、こだわる。

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この週始め、奈良の佐保川近くに行く所要があって、通過すると、映画のロケをやっていて、この橋の向こうでは、どうやら、高橋克典さんが演技をしているのだと・・・。ほんの少々テレビにも関わらせてもらった経験もあるが、映画の撮影スタッフや監督には憧れるなぁ・・・。あの現場での「ものづくり」の「過程」とその肌で味会う感覚が羨ましい。

マイケルジャクソンの「This is it」も、叱咤激励と、一生懸命さと、あの愛情とが宿る、その「過程」に拍手した。工務店流のものづくりも、施主の方を含めたものづくりに関わる皆で、エエ「過程」を共有したいものだなぁ・・・・・。

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2010年01月17日

組合せ

寒いというより、冷たい。冬だなぁ・・・・。

この週、雪がちらつく中で、石井修さん設計で、弊社で施工をさせて頂いた、目神山の家22に、学生さんと見学に行く用件があって、久しぶりにお伺いする。

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テーブルに座りながら石井修さんと会話をした事を想い出す。「正直な家」「落ち着き」「うちから」そんな言霊がよみがえる。急な勾配を上がる階段なのに階段を上り下りするのが楽しい。吉村順三さんの軽井沢の山荘のような家を創って下さいと石井さんに依頼した施主の方が、石井さんから聞いた事を伝えてくれる。「川のような階段」なのだ・・・・と。なるほど。

それから、あらためて、石井修流の木組みも眺めてみる。施主の方が、吉村順三さんの家には木組みが見えない空間だけれど、石井さんの空間は民家風の木組みのような気がします・・・・と。なるほど。

若い人たちに聞くと、こういう木組みの方が新鮮に感じるのだ・・・と言う。ソファーに座って、目を細めて、味わって、お茶を飲んでいる3人の女子のくつろいだ姿が、この家の眺望の良さと落ち着きを物語っているのだろう・・・・・・。

後で、学生に感想を聞くと、あるひとりが、真ん中には窓がなく暖炉になっていて、両端にだけ、コーナー状に窓があって、普通は部屋の真ん中が「使う空間」なのだけれど、「部屋の隅」が生きた使える空間になっているのだなとおもいました・・・と。なるほど。

私にとっては、石井修さんとの不思議なご縁と、弊社で施工したことと、見学のご理解をして頂いたお施主さんと、感じの良い大学生さんたち、という組合せがあって、経験できたこと。感謝。

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縁あって、奈良・佐保川にある「夢窓庵」で食事をする。建築的な表現をすれば、女将の企画設計力と料理人の腕がうまく絡みあった、美味しい料理だった。器も生け花も美しく、部屋の雰囲気も丁度良く・・・。それにしても、料理の写真を撮ることなど、めったにない、それに、どうも、食べる前に撮るのが苦手で、しっくりこない。

DSC00620お正月に奥方が、食事の写真を撮るのだと言って、出てくる料理にあわせて撮るのは良いが、肝心のメイン料理の写真を撮り忘れて・・・、息子からツッコミを入れられていた。お互い、きっと、食い意地の方が、断然張っているに違いない。

私にとっては、iPhoneを持った物珍しさと、無窓庵さんとのある不思議なご縁と、料理と器の見た目の美しさと、その味に惹かれた、その組合せがあって、何とか撮影したのだろう・・・・。感謝。

DSC00600 そうそう、そう言えば、今年、最初に、「面白い」と思った光景は、英字新聞の上に乗っている焼き芋の姿。宿泊したホテルに暖炉があって、そこで、焼き芋を焼いてくれていて、それに、白馬のスキー場には西洋人のお客さんが多いことにビックリしたのだけれど、そのホテルにも西洋人の宿泊客が何組もあって、そんな訳で、スキーと、暖炉と、焼き芋を焼いてサービスしてくれた感じの良い年配のおばさんと、焼き芋を食べそうな私たちのような家族と、そこそこの数の西洋人の観光客。この組合せがあって、この光景が成立したのだろう・・・。

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2010年01月10日

始動

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何を受け継ぎ、何を受け継がないのかという「選択」は、繊細で、微妙な問題だな。と、今の政治経済を見ていると、つくづく思うし、「文化」を受け継ぐこともそうだし、「工務店」というものを受け継ぐのもそうだなと思う。

「長~く続いているものが「文化」とも言えるのとちゃう」と、語ったのはうちの長男で、お正月に、家族で、「静かな」会話をしている最中の言霊だった。「全ての動きが静止したかのような、お正月の空気」というものが、好きだ。あの、何となく慌ただしい師走から一転して訪れるお正月の静寂。お正月の「静寂」と「笑い」の組合せの中に、日本文化の奥深い何かを感じる。

そういう空気が、少しずつ薄らいでいくのが少々、寂しい。お正月の静寂が薄らいでいるところから発せられる、テレビの「お笑い」にも食傷気味。世の中の様子は、政治経済文化のすべてがリセットされようとする時期なのか・・。リセットと放棄と選択と集中と新設との間に揺れ動いている問題が、あちらこちらに。「リ」セットの仕方とか、「り」ホームの仕方とか、そういう物事に対する、「考え方」と、その「過程」が問われているのだろう。

1月6日が初出で、地元の清見原神社へ皆で、参拝して、お祓いを受けるのは、木村工務店で、長く続いている行事であって、それはひとつの企業文化といえるのかもしれない。そうそう、今年は、1月1日の朝にも、家族4人で、リニューアルされた神社の拝殿で、お祓いを受けた。幣殿の檜の床に、格子からの朝日が、美しい絵模様となって神秘的に入り込み、神殿に向かって拝む宮司さんの後姿が、朝日を浴びて美しかった。その静寂と共に、「日本」を感じた。

2010年賀それを受け継ぐのが今の時代に相応しいのかどうか、良くわからないが、1月6日の参拝の後、お昼から、職人さんや業者の方々70名ほどが集まって、新年交礼会を催す。「畳」に座って膝をつき合わせるのが、やはり「気分」だ。それにこだわる。もちろん、私は、皆の前で、新年の挨拶をするわけで、この挨拶は、「私」にとっての、新年の楽しみと苦しみの混在した、「気」の入る行事でもある。兎にも角にも、お祓いと笑顔があって、ようやく、木村工務店のエンジンが軽快に動き出すのだった。

IMG_0136 そうそうそう言えば、上の写真はiPhoneで撮影していて、年末の大掃除の日に、社員の携帯を全て、iPhoneに替えたのが、昨年の最後の大きな出来事かもしれない。「ソフトバンクの罠にまんまとはまったな・・・・・」と、足下のスリッパが呟いている・・・・・。 

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夜明け前の静かで美しい時間が通過した。営繕工事をさせて頂いている企業さんへの年始の挨拶廻り。引き渡し前の社内検査。初めての方との顔合わせ。社内定例会議。地鎮祭。お施主さんとの設計打ち合わせ。・・・・・・・と、意識的な「選択」を肝にして、「始動」です。

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2010年01月03日

家で過ごすのが楽しい。

昨年の6月にリフォームをさせて頂いた施主のKさんが、木村工務店にお見えになって、家をリフォームしてから、外に出るより、家で過ごすのが、何よりも楽しい・・・・と、語った。昨年の仕事納めの最後のお客さんでもあった。

ことのほか、年末年始は、家で過ごすのが楽しい・・・・・。家族や両親や義理の父母、兄弟姉妹や甥や姪や・・・・、皆と、新たな気分で、挨拶を交わすのが、何よりも嬉しい。それが、自分にとってのお気に入りの家であれば、なおのことだろう・・・・・。

年末の29、30、31と1、2日があっという間に通り過ぎた。もっともっと家で、ゆっくり過ごしたい。もっともっと家での時間を贅沢に浪費したい・・・。そんな気分だった。うちの休みは、今日3日と明日の4日と5日があるのだから、そのように過ごせる可能性も。

DSC00626それが、なぜか、今、信州の白馬にいて、こんなシチュエーションでブログを書いている。冬の白馬は25年以来のことだ。奥方のコーディネートで、白馬にあるSホテルで宿泊し、久しぶりに、八方でスキーをした。やっぱり、八方はタフなスキー場だな・・。

早朝に大阪を出て、たっぷりの雪道を運転し、すぐに滑走した。それと、運動不足。コブやらターンやら酸欠やらで、スキー酔い?をしてしまい、一時、顔面蒼白。レストランで数十分間、仮眠して、回復するも、息子達は一斉に「としやなぁーー」と捨て台詞を残し、私たち夫婦を置き去りにして、滑りに行ってしまった・・・・。

そうそう、息子が、「お正月、ホテルに泊まれるのぉ、嬉しい。この頃、家か、キャンプか、車か、そんなのばっか。たまには、ちゃんとしたホテルで泊まってみたいわ」と、生意気なことをぬかす。まぁ、確かに。その気持ちもわからないでもない・・・・・。

東京で学生をしている長男が、年末に家に帰ってくると、家族でゆっくり。どころではなく、久しぶりの友達が、入れ替わり出入りして、大晦日の紅白歌合戦の時間帯には、5人のむさ苦しい若者が、家で、年越しそばを食べていて、初詣に、京都や、住吉大社に行くのも、めんどくさい・・・と、弊社で大改修工事をして、初めてのお正月を迎える地元の清見原神社の初詣に、皆で、参拝してくれたことは、大変有り難い事であり。

しかしながら、、木村家では、何十年来、お正月のおとそは8時頃から始まるわけで、その時間帯に、長男は、確かに、座敷のおとその席に座っていたのだけれど、長男の部屋では徹夜麻雀をしている4人の若者が、まだ、残っていて・・・・・と。家族4人が、4人だけで、ゆっくりと、会話をしながら食事をしたのは、今日の夕食が、年末年始で初めての事だった。

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そんな訳で、お読み頂いている皆さん、新年明けましておめでとうございます。新年は、美しい雪の白馬からの発信となりましたが、木村工務店では、「ものづくりの職人さん達と、できるだけ近い位置で建築をつくる小さな工務店」として、「ものづくりの喜びをお施主さんと共有できれば」と願っております。本年も変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い致します。


追伸
そうそう、先ほどの、話。 確かに、時には、「家」でない「旅」の時間が楽しい・・・・。
のだけれど、「家」に帰ったときの奥方のいつもの第一声は、「やっぱり家が一番」だ。

という事で、それぞれのライフスタイを反映した、それぞれにとってのエエ家をつくれるように努力していきたい・・・・。そんな改まった気分で、このブログ上で、皆さんとお会いできることを楽しみにしております。

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