2015年07月12日

山小屋の魅力

土曜日。神奈川県丹沢の塔の岳に至る表尾根の途中にある堀山の家で、その小屋の親父のヒゲさんの一周忌の集まりがあって、そうそう土曜日は設計の打ち合わせにお客さんが二組お見えになる日だったが、設計のタナカくんに、お頼みし、日曜日も住宅相談会に参加出来ず、お越し頂いた二組の方々には申し訳なかったが、30年ちょっとのお互いに大阪と東京神奈川を行き来するわりと深い付き合いがあって、それにそこで出来た友人たちと共に一緒に偲びたかったこともあり、無理矢理のスケジュール調整となった。

朝4時45分に起きて、お風呂に入って、そDSC01552ういえば、前日はイシカワさん設計の茨木の住宅の上棟式があって、変形な建物だったので、ササキ棟梁が手加工で上棟した住宅で、夜8時頃まで、上棟の宴が続いて、会社に帰ると、現場担当のフルカワくんが、きっと日本酒をぐっとあけた勢いが残っていたのだろう、皆で飲みにいきましょぉ!と、上棟式に参加していた、トミマス工事部長や、材木屋の岡房商店のシンチャンやMK電気のカヤくんと私を誘い、で、近くのあそび菜であーだこーだと仕事の話で沸騰するほどの勢いが続いて、ようやく深夜0時近くに終演し、で、現場担当くんは勢いありすぎて、とうとう路上に嗚咽するほどで、それをバケツで何度も水を運んで、深夜の道路掃除をする協力会社の二人の涙ぐましい姿があり、会社3階の和室に現場担当くんを布団を引いて寝かしつけて、家に帰って、深夜に山の用意する「私」の姿もあり、なので、どうしても、朝風呂に入ってから出かけたかった。

山の用事とは別に、少々大きな届け物があったので、5時30分に車ででかけたのだけれど、第二京阪、新名神、伊勢湾岸道、第二東名など、高速道路が良くなってきて、高速走行のストレスが大幅に改善されてきたので、おもいのほか早く着いて、駐車場で1時間以上ゆっくり休憩してから登山を開始する余裕があった。途中に何人かの山小屋の知り合いとすれ違たり、一緒に登ったりしながら、近況を話したりするのが、常連山小屋スタイルな登り方で、確かにだんだん山頂など、どうでも良くなってくるわけで、頂上に行かずそこの山小屋でストップしてしまうのを超常(頂上)現象だぁ! などと、おやじギャクを言うのがちょっとした習わしのようなもので、そんな山の楽しみ方がなんとなく麻薬的だったりする。

途中のベンチで休んでいた70前後のAさんに、久しぶりです、体調はどうですか。と声をかけた。癌で、余命一年と言われて、それからこの尾根を登山するようになって、投薬と共にもうかれこれ6年が経過し、そんな姿を山小屋で会って見聞きしていたのだけれど、登山の途中に会うのは初めてなので、休憩がてら声をかけると、この山を歩くことで、不思議に免疫力がついて、癌が小さくなっていたのですが、また癌が再発してきて、いま新しく開発された薬を実験のように投薬して、それで、また小さくなってきて、でも残念ながら小屋まで行く力がなくなって、それでも毎週のように上がって途中で引き返し、山登りを続けているのです。と、美しい目で、話してくれた。そんなのが、余韻として、「私」のどこかに残りながら、登山を続けたりする…。

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ここ最近は、この場所で、必ず写真を撮影する。ここだけが、地面の土の色が独特に良く、それは、土そのものが良質で、その踏みしめられた土が「三和土(たたき)」のように美しくなっているからなのだろうが、木々の囲まれ具合と、尾根のような橋のような道幅と、土と緑の境界線、なによりも道のゆるやかな曲がり具合。そんな組み合わせが心地よく感じさせるのだろ…。

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山小屋の簡素な鎧貼りの外壁の杉板が、こんな風雨の中でも以外と長持ちするのだなぁ…とか、丸太の芯持ちの建物は足場丸太のような細い柱で造った小屋でもそこそこしっかりしているよなぁ…とか、ダルマ薪ストーブを囲む宴や木々に囲まれたアウトドアーでの夕宴や夜宴や朝のまったりした時間などなど、そんなのが「私」のどこかに知らず知らずに定着して、それを建築的な表現として、どこかに造りたくさせるのだろう…。

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投稿者 木村貴一 : 2015年07月12日 23:59 « 幾久しく | メイン | 左官しごと »


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