2014年06月22日
雨折々
便器に座った前に、24節季72候のカレンダーが貼ってあり、その6月3日に「雨折々思ふことなき早苗かな」という芭蕉の句が書いてあって、なんでも「雨がよく降って、これなら早苗の水の心配は要らないだろう。雨が降れば降ったで百姓は喜んでいるはずだとして、晴天でなければ面白くない「影待」の行事を主催した岱水への心配り。」という解釈らしいが、今朝は、まさしくそんな、しとしとと雨が降る日曜日で、知り合いが、いろいろなイベントを催している日でもあるが、それはそれでエエ感じの雨の日曜日なのだ。
そんなしっとりした雨が降る朝、特別養護老人ホームに入所した、母親の見舞いに行く。認知症になった母親の話題をこんなところで大っぴらに語りたい訳ではないが、「建築」に携わるもののブログとして気付くことを書き留めたい気持ちにさせる、そんな雨折々。で、病院や介護付き老人ホームを転々としながら、特養に入所したが、病院のあの建築空間が醸し出す雰囲気では、患者という感覚から逸脱できないムードがあり、介護付き老人ホームは空間的にも対応も含めてビジネス色が強かった。今度のグループホーム型の特養は、中央にオープンキッチンといくつかのダイニングテーブルとリビングとしてのソファーとテレビがあって、それを取り囲むように9つの個室があり、介護用の事務所が隣接していなければ、テレビに出てくるような9人の若者向けシエアーハウスのようで、そんな空間構成が、現代社会における衣食住とコミュニケーションの問題を表象しているのだろうが、これならひょっとして症状が少しましになるのでは・・・と、淡い期待を抱かせるのも確か。
「衣食住」を喜びと共に日常的にひとりでやり続けられるのが幸せな出来事であり、そのためにも、日常的に繰り返す人や自然とのコミュニケーションが、自分自身に対する気付きを促す大切な機会なのかもしれないと、しとしとと降る雨によって考えさせられて、それはそれとして、それでは、さてさて、これからの高齢化社会に突入しているそれぞれのマイホームは、どんなプランになり、どんなコミュニケーションが求められるのかと、母の姿を見ながら、これまでの母とのコミュニケーションに於ける自分の至らなさに、否応なしに直面させられてしまうのだった・・・・。
本日は住宅相談会があって、うちの畳屋さんの紹介で、若いご夫妻でお見えになったAさんは、産業廃棄物処理の家業を継ぎながら、こんなに沢山捨てられる、それも使えそうな廃材を使って、自室をリフォームした経験があって、今度は、譲り受けた住宅を廃材を使って新築かリフォームしたいという相談だった。産業廃棄物処理屋さんに隣接するオシャレな廃材セレクトショップを想像してみた・・・・・。
小さなお子さんとご夫妻の3人でお見えになったBさんは、奈良で中古住宅が付いた土地を購入し、現在の建物を取り壊して、大手ハウスメーカーに新築プランを頼んだが、予算も含めてオーバーしていて、それにどこかの工務店にも依頼したいとおもっていて、ご夫妻のセンスと合いそうなのが、うちだったそうだ。うちの新築住宅がハウスメーカーより格安で提供できるわけでない事と概算見積までの日数が掛かることをお伝えして、新築のプランと共に、予算も踏まえて、新築とまたひとあじ違う中古住宅を全面的にリフォームする提案もしようかとおもう。
こんな、エエ雨折々の日曜日・・・。
投稿者 木村貴一 : 2014年06月22日 21:49 « プロフェッショナルなワークショップ | メイン | スタイル »