2004年09月08日

自然の力

地震による揺れと台風による風を体験すると、やっぱり家は間取りとかデザインに先立ち、雨風をしのぎ、 地震に強い家づくりを基本にしなければ・・・・と。あらためて考えるようになる。

9月5日(日)の夕方に関西地方を襲った地震は家族と家でくつろいでいる時だった。ぐっらぁ~と緩やかな揺れが起こった、 阪神大震災の時は突き上げるような縦揺れが激しく起こったが、その日の地震には激しさはなかった。それでも、 長く続く横揺れが気持ち悪かった。子供と奥方の様子からも「怖い」という感覚が周囲を取り巻いた。それなりに長く続いたので、 終わったあとも揺れているような錯覚にとられた。ちょうど船から下りて陸上に立った時のような感覚。6回転ほどクルクルと回って、 止まった時の目の前の光景のようだった。

会社の近くで、長屋の解体工事をしていた。まだ途中の段階だった。急に心配になってきた。雨の中、傘をさして自転車に乗った。 次男も一緒に行くという。子供は自転車の荷台に傘をさして座る。地震の後の町の様子、空気には独特なものがある。丁度、 阪神大震災のあの日の朝のことを思い出した。あの日の町に漂った空気は強烈だった。大阪よりも神戸はもっと凄かったのだろう・・・。 3分ほどで、現場に到着すると、近所の人たちが長屋のそれぞれの玄関前に出て口々に「怖かったねぇ・・・」と話し合っていた。 建物は無事で何ともなかったので、ひと安心した。そういえば、阪神大震災の時は家の前で話を出来るような、 そんな余裕のある雰囲気もなかった。もっともっと、凍り付いたような雰囲気だった。 子供と傘をさして自転車の二人乗りをしながら町をぐるっと廻った。子供がぽつりと言った。「怖かったなぁ」と。私も実感だった。

夜中にもう一度地震が揺った。これも長かった。揺れが長く続いたので、寝ていた子供も起きた。朝食の時、子供は寝不足だと言う。 「足下が揺らぐ」というあの独特の「怖さ」が子供をしても寝付かれなくさせたようだった。

9月7日(火)は台風による「風」が凄かった。テレビで見れば山口や広島はかなりの被害があったようだ。 山口から来ている社員の実家の屋根も吹き飛んだらしい。今度は地震の揺れも怖いが風による揺れも怖いのだと教えられた。 同じ揺れでも怖さの質が違う。足下が揺らぎ、地面にのめり込んでいくような怖さと、足下がすくわれ、空に吹っ飛んでいくような怖さの違い。 その違いが建築の構造計算にも反映されているのだと実感した。

長屋のように間口が狭くて奥行きが長いタイプの建物の構造計算では、 地震に対してよりも風圧に対しての基準値をクリアーすることのほうが難しい。と構造の専門家に言われる。いつもは、ふ~ん、そんなもんか、 ちょっと大げさ過ぎるんとちゃう。と半信半疑で無理矢理、自分自信を納得させることが多いのだが、 昨日のような風と風による揺れを肌で感じると「風圧」という「構造計算」にも注意を払う気持ちを喚起させられるのだ。

自然の力をあらためて見つめ直す機会だった。

投稿者 木村貴一 : 2004年09月08日 17:45 « 青すじアゲハ | メイン | デザイン »


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