2006年12月24日

静けさ

10年以上前に、建てさせていただいたワンルームマンションの横で、新築住宅の工事wをすることになった。 そのマンションのオーナは生憎、数年前に亡くなられたのだが、その息子さんとお会する機会があった。そしたら、 亡くなられたその方の記憶がバァーっと、蘇った。

その方は、あの塩爺の自宅がある近くの商店街の一角で、皮膚科をされていた。その病院に一歩入ると、 沢山の人が待合いで待っているのだが、ほんと、「シーン」としていた。誰かがしゃべろうものなら、「お静かにお願いします」 と受付から声がかかった。不思議な雰囲気を持った病院だった。待合いにいる間も姿勢を正さないといけない、そんな雰囲気だった。そして、 誰もが認める名医だった。

診察室に座ると、横のテーブルに何種類かの軟膏等が入った小さなチューブや丸い入れ物が、丁寧に並べてあったのが、凄く印象的だった。 腕の良い大工さんが、ノミやカンナを丁寧に、そして綺麗に並べている様子と似通っていると思った。そして、 そういう人たちには共通する独特の「静けさ」というものがある・・・・・。

ちょっとした縁が重なって、自宅の修繕を頼まれた。奈良の学園前までお伺いすると、何と、宮脇檀さんが関西で唯一(不確かだけど・・・ )造った、混構造の建物だった。感激したなぁ・・・・。それまで、工務店が学ぶべき建築の教科書として、 吉村順三さんの本をよく見ていたこともあり、そんな訳で、必然的な流れで、宮脇さんの掲載された本も繰り返し見ていた。 いろんな偶然が重なって、現物に触れる機会が訪れたのだった。 デッキとデッキの間の隙間の溝が木製建具の戸車の溝になっているという有名なディテールの現物に初めて接したのだった。

その時の私たちの「ミッション」は、その溝にはまっている木製の雨戸を何とか走るように、修復して欲しいということだった。もう既に、 雨戸はボロボロで使える状態ではなく・・・・、閉めることも出来ない状態だったと思う。とにかく、うちの技術者の「トミー」 と一緒にアレコレ考えて、外観を損なわないようにと、フロントサッシュを使って、「硝子の雨戸」に変更したのだった・・・・。その後、 何回かお邪魔をしたのだけれど、イイ空間というのは、な~んとなく、「静けさ」というものが漂っているよなぁ・・・・というのが、 凄く印象的な事だった。

つい先頃、これも、様々な縁が重なって、建築界の大御所の目神山のI邸にお邪魔する機会を得た。その昔、 新建築に掲載された写真を何度も繰り返し見ていたので、初めて訪れたのに、何だか、なじみのある空間に思えた。北向きの空間が、 心地よい暗さと、独特の「静けさ」に満ちていた。窓の外に見える谷の景色が素敵だなぁ・・・というのは、 現物に接しないと分からないことだった。何十年も前に造られたのに、今でも十分新鮮だなぁ・・・。あの当時に、既に、 草屋根の家だったのだからなぁ・・・・。暖炉の薪に着火すると、スパッと燃えたのには、感心したなぁ・・・。

20061221081435464_0002 今日は、昨年に引き続いて、教会でクリスマスを過ごした。仕事がらみもあるのだけれど、 「教会で昔ながらのそして、本当のクリスマスを祝いましょう」という誘い文句が、昨年の体験と相まって、あの、独特の「静けさ」 をもう一度、味わいたいと思った。

RIMG0017今年はキャンドルサービスというものも体験した。以前にブログに書いた、 かなりふざけたキャンドルサービスではなく、 そして、結婚式の、あのキャンドルサービスの雰囲気とも全く違う・・・・。 アカペラの歌声が声のシャワーのように体に降り注ぐ、 やっぱり、独特の「静けさ」に満ちた暖かい雰囲気の時間の流れだった。 一緒に参加した奥方や息子には、 どんな印象を刻んだのだろうかなぁ・・・・・。

奥方は、「ほんもののクリスマスやったなぁ・・・・」と呟いて、静かに眠りについていった・・・・・。

              メリークリスマス!

 

投稿者 木村貴一 : 2006年12月24日 23:43 « 大掃除 | メイン | 構造補強 »


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