2010年03月07日

祈り

雨。いまも、だらだらと降り続いている・・・・。
そうそう、以前、てるてる坊主を見たのは、何時のことだろうか・・・・。

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今週、不順な天候の中で、木造2階建て住宅の上棟があって、天気予報というのは、有り難い訳で、雨が降るよ。と予報していてくれているのであって、それが、今回は、吉野杉の化粧材を使うので、雨に濡れるのは、かなり、まずい。

弊社の会長が、加工場で、その吉野杉を手加工をしている状況を眺め、「あの杉はな、雨に濡れると、なかなか、その「しみ」がとれへん杉やから、雨降ったら、建て方は止めて、上棟式は、ずらさな、あかんで」と、めずらしくも、わざわざ忠告に来てくれた。

そんな事もあって、大工や現場監督や設計者、それにお施主さんとも相談し、雨降ったら、どうしようかと悩む。止めようか?

ところが、日本の伝統文化の中に「上棟式」というのがあって、それは、「ものづくり」という、その「過程」を苦労し、楽しみ、祝福するのであれば、とっても素敵な文化であるとおもうのだけれど、その宴のために、わざわざ施主の皆さんが、食べ物や飲み物を用意して下さるわけで、その時、もし、雨で、木組みが、何にも出来ていなかったら、いわゆる、しゃれになれへん。もし、中止したら、食べ物どうするねん。って事に。

天気予報は、くもりのち雨。建てだして、完成するまでに、途中で雨が降るのが、もっとも辛いパターンで、化粧の杉はだいなしになり、何よりも、上棟式という祝宴はどうなるのぉ。用意した食べ物と飲み物は・・・・。木組みが出来ていないのに、式だけするのも、ちょっと、間抜け。

だいたい、曇りのち雨と言われても、朝曇って、朝のうちに雨が降り出しても、曇りのち雨。朝曇っていて、夜になってから雨になっても、曇りのち雨。今は、雨の降る時間まで、正確に知る事が出来るんでしたっけ・・・・・・。

そんな状況の中で、施主のお父さんが、「とにかく、まぁ、やろうや!」と、言ってはるでぇ・・・。と伝え聞くと、天気予報をあてにするよりも、その勢いとカンを頼りにしたほうが、確かにエエ時もたまにはあって、その時はなぜか、皆が、「ほんだら、やってみよか」と、心底、そうおもった。

その日の朝は、曇り。いや、晴れ間さえも見えている。な~んや、天気予報! ってつぶやく。大工や鳶や現場監督が、早朝から勢いよく会社を飛び出して行くのを見送った。ところが、最近の天気予報は、それなりに当たる。午後3時頃、確かに、雲行きが怪しくなり、雨がポツリポツリ、そのうち本格的に・・・。それで、心配して、現場に電話をする。

「いやぁ、何とか、養生できるまで、ぎりぎり間に合いました・・・・」と、嬉しそうな返事が返ってくると、こちらも嬉しくなってきて、現場に到着し、現場の前に立って、そのラッピングされた木組みを見れば、職人さんたちの皆の努力が感じられて、とっても嬉しい。それに、自らの手で、文字通りの、手加工をし、雨に濡れずに無事上棟できた、大工のF野と通称ワンダーの、その笑顔をがとっても素敵。

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そんな訳で、これは、棟梁F野の日頃の行いが良かったからだ。いやいや、現場監督F川の日頃の行いが良いからだ。いやいや、それとも、設計T中の行いが良いからなのだ。いやいや、何と言っても、木村工務店の「私」の日頃の行いが良いからだ。などと、自分を自慢し合いながら、意気揚々と上棟式に赴くと、足場にひっそりと、てるてる坊主がぶら下げてあった。

達筆で、何とも、心のこもった、てるてる坊主。それをじっくりと眺めると、何よりも何よりも、施主の「祈り」の御陰だったのだなぁと、気付く。今までも、施主の方々の誰もが、上棟の無事を祈ってくれていたのだ。と、今更ながらの感謝です。

投稿者 木村貴一 : 2010年03月07日 21:21 « 共有 | メイン | つぶやく »


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