2014年11月23日
小さなものづくりのパワースポット
「いくのの日」というのを作って、生野区の事を知ってもらおうという試みが今年から始まって、それで、生野区のものづくりの会社が、うちの加工場に集まって、お互い同士の懇親を深めようという、ミーティングが11月の20日にあって、生野区長の挨拶もあり、それなりに盛り上がった懇親会だった。
その生野ものづくり百景と名付けられた会社の何軒かを見学するツアーを15日土曜日に「まちのえんがわ」で主催したのだけれど、そこで、ものづくりの職人さんたちに触れると、当然なのだけれど、大工さんと共通する立ち居振る舞いがあって、それに、それぞれの作業場の持つ、ものづくりの空気感のようなものが、とってもエエわけで、それぞれがそれぞれなりのものづくりの心地良い居場所があって、そんな空間に触れていると、「私」も頑張って、ものづくりしよぉ! という気持ちにさせられて、それがとっても嬉しい出来事だった。
↑ 住所だけでは探しきれないような長屋の一角にある理美容の鋏を製作する「濱口鋏製作所」さんにお邪魔すると、「98%は機械で作業するけど、あとの2%がどうしても手作業でしないとできない鋏の切れ味があって、その2%が大事なんや!」と黄綬褒章を受章している濱口さんが淡々と語りかけてくれる。その手作業をする濱口さんの居場所には、独特のエエムードがあって、自作された目に光が入らない照明器具、自分の指の大きさと形だけに馴染むようになっている金槌の柄、そんな道具やスペースに触れているだけで、まぜか「愛」のようなものまで湧いてくる・・・。
↑ 大阪のお好み焼きやたこ焼きの名店のガス調理器を製作する「旭進ガス器製作所」さんにお邪魔すると、社長の吉村さんが鉄板の厚みや火の回り方など、店によってのこだわりがそれぞれ違って、その店の味を支えるために、いろいろ工夫をしているのだという。鉄板の下に通すガス管の穴をあけたりする作業場の椅子に、独特のものづくりへのこだわりの空気感が漂っていてそんなのがエエ感じだなぁ・・・・。
↑ へら絞りといわれて、鉄板をろくろで回転させながら棒をあてがって、照明器具の笠やバケツなどを作る技術があって、やっぱり長屋の一角にある「吉持製作所」さんにお邪魔したのはこれで2回目で、社長の吉持さんから、へら絞りの作業を体験してみる!、といわれて、作業服に着替えて、へら絞りを3人が体験したのだけれど、一枚の平板が三次元に変形していくその感覚にワクワクさせられた。オリジナル照明のガレージメーカー「flame」さんの照明器具の笠はここで作られているらしい。数年前に大手メーカーからの仕事がなくなった時に、吉持さん自らホームページを製作して技術力のアピールを行ったことで、全国から仕事がくるようになったという・・・・。
↑ やっぱり長屋の中にある「平井木工挽物製作所」さんにお邪魔すると、木の万年筆を製作していて、男の逸品としてLEONやモノマガジンなどの雑誌に紹介されていて、ろくろを回して、一本一本手作りをする、その作業を見せてくれて、こんなひとが、やってきて、注文依頼をしてくれて・・・なんていうエピソードが面白かったが、ま、ここではひかえておこう・・・。
それにしても、生野区のものづくりの歴史は古く、外からは何でもない長屋の中に、工場がある、そんなスタイルがカッコエエわけで、周辺に点在する、ものづくりの職人さんたちが醸し出す空気感が、この辺に、そこわかとなく漂っていて、大阪市内にある木村工務店の加工場で、「木組の手刻みをしよう!」という気分にさせられたりするのは、きっとそんな「風土」に助けられているからだなぁ・・・と、あらためて廻りのものづくりの職人さんたちに敬意を表したい気分になった。ま、そんな感覚からすると、ひょっとして生野区は、小さなものづくりのパワースポットなのかもしれない・・・。
投稿者 木村貴一 : 2014年11月23日 23:59 « 「知りながら害を為すな」とドラッカーさんが云う | メイン | フクシマ »