2011年07月31日

うしろ姿

夏休みに突入している中学校三年生の次男が、朝のランニングに一緒に走ると言う。今まで、一緒に走ったのは3度目か4度目か、それがよく思い出せない。最近、どうも、記憶が曖昧になってきて、着実に老化に向かっている感じ。朝の5時30分に、息子に起こされて、ランニングに出掛けると、大阪城を周回し終わったあたりから、息子がぐんぐんとスピードを上げていき、どんどん離されていく、その後姿を見ながら、走りに付いて行けないのは、自分のお腹周りのぶよぶよした肉のせいだぁ。いや減らない体重のせいだぁ。あと2Kgほど体重を落とさねば。などなどと言い訳がましく呟く「心」と付き合いながら、走る。

走りながら、なでしこJapan澤選手の「苦しい時は私のうしろ姿をみなさい」というコトバを唐突に、思い出す。いま、息子の後姿をみて走る「私」。こんな状況下では、このコトバをどう解釈すればよいものか。と、少々苦笑いしながら走る。それにしても、その息子の後姿には、それなりの嬉しい気持ちもあるのだった・・・・。

ところが、10Kmのランニングで、その手前3Km辺りから、急速に失速する息子。喉が渇いたというのだが、清見原神社にお賽銭を投げ入れてしまい、生憎、お金を持ち合わせていなかった。親の立場として、ちょっとだけ後悔しながらも、そのまま走り続け、マイペースを維持したまま、息子を抜かして、走り続けた。息子は「私」のうしろ姿をどのように見ていたのだろうか・・・・・。


この土曜日、木造二階建ての構造見学会というのを久しぶりに実施する。長期優良住宅で、木の家整備促進事業でもあって、上棟以降の内装工事までの工事工程を公開する事になっている。沢山の人が、来場するわけでもなく、すごくマニアックな感じ、お施主さんも一緒に参加して頂いて、ご来場頂いたお客さんには、構造的な内容や、吉野の阪口製材の杉材を説明した。

お客さんが帰られたあと、構造設計を依頼している木構造研究所田原のタハラさんと所員の女性が構造チェックにお見えになって、久しぶりにお会いした田原さんと雑談も交えながら、お施主さんの前で、チエックをしてもらう。

辛口のタハラさんが、吉野の阪口製材の杉材の品質の良さを誉めて、こういう天然乾燥の杉材なら米松に近いヤング係数が出る時があって、強度も強いし、何よりも、大工さんが手加工で、仕口をキッチリとビシッと納めているのは見事で、プレカットだと機械が一気に削るので、ガサガサとなって、どうしても仕口がゆるくなってしまう。手加工するとゆっくりと、丁寧に削るのでで、仕口の強度もまして・・・・・・。

ちなみに、ヤング係数とは
木材や鋼材等の材料によって異なる材料の変形しにくさを表す係数。
材料密度、質量などによって変化する
数値が大きいほどたわみにくい材ということになる
と書いてあって、簡単に言えば、木材のの強さで、いえば、
ベイマツのヤング係数が110とすれば、スギは75ほどで、
阪口製材のスギは110近くの数値がでるのではないのかというのが、
先ほどのタハラさんのお話。

構造用合板の釘の打ち方のチエックとその話題になる。最近でこそ、どこの工事現場でも、CN50という釘の仕様をNC50という釘と間違って使用するという事はないだろうが、合板への釘の打ち方には、ちょっとした面倒くさい、ルールがあって、それは、釘が合板の中にまでめり込まないように、表面キッチリに打つ事が必要で、でないと、必要な強度が出にくいと言われている。

木構造研究所田原さんのホームページから引用すると
─▼──────────────────────────────


釘のパンチング

また、現在主流の機械打ちの場合、釘打ち機の圧力設定を高めにして釘打ちすることが多いため、釘頭が容易にめり込み、半ばパンチングが起きている状態となる。(下図)


現場における構造用合板+釘(NC50)の間違った釘を打ち込んだ時の釘頭のめり込み状態
耐力壁2.5倍仕様(OSBパネル厚9)の間違った施工
釘がCN50ではなく、NC50であり、さらに釘がかなりめり込んでいる。

現場における構造用合板
+釘(N50又はCN50)の適切な釘の打ち込み状態


適切なCN50釘での施工
───────────────────────────

フミノ棟梁と施主をを目の前にして、上記の引用と同じようなタハラさんの現場でのナマ説明があって、もちろん、フミノ大工とワダ大工は、合板の表面にキッチリと釘を打つために、機械で釘を打つのだけれど、その釘を合板のちょい手前で止めて、最後は金槌で打つという、もう一手間をかけていて、そんなプロ同士の説明と会話が続く・・・。

DSC03184_sタハラさんが言うのには、この前に京都での現場があって、そこの施工が芳しくなかったので、施主に説明をして、合板を全てはがして、もう一度やり替えてもらった。という事だった。この現場は、木材もキレイで、仕口も良く出来ていて、合板の釘打ちも良く出来ていて、ほんと、良く出来ている・・・・・と、フミノ大工を前にして、誉める。

DSC03337フミノ大工が、今まで、人生で、誉められて育ってきていないので、どうも居心地、メチャクチャ悪いですわ。と、キリッとした笑顔で、はにかんでいた。「私」は、喜びすぎて、帰りに、交通事故に合わんように気いつけやぁ・・・と、ちょっと茶化す。タハラさんは、こういう現場は気持ちエエですね・・・と言いながら帰って行かれた。

まぁ、そんな訳で、そのうしろ姿を皆で見送ったのであった・・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2011年07月31日 21:51 « 受け継がれる職人気質 | メイン | デジタルテレビが省エネ冷蔵庫に取って代わった日。 »


Share (facebook)