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2005年02月07日

カニ(その1)

カニを食べに行こうということになった。突然そんなふうに決まった。1月の連休の初日の夜のことだった。 丹後半島の付け根の久美浜にある、ふなや浮島というカニ料理屋さんに電話をした。これまで何度となく訪れていたのだが、 ここ5年ほどはご無沙汰にしていた。明日の昼間なら空いてるから「きーんさい。」と地元の方言で答えてくれた。雪は大丈夫かと聞くと、 「大丈~夫だにゃぁ」。ううん、こんな方言だったのかなぁ・・・ちょっと怪しいのだが、とにかく、 地元の言葉でおかみが気持ちよく応えてくれたのだった。大阪からは車で3時間ほどかかるのだが、明日の朝の出発で、 念のためスタッドレスを年中履いたままにしているワゴン車で行くことにした。 帰りには神鍋 湯の森ゆとろぎ温泉に行こうと決まった。まぁついでにスキーの道具も積んで、 気が向いたら一泊してスキーでもしようかということになって寝た。

突然、カニを食べに行こうということになったのには訳があった。小学生の次男が冬休みを終えて学校が始まったのだが、 どうも友達と仲良く遊べないらしい。いじめられているのかどうか、話を聞くと、どうも、本人にも原因が大いに有り。なんだと思えてきた。 元気なくしょげかえっている次男を見た奥方が大好物のカニでも食べさせて元気をつけさせようと提案したのだった。私も「イエス」と即答した。 子供のことよりも頭の中で踊っていたのは、カニ・温泉・スキーだったのかもしれないのだが・・・・・。

翌朝、ラジオからは大雪の警報が流れていた。舞鶴自動車道路に入って暫くすると雪がちらつきだした。 高速道路の降り口ではタイヤをチェックするための規制で大渋滞していた。国道に降りて進むうちにどんどん雪が激しくなってきた。 山道に入ると道路には雪がびっしりと積もっていた。どこが雪は大丈~夫だにゃぁなんだぁ・・・。と、ブツクサ言ったりして、 久しぶりの雪道を緊張しながら運転をした。あちらこちらで、動けなくなった車やチェーンの履き替えで、車がストップしていた。 峠を越えたすぐの下り坂では3台の車が事故をして、警官が交通規制をしていた。どんよりした雲、時折激しく降る雪、事故、 妙な緊張感があたりにはあった。お昼に着く予定が既に1時30分をまわっていた。でも子供にはそんな緊張感は伝わらなかったようだ。 お腹が空いた。カニ食べたい。と陽気だった。慣れない雪道での緊張した運転には、そんな陽気さが、ちょっと、しゃくに障ったりもして・・・、 誰のために来てんのかぁ解かってんのかいなぁ・・・というような親の嫌みな感情が時折ブツクサと去来するのだった。体に緊張を感じながら、 雪をみたり、心をみたりしているうちに、ようやく料理屋さんに到着したのだった。

普段は、茹でたカニの足を挽き割って食べることしかしらない息子が、カニの刺身やカニのしゃぶしゃぶ等々、 囲炉裏の炭火で食べるカニは美味かったようだ。茹でカニじゃなぁない事に最初は面食らっていたのが、その美味しさに圧倒されてか、 茹でカニの足から、身をほじくり出せ出せとは要求しなくなってきたのだった。そして息子が時折放つ我が儘に対しては、 そんなことばっか言ってるから友達と仲良く遊ばれへんねん。ちょっとは友達の事も考えて・・・・と、 子供にとっては妙な付き出しが添えられる。普段なら、プィイっとそっぽを向いてどこかへ逃げていくのだが、 家族だけの囲炉裏の座敷からは逃げようもない。窓の外は大雪。そんなことより、カニの旨さの方が勝っていたのだろう。 珍しく神妙に頷いていた。(続く)

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