2011年02月20日

施主力

大阪ガス住宅設計アワードの表彰式というのが水曜日にあって、矢部達也建築設計事務所のヤベさん設計で、弊社で施工をした、「コトバノイエ」が、最優秀賞を受賞し、その表彰式でもあった。

ひと組、3人まで、出席出来るらしい。それで、ヤベさんのはからいで、施主のカトウさんと施工の木村工務店のワタクシを招待して頂いたのは、特に、施工者の私たちに気配りを頂いた事は、工務店という、ものづくりをする、現場監督や見積者や職人さん達を代表して、とっても有り難い事だった。

大阪ガスビルの8階食堂の一角で、表彰式があり、ガスビル食堂には、ちょっとした憧れもあって、一度は行って見たい食堂でもあったのだけれど、何となく、敷居が高く、それに、わざわざ・・・という感じもして、未体験だった。レトロなイメージを抱いて、会場に訪れたのだが、新たに改装されたのだろう、オシャレで、いま風な感じで、イメージの継承というのはムツカシイものだなぁ・・・とおもう。

待合のロビーで、今回の審査員のひとりでもある、中原洋さんに、久しぶりにお会いして談笑する。2003年の夏頃に、大阪ガスの雑誌「住まう」の取材のために、「私の自邸」を訪問して頂き、その時の様子をホームページに掲載してもらった。当時は、そういう業界の事に無知で、住宅建築に精通した有名な編集者だとも知らずに、しごく気軽にお話しをしながら、スタッフの方ともご一緒に、うちの奥方も交えて、たこ焼きなどを食べながら、歓談した。後々その高名を知って、暫く前の事だったのに、一瞬、汗が出た・・・そんな思い出。お会いした時に、うちの家のことをしっかりと記憶に留めて頂いていた事が、何よりも嬉しかった。

審査員長でもある、木原千利さんとも、初めてお会いする。実は、10年ほど前に、高校時代の同級生が、木原さんに、病院と住居併用の建物の設計を依頼していて、その時のプランが二つあり、どちらが、エエとおもう・・・・と相談された事があった。中庭のある、建築的には、かなり魅力的なプランを推薦したが、鬼門とか風水の問題で、別のプランで竣工した。そんな話を木原さんと談笑すると、あの時ね、あの中庭のプランね・・・。と、その時の事を語られて、中庭のあのプランが実現できなかったのが残念そうだった。建築家との家造りには、捨て去る事も必要なのだなぁ・・・と再認識する。

表彰式の審査員の挨拶に、「このコトバノイエの建築は、施主にも賞金の半分を渡してあげて下さい・・・」という、コメントがあって、会場内に笑いが渦巻いたのだが、確かに、建築家との家造りにおいては、「施主力」というのが必要なのかも知れない。施主の建築に対する理解力と辛抱が求められるのだろう。設計力と施主力との協働による建築力。それに、ものづくりをする工務店力もちょっと、付け加えておきたいところだね・・・・。

建築の持つ力、建築力というのが、話題にのぼった。コトバノイエの建築を通じて、施主のカトウさんは、自分自身の内向的なある部分が、解き放たれたのだ。と云う。この建築のおかげで、コトバノイエという古本屋さんを始めようと、思いついたのだと。過去の囚われからの解放をもたらし、住まうひとに、内的な自由を与える建築。エエねぇ・・・。

表彰式終了後、わざわざ、本町から、生野区の小路にある、チリトリ鍋の「げんや」まで移動し、ヤベ夫婦とカトウ夫婦とキムラ夫婦で、ホルモンを食し、その後、木村家本舗に移動して、深夜まで歓談した。カトウさんのツィートには・・・
kotobanoieFeb 17, 2:22am via Web

木村夫妻と矢部夫妻の前で、誕生日ケーキのふーができるとは、夢にも思いませんでした。望外の喜びです。どうもありがとうございました。

コトバノイエという建築を通じて、設計のヤベさんと施主のカトウさんと施工のキムラさんとが、不思議な繋がりと関係性を保ちながら、付き合いを続けている。もちろん、施主と設計者と施工者という、ビジネス的な関係性を背後に含めながらも、それらから解き放たれたサムシングエルスも存在しているのだろう。きっと、お互いどうしが、「良心」を保持しようと、ちょっとした努力をしていることからうまれる関係性なのかもしれない・・・。

そういえば、今週は、建築家の林敬一さんが設計し、昨年の秋にお引き渡しをした、西宮M邸のお施主さんから、お礼のお手紙を頂戴した。その文面の中には、「・・・・中略・・・・家と親友になれた私たちは、ほんとうに今を大切に「笑顔」を感じあえています。これもひとえに・・・・中略・・・・・」とあって、ここにも、建築家との家づくりからうまれる、施主の心の解放を垣間見て、何ともいえない、感動が湧いてきた・・・・。

今日の日曜日、大阪ガスの授賞式で、同じく受賞し、ヤベさんから紹介してもらった、設計事務所のアルファヴィルさんから、オープンハウスへのお誘いがあって、訪問する。沢山の設計関係のひとがお見えになっていて、偶然にも、先日、木村家本舗で催した、「音の宴」のDJをつとめた、カブハウスの久山さんと、建築家の林敬一さんにお会いする。そのツィートには・・・・

kabuhaus4:51pm via jigtwi

アルファヴィルさんの茨木のオープンハウスに林さんとお邪魔し、現地で偶然木村工務店の木村さんとか屋根裏設計の中山さんとか・・・・・

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その住宅は、壁が斜めに傾斜し、平面が長方形ではなく・・・と、設計者は、見た事もないような、新しい空間性を創造する事に挑戦したのだろうし、きっと、その背後では、施主力も大きく貢献したのだろう・・・・。勿論、工務店力も必要不可欠だろう・・・。

建築家との家づくりには、工務店の設計施工では、創造できない、魅力的な空間性があって、それには、設計力はもとより、何よりも施主力なくしては、為し得ない事なんだとおもう。そんな施主になるのも、家づくりのひとつの選択肢だなぁ・・・・。

投稿者 木村貴一 : 2011年02月20日 23:18 « バス宴 | メイン | ラーメン »


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