2007年05月20日

家プロジェクト(直島その2)

P1040131直島地中美術館を見たあと、 家プロジェクトに行くことにした。 駐車スペースを探している時、昔、建築雑誌で見た、直島町役場に出くわす。その日、それまで見た、 宇野港のフェリーターミナルや地中美術館やそのチケットセンターの記憶と比べてみると、「デザインって何かねぇ」と、 考えてしまうなぁ・・・・。

P1040127P1040603

P1040135「古い家屋を改修し、アーティストが家の空間そのものを作品化したプロジェクト」が、 家プロジェクトらしい。通りには、それなりの人数の観光客が歩いていて、そのまわりの様子に従って、「たばこ屋」 さんでチケットを買う事にする。チケット販売をするタバコ屋のおじいちゃんとおばあちゃんに「直島の歩き方」を教わった。

島に訪れる前には、ひょっとして、古くからの町の住民とベネッセアートサイト直島が乖離しているのではないのか・・・。とも思ったが、 そんな風でもなさそうだった(実態は知らないけれど)。アートが町を活性化させる実験場でもあるのだろうか・・・。そして、 少しずつ活性化されているような雰囲気だった。

この木村工務店があり、私も住む、小路の長屋。かつては、玄関の戸を開けると、家内工業による「ものづくり」が突然、 目の前にあらわれた生野区や東成区の町並み。そんな町にも、試しに、「家プロジェクト小路」として、展開してもらえないだろうか・・・・ とさえ思えた。

P1040150 まず、「角屋」 に行く。家の中の通常、畳の部分に、水が敷き詰められていて、薄暗い部屋の土間の水の中で、数字のカウンターが点滅していた。 ヨーロッパからの観光客とおぼしき、脚の長い金髪の美人2名と男性。私たち家族。他に4人ほどの男女が、静かに、 それを眺めて座る・・・・。内容はよく理解できないけれど、アートも含めたその空間全体に漂う、「静けさ」が良かった。そして、 こういう、さりげない民家の修復も、出来そうで、なかなか出来ないのだなぁ・・・・・と、職業柄、眺めた。

P1040155角屋を出て、坂道の階段を上がって、次のプロジェクトの「護王神社」 に向かった。 地下の石室を見るための行列が出来ていて、先ほどの、外人さんの後に並んで、15分以上は待った。 チケット改札員件、案内整理係のふつうのおじさんに話を聞く。もともと石室は、なかって、今回、新たに作ったのだとか・・・。 そんな事を考えると、大胆な「神社」の改修工事でもあった。町の住民と、上手くコンセンサスがとれたものだなぁ・・・・と、 やっぱり、職業柄、感心する。神聖さというよりはオブジェ的でもあった。柱の下の大きな一枚の石が、 石室の天井になっていると気付いたのは、護王神社を離れてからだった。

P1040175P1040184 

P1040199P1040198直島の道幅の狭い、町並みを散策しながら、「南寺」 に向かった。安藤建築とジェームズタレルのコラボレーションらしい。護王神社以上の行列が出来ていて、正直、驚いた。 30分近く待つ事になった。

不思議な体験だった。20人ほどが、前の人の肩に手をあてて、行列をなして進んでいく。ちなみに、私の前は息子。後ろは奥方。 息子の肩に手置いて、奥方の手が私の肩に載って、暗闇の中を進んで行く様は、自分の老後を想像させられた・・・・・・。

真っ暗だった。目を見開いて、見開いて、見ても、暫くは何も見えなかった。「突然」とよんで良いのか、「スゥーっと」と、 よんで良いのか、「何となく」とよんで良いのか、目の前に光りがあらわれ、まわりの人々が暗闇の片隅から、光に向かって歩いていく、 ざわめきが湧き起こった。光は最初からそこにそのように存在していたのだが、暗闇に目が慣れるまで、見えなかっただけだった。

暗闇で家族の位置関係を失わないように手を握りながら光に向かって進み、光に手をかざして、光を物質のように体験する。そして、 反転し、お互いがはぐれないように気遣いをしながら、出口の光を求めて、歩んでいくのだった。外に出ると、黒い板貼りの外壁、 軒の出の長い黒い庇、隣の土壁の塀と木、太陽の光、カップルの多い行列が目に飛び込んできた。「若い女の子とデートで行く方が、もっと、 ええんとちゃう」という、おじさん的なこころが去来するのをこっそりとやり過ごしながら、隣接する公園から建物を眺めた。

P1040203P1040213P1040219
P1040223P1040221P1040204
P1040202P1040228P1040232
P1040236P1040248P1040226
P1040244P1040238P1040200

P1040282カッコイイ便所で用をたした後、町を散策しながら駐車場に向かった。「きんざ」 というプロジェクトは予約が必要らしい。何ヶ月も前からでないと、予約が取れないと。残念。P1040268ちょっと疲れたので、お茶を飲もうとするが、どこも、いっぱいで、行列が出来ていた。やっと、 「本村ラウンジ&アーカイブ」のソファーでくつろぎながら、パンフレットを眺めていると、「山本うどん」 といううどん屋さんがあって、地元では有名らしい。そんじゃぁ、お茶は諦めて、うどんでも食べた後、 ホテルにチェックインしようかと話がまとまった。

P1040289車窓から「作品」を眺め、昔 の建築雑誌に掲載されていた中学校の校舎を眺め、 フェリー乗り場から家プロジェクトまで、かなりの距離の道を歩いている、期待の入り交じった表情の沢山の人々を眺め、 007プロジェクトの展示を覗こうかと思いながらも、やっぱり何となくやり過ごし、再び、 宇野港フェリーターミナルの簡素でシャープな美しい建物を通り越して、山手のスーパーの一角にある「山本うどん」に到着した。

P1040292店の人にお勧めを聞くと、肉うどんだとか。夕食の事が頭にちらついて、家族3人で、 2杯のうどんを注文することにしたら、一口食べて、美味しかったのか、息子に全部食べられてしまった。それで、 もう一杯注文することに・・・・・。そうそう、 この直島は、岡山県ではなくて、四国うどんの香川県だったんだなぁと、舌で、 再認識したのだった。

 

 

投稿者 木村貴一 : 2007年05月20日 13:45 « こんなことがあった。 | メイン | 心に残った »


Share (facebook)