桜が咲いて、散って、さまざまな出来事に遭遇した、特異な春の一週間だった。
月曜日。朝から着工案件の近隣との合意事項に関わる。建築工事と近隣との関係性は永遠のテーマで、真摯に向き合うことの必要性を振り返りながら毎回精進することが重要だと、改めて感じさせられる朝だった。昼から古民家のリノベーションの打ち合わせに参加する。設計者のBIMを映像化したカッコ良いプレゼンを見て、皆で感覚を調整し、基本的な合意形成をしたが、お施主さんの都合により計画が2年間延期になって、ものごとを「為す」ことに対する神の悪戯のような出来事が、あるある的に起こる不思議を感じた月曜日の夕刻だった。
火曜日。朝は月曜日の例の合意事項の再確認。夜の定例会議は社内面談の報告とチャレンジする会社が持続可能な会社となるのだろうか。と社員皆で、なんとなくの合意形成をした。

水曜日。弔事があって、福島県喜多方に、伊丹から新潟まで飛行機E190で向かい、レンタカーを借りて喜多方まで移動する。お昼を過ぎていたので、喜多方名物のラーメンを坂内食堂で食す。スープが透明だ。大阪の高井田系醤油ラーメンの濃い色とは全く違う、あっさりしていて美味しい。奥方が食べるラーメンの後ろにポスターが貼ってあり、その言葉が良かった。なるほどね。
喜多方流おもてなし。
一杯のラーメンに託す
喜多方のおもてなしのこころ。
気取らないからあたたかい。
さり気ないから、うれしい。
今も昔も変わらない。
それが喜多方流。
喜多方のお通夜の一部を経験する。村の多くの人たちが家にひっきりなしにお悔やみに訪れて、翌日葬儀場に出棺され、お通夜は午後にごく近親の村人と親族だけで執り行われ涙ながら御詠歌が詠まれた。最近の夜の大阪のお通夜と全く違って、死を送り出す日本の原型のようなスタイルを側で見守った。

木曜日。前日から熱塩温泉山形屋に宿泊する。「一流の田舎」「二流の上を頑張ってます」なんていうキャッチフレーズが面白かった。600年続くお湯だが行政の指導で塩素を混入せざるおえないことを嘆いておられた。葬儀場までの道中に廃線になった日中鉄道の熱塩駅にちょっとだけ立ち寄る。盆地で残雪の白い雪山に囲まれてゆったりとしてのどかな雰囲気。桜の開花前がちょっと残念だったが、この光景に癒された。葬儀は僧侶の素晴らしいコンサートのような読経とともに粛々と進行するが、今風に故人のスライドが上映された。なんか田舎の方が進んでいるかも。出棺の時の献花は親族だけだった。なるほど、既に弔問客は故人の家でご尊顔しているのだからね。簡略化するのが都会の葬儀のあり方なのだろう。
夕方の5時30分から協力業者の精親会のオンラインミーティングの時間だった。新潟空港の駐車場のレンタカーの中で、iPad Proを使って、開催する。こういうコミュニケーションが違和感なくできる時代になったのが、コロナ禍による社会変化の兆しなんだろう。19時新潟発伊丹行きの飛行機で帰阪。
金曜日。町の工務店ネットの小池さんに木村工務店を訪問して頂いた。「OMソーラー」とか「ちるちんびと」とか「住む」などの代表的な方だ。うちの家も見てもらった。いろいろな話題で話が弾む。生野区に関わる同姓のキムラーさんが生野区を「懐かしい未来」というキャッチフレーズで表現していて、そのことに共感している話をすると、後日、メールで。
懐かしくもあり、
生野の
新しい町角。
確かにそんな建築と街角を時間がかかっても造れたら良いよなぁ…と思わさせられたところが、小池マジックなんだろう…。小池さん75歳と深く関わる建築家の秋山東一さん79歳だそうだ。そうそう、先週、コーポラティブハウスを創設した都住創の安原さんと「まちのえんがわ」でコミュニケーションした82歳だそうだ。その御三方とも行動力が軽やかで凄い!木村さんこれからもっとチャレンジせなアカンで!と叱咤激励されているようだった。

金曜日4月2日は会社の創立記念日で法人組織になって73期、創業して85年になる。うちの庭の枝垂れ桜で社員と大工と手伝いの職人さんとで花見焼肉をするのが慣わしだったが昨年は中止した。今年はそれぞれの帰宅時間に合わせて缶ビール一本だけを縁側に座って飲んで紅白饅頭を持ち帰って解散するというコロナ禍的花見を小1時間だけ粛々とおこなった。
土曜日。建築家案件の打ち合わせを建築家とお施主さんと工事部長のトミマスくんとワタシでコミュニケーションする。午後から孫セイゴの幼稚園入園式の昼食会をおこなった。なんというか、こういうことが、社員やこのブログで呟いて、そんな家庭内の行事に参加することが、とっても大切なことだと、皆で合意できる世論になってきたのが、オモシロイと思う。その食事終了後、遅れて、会社で新築案件のオンライン打ち合わせに参加する。一度顔合わせがあると、次からのオンライン打ち合わせは、それなりにスムーズに進む。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭とはオンライン打ち合わせはお互いに有益でもある。夕方には、造園の家谷さんがきて、次回のワークショップの打ち合わせをする。「まちのえんがわ」は古本が商品棚に並んでいたが、10年目として、園芸店的な中に古本も共存している「まちのえんげい店」としてワークショップを通じて衣替えをしようと思う。下はサッチーが描いたイラスト。

日曜日。住宅相談会がある。午前中のAさんは木村工務店の設計施工で家をリフォームさせて頂いた家の息子さんご夫妻で、お母さんともどもお越しいただいた。ワークショップに何度も参加頂いているお子さんもご一緒だった。土地探し中古住宅探しの案件。午後のBさんご夫妻は、建築家で家を新築させていただいた家の娘さんで、やはり土地探しからの案件。お父さんが孫娘の子守がてら参加頂いて、土地探しのノウハウのようなものを共有した。午後からのCさんは土地が見つかったので新築の相談としてお越しになった。丁度その前に、「まちのえんがわ」ゾロ目ミーティングというのを、前出のキムラーさんと行っていて、4月4日、生野区のアンさんや、大阪大学のAくんの4人で、縁側談義を繰り広げていた。生野区の廃校になる御幸森小学校がテーマになった。そんなこんなで、Cさんの打ち合わせはタナカ部長にお任せしてしまった。
いま、このブログを書く、日曜日の夜。枝垂れ桜は春雨と共に散り、庭が花吹雪で覆われている。美しいので、明日の朝は、庭を掃除するなっと奥方に申しつけられた。ま、そんなこんなで、こんな変化に富んだ桜の一週間は初体験だ。
