チャーミング

「梅は咲いたか桜はまだかいな」なんていう小唄の歌詞が、おもわず口のなかでもぐもぐし、頭の中を駆け巡ぐった。会社前のレトロな長屋と梅の雰囲気がエエ感じで、道行く人がおもわず足を止める姿に出くわすと、なんだか嬉しい。今年最後のひとりスキーに行くと、道中の里山のほとんどの雪が溶けて、ほんの一部に残っている雪と、芽吹き出す大地と木々、さらさら流れる小川の雰囲気が、とっても心地良い雰囲気だった。積雪のある時は小川の水が流れる姿をみることがなかったが、雪解けとともに「春の小川はさらさらゆくよ」って小学生の頃に歌った歌詞が、いま、この歳になって、ようやく理解出来るようになった。ここ数年、最後の春スキーが冬から春への切り替えになって、いつものように昼頃に終わり、大阪でスーパー銭湯に入って、スキーの板と靴は来年まで物置にしまうことになった。

そうそう、先々週の2月最後の日曜日に、しまなみ海道の生口島の輪空というペンションのオーナーが、自転車で、今治から南港までフェリーで来て、うちの家まで自走でやって来た。なので、二人で大阪と奈良をサイクリングをする。家を出て、司馬遼太郎記念館から十三峠を越える。暗峠奈良街道の榁木峠を越え、薬師寺、唐招提寺へ。奈良町を通過し猿沢の池周辺で昼食。東大寺、転害門、奈良少年刑務所跡、平城京、大和郡山の城下町で珈琲飲んで、金魚を見て、法隆寺へ。大和川沿いから八尾空港を通って、長吉長原の真田幸村休息所跡を経て、生野区小路東のうちの家まで、94kmほど。ワタシ、今年はじめてロードバイクに乗って、それも3ヶ月ぶりぐらいなので、後半の法隆寺を通過してからはヘロヘロしてスピードが全く出ず、後から応援してもらいながらなんとか走りきった。

先々週の日曜日はとっても寒い奈良と大阪だったのに、今週になって一気に暖かくなった。毎年自転車で司馬遼太郎記念館前の鉢植の黄色い菜の花をみて、春がやってくる気分が盛りあがってくるが、今年の春に気分が盛りあがってくるのが、WBCの野球だな。オオタニとヌートバーの仕草がとってもチャーミングだ。マゴ達もオオタニオオタニと叫んでいる。幅広い年代の女性たちの会話に聞き耳をたてると、普段は野球をみないけど、今回は見ているらしい。面白いのは、オオタニの彼女になるのはプレッシャーがかかるけど、オオタニの母親にはなりたい!と何人かの女性から聞いた。老若男女に幅広い魅力を感じさせるのが凄い。近くの居酒屋に行くと、家で野球をみる人が増えて夜の飲食店の人出が減ってるわ!と笑顔だった。

「チャーミング」を辞書で引くと「魅力があるさま。人の心を引きつけるさま。魅惑的。」と書いてあった。オオタニも、ヌートバーも、春の梅も、春の里山の景色も、菜の花も、チャーミングなのだ。

女性力

春がやってきたような陽気の日曜日。住宅相談会の日曜日で、サヤカレー&kofukubook&bakeをオープンした日曜日。

住宅相談会の午前中のAさんご夫妻は、マンション住まいということなのですが、奥さんの想いが徐々に募り、新築の家に住みたくなって、土地探しをはじめているという。コロナ前に比べて、土地の値段が急上昇し、家の原価も超高止まりし、若い世代が新築住宅を建てるコトに躊躇せざるおえないムードが漂っている。タモリが発言した「新しい戦前」というコトバは面白いなとおもう。そんな独特のムードが漂う状況下で、奥さんのご両親が土地購入代金を助けてくれるらしい。確かに、そんなサポートというか、シェアがないと、若い世代が新築住宅を建てる気分になれないのが、今の実情だとおもう。

木村工務店の住宅相談会の土地探しでは、具体的な2、3の土地があれば、即興的に具体的なプランニングを想定しながら、あれやこれやとコミュニケーションするのは、それなりに楽しい打ち合わせなのだが、多くの土地探しの問題は、当事者のご本人自らが、候補を2、3に絞り込むまでの作業が、大変で、多大な時間を要し、なおかつ悩ましい。ということが大きな問題だと感じてきた。それで、そのご夫妻のライフスタイルを考慮した、土地の探し方をレクチャーし、自分で2、3の候補に絞れるようにサポートするのが、木村工務店流の住宅相談会なんだとおもう。

午後からのBさんは、相続で受け継いだ土地があり、そこに女性ひとり住まいの新築住宅を建てたいというご相談だった。弊社では女性ひとり住まいのリフォーム例がそこそこあって、どの方も自分の個性にあったライフスタイルを楽しんでいる様子が、ありありと伝わってきて、打ち合わせの第一歩に、自分自信で考えた間取りを持ってこられる方が多い。今回も間取りを楽しんで作られた様子がありありとうかがえるプランを持参してこられた。それをひとつの素材として受けいれて、私達は間取らず、あるひとつの建築のなかにその間取りをどううまくリミックスできるか、そんなのが問われているようにおもう。

住宅相談会の時間帯と並行して、「まちのえんがわ」では、女性二人による、サヤカレー&kofukubook&bakeをオープンした。6月ぐらいからは、毎週木曜日にkofukubook&bake。第一金曜土曜日曜日はサヤカレー&kofukubook&bakeという営業形態でオープン予定。女性二人がそれぞれの個性に応じたチャレンジをしていきたいという。これは大阪のおばちゃん的バイタリティーなのか。そうそう、ワタシ、大阪人男性は、知り合いでカレーを食べに来てくれたお客さん男子と縁側話をしていると、「商売どうでっか」「ぼちぼちでんな」みたいなニュアンスの会話を、現代的なコトバでやりとりするのが、やっぱり楽しいのだ。大阪のおっちゃんは古くさいままなのか。

そんなこんなで「女性力」を感じた日曜日だった。

レッカーのオペレーター

久しぶりに木造の建て方の日に現場を見たワタシ。若い頃は、必ず建て方の現場には参加していた。木造の建て方ほどワクワクするものはない。なによりも大工さんをはじめ鳶として活躍する手伝いの職人さんなど、その働く姿がカッコエエ。そんな時のワタシの立ち位置は、ただただ安全無事を祈るだけなのだが、それとともに、加工された木が組み上がていく途中途中に、梁の上に登らせてもらい、体で、木が組みあがっていく感覚の体験を積み重ねるコトだった。木が組まれていくある段階で、ぐらぐらしていた木組みが固まり、しっかりする瞬間があって、それを自分の足元を通じて体で体験すると、木組みというシステムの魅力にはまるのだった。

写真の木組みの向こうに見えるのは心斎橋筋商店街のアーケードの鉄骨。その向こうにゼネコンの大きな現場の大きなクレーンが稼働している。こちらは、カニクレーンというとっても小さなクレーンで、おっちらこっちら手作業で建て方をしている。心斎橋商店街の狭小間口に木造建築を新築するということの現代性を象徴するかのような場面だった。

現代的な木造の建て方で、大工さんの技術が問われているのはそのとおりだが、それだけでなく、レッカーのオペレーターの腕がとっても大切なのだ。今回はレッカーのオペレーターとして、最も信頼のおけるナカムラさんを指名し、彼のスケジュールに合わせて建て方の日が決定された。当初はこの場所にはレッカーを入れるコトはできないという、レッカー屋さんの営業担当の判断だったので、カニクレーンを導入することになったが、作業効率がとっても悪かった。1日使ってみた午後3時過ぎ、ナカムラさんは、コンベックスで実際に立ち上がった柱の間隔を計測し、ぎりぎりだけどレッカーが入るかもしれない。と言いだした。急遽そのためのさまざまな手配をする現場監督。次の日、現場にレッカーを搬入するチャレンジをしてみると、見事ぎりぎりレッカーが納まることになった。それによって格段と作業効率と安全度がアップすることになった。↓(専務の写真を拝借)

レッカー搬入の安全性を担保しようとする営業判断に対して、それは現代的で社会情勢を鑑みても、安心安全は、しごく真っ当な判断だと思うが、現場で、その安全に対する判断を尊重しながらも、チャレンジしようとする職人さんが、いる。そういうレッカーのオペレーターの姿に直面し、そのことで現場の皆が、よりエネギッシュになる瞬間に出会えたことに、ワタシは密かな喜びを感じた。そんな今週の出来事だった。

「まちづくり」と「ものづくり」

朝から雨降る日曜日。先週に引き続きスキーに行こうとおもっていたが、ほとんどのスキー場が雨予報だったので、やめた。長男とうちの社員の何人かはこの雨を気にせずスキーに出かけたらしい。確かに、雨で、アウトドアーの予定をとりやめるというのは、面白味に欠ける行為だなとおもうし、若い時は、台風でも、どんな天候であっても出掛けたものだが、歳を盾に言い訳に使っている歳なワタシを静かに見守り続けるいまのワタシ。みたいな構図になってしまった雨の日曜日。

毎月19日は生野の日で、今日は空き家カフェを開催する19日の日曜日。で、スキーに行くのが、空き家カフェに参加することになった。開催場所が決まっていない時は、木村工務店の3階会議室で行うのが通例で、本日は顔見知りのメンバー7人で、珈琲を飲みながら、あれやこれやと語り合っていると、2時間なんてあっという間に経過した。空き家カフェで、ここ数年間、司会を担当しているのだけれど、スキーを盾に、本日の司会担当を替わってもらおうという企ては未遂に終わってしまった。というか、そろそろ、いろいろな方々に司会と開催場所を持ち回ってもらうことが、空き家カフェ開催の持続性に繋がるような気がしてきているワタシ。

それはそれとして「空き家カフェ」というのは、空き家をキーワードにしながら、この町の歴史や情報などを物語るサロンのような場で、空き家問題の解決に至る前の情報収集と問題の整理整頓を手助けするカフェのように気軽な場だとおもう。ひとりひとりの住民が、ある場所に住むという行為が、その場所の街づくりを応援し参加し貢献するという意識を持ち育む必要性を感じてきて、そのためのサロンになってきているようにおもう。

その前日の夕方は「ものづくりセッション」が開催された土曜日だった。行政マンのダケダさんの、個人的に繋がりの強い人が招待されて「ものづくり」について語り合う場で、ワタシは場所の提供と司会進行を担当し、タケダさんとワタシが両輪となって「リズムセクション」として機能しながら、プレゼンターとコメンテーターと参加者が、「ものづくり」に関する想いや悩みや共感や違和感や事例を、なるべく自由な雰囲気で演奏するかのように、ある一定のリズムを刻もうとしている。

建築を生業とするワタシにとって、どんな椅子やどんなテーブルで、会場をセッティングすると、自由度のある良い雰囲気のコミュニケーションになるのか。という環境デザインは、大いに興味があるところで、大テーブルと椅子。会議室的テーブルと椅子。などなどいろいろ試してみたが、椅子の前にテーブルがあると、なんとなくその人の気持ちのオープンハート性が制御され、視聴者的意識が増すようにおもえて、ある時から、テーブルがなしで、椅子だけのセッティングに変更した。確かに、テーブルが無く椅子だけだと、会場での参加意識は高まるようにおもえて良かったが、資料が置けて学べる場、メモが取れ、パソコン等で検索できる場、珈琲を飲みながらリラックスできる場、などなどコミュニケーションの質を高めるための小さな机の必要性を感じるようになった。

椅子に付属する小さなテーブルを大工さんか家具屋さんに作ってもらおうとおもったが、収納性とコストを考慮すると、エエデザインが想像できなかった。そうこうしているうちにコロナ禍になり、リアルに人が集うコトよりオンラインで人が集える道具というか機器に予算を使うようになってしまい、椅子とテーブルなんて、どぉーでもよくなった。

で、コロナ明けが近づいてきたいま。やっぱり、リアルに人が集い、オープンハートに語り合い、資料と飲み物を置ける、そんなテーブル付き椅子が、コミュニケーションの質を高める道具のようにおもえてきて、ネットで探し購入しようという決断に至る。そのきっかけになったのが、先週に開催した木村工務店の初午祭で、社員と協力会社のコミュニケーションの円滑化とその質を助けるための道具としての机付き椅子だった。そしてそれを「ものづくりセッション」で流用することにした。

「まちづくり」と「ものづくり」の質を高めるためには、そのコミュニケーションの質を高めることが大切なコト。と感じた週末だった。

侘助咲いて春へ

庭の侘助(わびすけ)が満開になると、どこからかムクドリのつがいが飛んできて、侘助の花びらをクチバシでつつく。そんな情景が、寒い冬から暖かい春に、季節が変わるお告げのようにおもっていたら、今日の日曜日は、ほんとうに春のような暖かい日和だった。

連休だったので、建国記念日の祭日の夕方にスキーの道具を用意して、翌日の日曜日の早朝から車でひとりスキーに行く。今年初めて。昨年5回ほど、ひとりスキーに行ってみると意外と快適だった。帰る時間を気ままに決定できるのが良いのかもしれない。スキー場に着いてスキー板の袋を開けると、なんとストックがなかった。えっっ!とおもう。お正月に泊まった奥志賀高原のホテルに忘れたのだな。マゴ達の世話に気をとられて自分のコト忘れたようだ。それに前日にスキーの袋もあけずワックスも掛けず、ま、歳とると、こんなもんなのだ。ストックだけ借りるために30分ほどレンタル場で並んだ。レンタル料500円也。メチャクチャ混んできたので、12時過ぎには滑るのを止めて、午後1時過ぎにはスキー場を出発していた。大阪に到着してからスーパー銭湯で体をほぐす。

建国記念日の前日10日の夕刻。木村工務店で初午祭を開催する。一年で一番運気が上がるとされる初午の日に、会社加工場に社員と職人さん、それに協力会社の精親会のメンバーも集まってもらい、皆一緒に、木村工務店のお稲荷さんに現場の安全と商売繁盛を祈願する。その後、直会(なおらい)として、屋台をだして社員がおもてなしをし、協力会社の職人さんと飲食を共にするのがメインなのだが、3年連続飲食は中止した。といっても、今年はテーブル付き椅子を購入し、飲み物と稲荷寿しを各自に配布して、安全のセミナーや会社の方針を聞いてもらいながらの直会とした。

そうそう、建国記念日の朝、布施の商店街を自転車で通過すると、ひとっこひとり誰もいない瞬間に出くわした。おもわず自転車を止めて、iphoneのシャッターを押す。この床は、かつての心斎橋商店街で使われていた床を、ここに移設したらしい。エエデザインだなぁ。左側通行で、当時のほとんどの子供達は、母親に手を握ってもらたりしながら心斎橋商店街を歩くと、この床のデザインに沿って蛇行しながら歩いていたとおもう。懐かしい。いまこの床を歩くほとんどの人が、心斎橋筋商店街の床だったことに気付いていないとおもうし、蛇行して歩く姿もみない。

左右で行き交う人通りがいっぱいの商店街を歩く人たちに、楽しく歩いてもらおうと、その姿を想像したからこそ、このデザインで、そういう行動がうまれ、記憶にも残ったのだな。なんておもう。いまその心斎橋筋商店街で木造の店舗を施工中。春に向けて、それぞれの現場の安全に留意しながら、エエ建築を創造できますように…..と、皆で願う建国記念日前日の初午祭だった。

節分

マゴ二人がうちの家のリビングにやってきてテレビを見たいというので。エエよぉと言う。二人でリモコンを上手に操作してNetflixをチョイスしアニメを見だした。暫く時間がたって、二人のママがやってきて、豆撒きはやった?!と聞く。あわててアニメのテレビを止めて、弟が鬼のお面をかぶり、兄が豆を持って、オニワソト!といって、ちょっと気遣いながら豆を撒いた。前もって話し合いが出来ていた小芝居のような素早さ。このリビングの床に豆をまくぅ?とワタシが小さな声で呟いてしまったら、すごく気を使って、豆を床にパラパラっと置いた。

申し訳けないコトバを言ったなぁ。と心のなかでおもったが、黙っていた。そのまま弟は鬼の面を被って逃げ回る遊びを楽しそうに続け、お兄ちゃんは、何度か丁寧にパラパラと豆を撒くように床に置いて、間髪入れずにその豆を回収し、口にバクバクと入れながら、弟と豆を分け合い、美味しそうに食べた。えっ、その床の豆、食べるのぉ!と心の中で呟いた瞬間、なぜか、回転寿司の迷惑行為のテレビ映像がフラッシュバックした。マゴ達はほんの1、2分ほどの寸劇に満足し、テレビの世界に戻ってクスクス笑っている。そんな節分の日。

その豆撒きの時は、奥方は友達と外食に出かけていた。帰ってきて、恵方巻き食べたぁ?!と聞いてくる。なんとか食べ切れたわ!。ワタシの食事として、恵方巻きとサンマを食卓のテーブルに置いてくれていた。さっき3人で会食したら、3人とも旦那に、恵方巻きを置いて出掛けたという。みな、旦那は家で、ひとり恵方巻きを食べていたみたいやね。とそのワタシと他2人の旦那の姿を想像しながらクスクス笑う。さっきのマゴ二人のカワイイ姿が蘇り、ほか二人のオトコのカワイイ姿も想像しながら、あっはっはっと奥方に笑い返して、節分の邪気を払い福を呼び込むことにした。

土曜日。再び和歌山の山長商店さんに出向いて、心斎橋商店街で施工中の木組みの仮組み作業をおこない、建て方の方法を検討し合う。施主も設計者も構造設計者も現場監督も大工も皆で一緒にあーだこーだと検討し合う機会って久しぶりな感じがし、そうそうないので、ライブな、ものづくり感を味わうと、エネルギーの交流のようなものがあって、帰り際は、お互いに感謝し合って別れた。


会社で【住宅相談会】と「まちのえんがわ」で【 サヤカリー+kofukubook&bake 】を開催した、晴天で穏やかな気候の日曜日。知り合いの人が数人食べに来てくれて、とりとめのない会話をしながら過ごす日曜日も楽しいし、たいした宣伝もしていないのに、若いカップルが立ち寄ってくれたりするのは、カレーの魅力の不思議を感じる。

住宅相談会にお越しになった3組みの方々は、何れも自転車圏内で、リフォームの相談の方々だった。断熱の知識が豊富になって補助金の取得も含めて関心が高いことに驚いた。「既存住宅の断熱性能を早期に高めるために、断熱窓への改修による速攻性の高いリフォームを推進します。」「・既存住宅の早期の省エネ化による、エネルギー価格高騰への対応(冷暖房費負担の軽減)。 ・2030年度の家庭部門からのCO2排出量約7割削減(2013年度比)への貢献。・2050年ストック平均でZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保への貢献。」なんていう政府が本腰をあげた住宅政策のコトバによる国民の影響って、あらためて凄いなぁっておもう。

毎月の第一日曜日に【住宅相談会】と【 サヤカリー+kofukubook&bake 】を開催するコトになりました。お気軽に遊びにお越し下さい。

「小説って建築に似てる」

寒い日が続く。日曜日だからアウトドアーでスキーでも。体も動かしたい。と土曜日の昼過ぎにおもったが、夜な夜なスキー板と靴と服を用意して、早く寝て、朝早く起きて、スキーの服に着替えて、車で雪道走って、天気だったらエエが雪降る道中とゲレンデやったらいまいちやし…..。なんて前日にそんな気分に囚われて、躊躇してしまうワタシがいて、それを歳のせいにしながら、無理せんとこ。と、用意を止めて、夜な夜なNetflixを視聴しながらシニアなメンタルを慰めているワタシがいた。

日曜日の朝起きて、とっても快晴な空を眺めて、やっぱり行けば良かったと後悔が勃発した途端に、気持ちを朝風呂に切り替えた。露天風呂の湯船から快晴の空を見上げていたら、やっぱり小さなチャレンジを繰り返さんと小さな喜びは味わうことでけへんよな。脳にだまされずに脳をだまさなアカンよな。なんて反省をしてみるワタシがいて。妙に面倒くさがる脳に囚われてしまったことにより、リアルないまとここにある目の前の現実は、雪のゲレンデではなく熱波のサウナになってしまった。なので、それを楽しむことにした。

そうそう、先日のこと。「サトシくんがいま直木賞とったでぇ!」と奥方からLINEが来た。反射的におもわず凄い!と呟いてしまったが、暫くしてテレビ会見が始まったらしい。夜にYouTubeでその会見を見て、ちょっと笑いちょっと心配しちょっと感心した。どんな気分ですか。という質問に、とりあえず早く終わって飲みにいきたいです。というコトバに、会ったときと同じ、率直な印象を語る若者の映像に微笑んだ。嘘をついたことがありますか。という質問に、母親のパンの話を語りだし、おいおいそんなこと言って大丈夫なんかいな。と老婆心でヒヤヒヤしたが、それより、「小説を書く行為自体が建築と似ているとおもっていて…..」という語りに感心した。

「地図と拳」で直木賞をとった作家「小川哲」さんは、うちの長男の友人で、うちの家といっても庭を隔てて繋がっている長男の家に泊まりにきて、顔を合わせ会話したのは小説家になって数年した時のこと。なんでもうちの長男と生年月日がまったく同じだという。生まれた時間だけが1時間ほど違うらしい。受賞直後にうちの家では、占いってどうなっているんやろ。同じ生年月日で、かたや直木賞作家。かたや大阪の小さな工務店。あっはは。と笑いながら祝福するのが、ひとつの作法だった。早速Amazonで弁当箱のような分厚いその本を購入した。読み切れるかどうか心配なのだが、ネット上にこんな記事が掲載されてあった。

そのそもそも僕は小説って建築に似てるよなと思っていたんです。家を建てて人をもてなすのと同じように、小説も空間を作るものである。僕が小説について考えていることは、建築について考えることに繋がっているかもしれないし、その建築というのは満洲という国家のメタファーでもあるので、建築という軸で通して書けるな、という感覚がありました。

――でも建築する際って、事前に綿密な設計図を書くものですよね。小川さんは小説を書く時、設計図、つまりプロットを立てずに書き始めるそうですが。

小川 そうですね。僕の場合、設計図を書くと、どこかで見たことのある建築になっちゃう気がしていて。適当に柱をポンポンと投げて、刺さったところから始めるんです。「うん、この刺さり方いいな」とか「この柱、要らないな」とか。そうやってある程度、その場の天気とか空気とか自分の調子とかに合わせていくと、だんだん全体像が見えてくる。そういう書き方のほうが、自分としては楽しいです。

ワタシ、このブログが長年続いているひとつの要因は、建築の設計図を書いている感覚と同じ気分になりたいために、ちょっと小説風に書こうとしているからだな。とあの会見を視聴し、この記事を読んでそうおもった。時として段落ごとに空間性を考えるような気分になるのがちょっと楽しい。書きたいことがある時は、ひとつのプランニングに基づいた新築のようにおもうし。日曜日の天気と気候と気分を書き出すことから、気分が増築されたり減築されたりし、その週の印象をブリコラージュ的にリノベーションしながら作る時が多いようにおもう。たまに読み返すと、ひどいプランニングで雑な仕事やな。とおもう時も多い。

まっ、建築空間に例えたら、直木賞作家とは雲泥の差なんですけど。というか、祝福をこめて。

「会食」

お正月からあっという間に3週間が過ぎた。10日戎には布施の戎神社にお参りし商売繁盛を祈願して笹を買うのがここ数年の事だが、コロナ禍になった影響か、天然の笹竹の販売がなくなり、一種類だけの模造の笹に札が付いているタイプしか販売されなくなった。種類を限定した販売戦略なのか。コロナ禍の対策のためにお客さまが声を発して注文するコトバを減らし行列と混雑と密集を避けるための措置だったのか。自転車の前のカゴに買った笹を乗せて、そんな事を考えながらペダルを漕いだ帰り道だった。15日には門松を撤去した。

今年になってさまざまな新年会が復活した。木村工務店の恒例の初出の新年会は3年間中止しているが、業界団体の新年会はちらほら復活し今年になって3つの会食に参加した。暫くぶりだとあらたまってスーツに着替えネクタイ締めるのが面倒くさいなっ!ておもうが、外に出向いて人と会って、いわゆる「会食」をするっていうのはそれはそれでやっぱり楽しいよなっ。とおもう。

そうそう昨年末には「ものづくりセッション」に参加する若い人達と2回ほどうちの家で会食をし楽しい時間を過ごした。年末のものづくりセッションの時にプレゼンしたワタシの話の解説のようなものを聞きたかったらしい。若い2人だったからか、奥方が、料理教室で習ったイタリアンをフルコース風にご馳走するわ!と張り切った。その噂がSNSに流れて、一週間後、やっぱりうちの家で今度はリゲッタのタカモト社長を交えた6人ほどで鍋を囲んだ。流石に奥方も6人にフルコース料理は絶対無理っ!てなって、小路の「活気寿し」のちゃんこ鍋をテイクアウトし、それにお造りなどをつぎ足して、深夜まで続く楽しい会食となった。

この土曜日。高校時代の同級生4人と奥方と私の6人が、うちの家で、会食を共にすることになった。同級生といってもそれぞれ仕事上でお世話になっているし、ちょっとしたお礼事も重なったので、奥方も親しくしている同級生で集まることになったが、さて食事をどうするか。だった。今回は奥方も一緒に食事と会話を楽しみたいというし、それに、グルメ王と少々の笑いをこめて揶揄されるヤツがおり、そのうえ魚が苦手なヤツまでいて、鍋が選択肢から外れると、おっさんのちょっとうるさい口に合う手料理なんて絶対無理っ!ていう。ま、確かに。

コロナ禍前に、あるお宅の竣工お祝いで、施主の方が「お届けリストランテ」を運営されている社長さんを交えて、そこの出張シェフを招いたランチでの会食があった。それがなかなか楽しく、美味しく、シェフの出張といっても特別に高い金額ではなく、手に届く価格だった。そんなこんなで、奥方が、そのお届けリストランテからチョイスしたフレンチのシェフを呼ぶことになった。

       

開始一時間程前に、若い男性シェフとウエイトレスの女性のお二人が車でやってきて準備が始まった。デザートまで含めたフルコースでパンとお酒だけを準備し、食器はシェフ持ちでカトラリーはうちの家のものを使った。どれもが美味しい料理だったが、なによりもうちの長男と同じ年齢の若いシェフが、一生懸命誠意をこめて料理をする姿勢に、おっさん全員で拍手を送った。おっさんのひとりは「グッドジョブ!」と感謝とこれからの応援のコトバを贈った。会社経営をする二人は名刺を交換していた。

食事を共にできるテーブルがあって、フツウのキッチンがあり、シェフを招いて会食をする。っていうライフスタイルが、富裕層で億ションや高級住宅の所有者だけのものでなく、フツウに誰もが利用できる時代になってきて、そんなニーズに応えながら美味しい料理を提供するシェフとして生きていこうとする若い料理人がいて、何よりもそういう仕組みを造ってイノベーションを提供しようという若い経営者もいて。ワタシ、そんなライフスタイルも楽しめる、新築やリフォームを提供していきたいものだなっ。とおもえた「会食」だった。

「空気感」

心斎橋筋商店街で木組みの店舗を施工中で、その店舗の構造設計を担当する下山さんの紹介で、構造材とその加工を紀州材を取り扱う山長商店さんに依頼する事になって、和歌山に訪問し、山と木材と大工さんに出会うことになった。

和歌山県田辺市にある山長商店本社から30分ほど車で移動した「山」に案内して頂き「主伐」といわれる伐採が終わったあとの「集材」の現場作業を見学する。谷間の両端の木と木の間に大規模なワイヤーが張ってあり、それはまるで巨大工場内の巨大なガータークレーンのような雰囲気であって、巨大リフトとして山の上で伐採された木材を吊って谷間に釣り降ろす豪快な作業を見守った。

その木材をプロセッサというガンダムのような巨大な機械が取り付いたキャタピラ車で、木を掴んで、枝払いと玉切りを一気に行う。木に生えている枝がバキバキバキと気分爽快に切り落とされる枝払い、4mと3mの定尺長さでギィーンギィーンと鋸の音とともに切り落とされる玉切りの作業にちょっとした興奮を味わった。

10年以上前に岐阜の山でハーベスタという機械で木を掴んで切り倒し枝払いと玉切りまで一気に行う作業を見学したが、和歌山の山は急峻なので、平地が少なく、機械で木を切り倒すことが出来ないという。それで、手作業で木を切り倒して山に倒れたままの木を谷ごとにワイヤーを張って集材する手法が使われているのだそうだ。山から木材を切り出し運搬する技術とコストは、集材と運搬のための道を切り開く技術とコストに依存していることが理解出来るのだった。

山のなかの平らな場所で谷を見下ろしお弁当を食べる。ここから望める山の全てが山長さんの森林だという。凄い規模だな。「スギ」と「ヒノキ」の木の違いのレクチャーを受ける。スギの木は谷沿いなど水分の多いところで土が深くまであるところに植え保水する。ヒノキは急な斜面などに植えるという。お弁当を食べたところから山を眺めると、谷沿いの水分が多そうでスギが植わっている場所は花粉が開花しているのか茶色く色づいているし、ヒノキが植わっている場所は急峻な斜面に緑色を発し、岩場のような一体には広葉樹がそのまま残っていた。伐採し植樹を繰り返すことによって、健全な山が維持管理され、活発な光合成によるCO2の吸収と固着が持続的に維持管理されるが、スギやヒノキの「木」が使われなくなると木が衰え山が衰退しCO2の吸収量も減少する。和歌山県の70%以上が森林でそのうちの60%が人工の植林だという。あらためて「国産材の木の家」を造っていきたいものだな。とおもえる山の見学だった。

そうそう、山長さんの植林された山を歩いて下る途中に、79歳になるという山師さんからさまざまな木のレクチャーをうけた。少しねじれた木の前で立ち止まり皆に語りかける。ねじれた木は製材し構造材になると、いつしか材料がねじれてくる。その木の種を採取し植樹するとそういうDNAが残ってねじれた木が増えてくるので、森林組合で良質のDNAを持った苗木を管理し販売し良質な森を維持管理することに努めているという。そんな現代的で科学的な話しに感心した。

一本の不思議な木の前で立ち止まり上を見上げて円形の枝の塊を眺めながら、山で出会う「カシャンボ」という妖怪の話が語られた。いたずら好きな山の精霊に山師の多くが出会っているという。あの円形の枝の塊を払うと山のたたりに会うかもしれない…..そんな話を聴きながら木漏れ日とともに山を下ると、気分がハイになるよね。

山長商店さんの本社に戻り、事務所の横に併設されてある工場で、山から集積され運搬された木が、木材として皮をはぎ乾燥し製材されて材木という木材製品にになる工程を見学する。いわゆる製材所が併設されてあるだけでなく、その横にはプレカット工場も併設されてあって、材木に「ホゾ」や「アリ」が機械加工され建て方を待つ構造材として山積みされてあった。山から製材を経てプレカット加工まで木が一貫生産され植樹をし山と森を育てる。そんな過程をひとつの会社で見学出来るのは素晴らしいコトだなとあらためておもう。

今回のメインテーマは、そのプレカット機械加工ではできない手加工をどのようにするか、その細部を大工さんと検討するために、意匠設計者と構造設計者と工務店と大工が顔を合わせ、リアルなミーティングをすることだった。木村工務店の大工は施工中の現場からオンライン参加になったが、それにしてもそれぞれの立場の人が一堂に会することによって生じてくる「空気感」のようなものによって細部が決まっていく。なんていう体験が面白いし楽しい。そんな週末の和歌山だった。

「考え方」

木村工務店1月6日の初出は、社員が会議室に集まって、それぞれ一人ずつ、お正月休暇を振り返り、一年の抱負を語りあったあと、協力会社も一緒に清見原神社に参拝する。御神酒を頂戴し加工場に戻って賀詞交換会をおこなう。

その場で私は2023年の年頭所感を語るのだが、年末のテレビ番組に、昨年亡くなられた京セラの稲盛さんのインタビュー番組があって、「人生・仕事の結果 = 考え方×熱意×能力」について語られていた。経験値から発せられる温和な語り口によって、とっても惹きつけられた、そのコトバについてシェアーすることにした。ホームページにはこんなふうに解説されてある。

「人生や仕事の結果は、考え方と熱意と能力の3つの要素の掛け算で決まります。このうち能力と熱意は、それぞれ0点から100点まであり、これが積で掛かるので、能力を鼻にかけ努力を怠った人よりは、自分には普通の能力しかないと思って誰よりも努力した人の方が、はるかにすばらしい結果を残すことができます。これに考え方が掛かります。考え方とは生きる姿勢でありマイナス100点からプラス100点まであります。考え方次第で人生や仕事の結果は180度変わってくるのです。そこで能力や熱意とともに、人間としての正しい考え方をもつことが何よりも大切になるのです。」

ま、それはそれとして、今年は3年ぶりに「鶴橋と黑門」に年末の買い出しに出掛けた。コロナ前と同じとはいかないが、それでも外人を含めて多くの人で賑わっていた。中沢新一曰く「市場は都市のカマド」というように、人混みに揉まれ、年末の活気を味わうと、エネルギーが溢れてくる感じがするし、年末年始の食事を皆と一緒に食べることを楽しみにして、少々高い目の金額だと承知しながら、美味しい食材を買うのが、単純に楽しい。

それはそうと今年は自転車で買い出し出掛ける事にした。年末の大阪の町をブラブラするのが楽しい。驚いた事は帰り道に通過したコリアンタウンの人出が鶴橋や黑門以上の賑わいだったことで、もはや定着した感がある、恐るべし韓流ブームだな。

2023 年始。40年ぶりだとおもうが、志賀高原にスキーに出かけた。マゴたちも一緒なので、それはそれで楽しみだったが、こんな時に限って、順番に風邪になり、一緒に滑れたのは、最終日の2時間ほどだけだった。とってもコスパの悪いスキー旅行だったなぁっとおもわなくもないが、振り返ってみれば、それはそれでちょっとヘンなエピソードが抱負で思い出深い正月旅行となった。

まっ「考え方」が大事らしい。家づくりに関わる皆で、良い考え方を共有し良き方向を目指したいものだなとおもう。

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